#03 紆余曲折を経てフリーライターへ。好奇心と柔軟性でたどり着いた今
私達は仕事に何を求め、どう働いていくのか。
「働くって何?」のインタビューシリーズ第3弾は、第2弾に引き続き、筆者の参加したブックライター塾同期生に登場していただきます。
インタビューしたのは、フリーライターのSさん。紆余曲折を経て、現在フリーライターとして活躍するSさんに、これまでの経験や今後の目標についてお伺いしました。
フリーランスに憧れつつも会社員・公務員に
――まずはこれまでのご経歴を簡単に教えてください。
勤めていたのはIT系の会社で2年、公務員に転職して5年です。占星術師や留学を経て現在はフリーライターとして活動して1年ほどになります。
――なにやら紆余曲折ありそうなご経歴ですね。まずは、IT系から公務員に転職されているということですが、どのような経緯があったのでしょうか。
新卒から2年は神奈川の会社で社内SE(システムエンジニア)として働いていました。フリーランスに憧れがあったので、まずは在宅で働けそうなIT系を選んだんです。そこでは、運用保守やプログラミングのテストなどを主に行っていました。
でも、SEの仕事は自分にはあまり向いていないと感じて、2年ほどで方向転換しました。次はもう少し現実的に考えて、公務員試験を受けることにしたんです。市役所や国税専門官、裁判所事務官など色々受けましたが、ご縁があって国家公務員に採用となりました。
――フリーランスに憧れがありつつ、SEを経て公務員に。5年間お勤めされた国家公務員では、どのようなお仕事をされていたのですか?
最初に配属になったのは空港でした。東京オリンピックに向けて訪日外国人が多かったことや、夜勤もあるので大変な仕事でした。
でも、比較的休みは取りやすいので、夜勤明けにそのまま飛行機に乗って海外旅行することも。移動するのが好きで、旅行もよく行きますし、引っ越しも2年に1回はしています。
――夜勤明けの海外旅行とは、アクティブですね!空港が勤務先というのは趣味と合っている感じがしますが、退職のきっかけは何だったのでしょう。
空港での勤務は3年間で、その後2年間は外部の組織に出向していました。現実的な道として選んだ公務員でしばらく頑張っていましたが、一生そこで働き続けるイメージは正直ありませんでした。
そんな中、実家で飼っていた愛犬が亡くなったんです。コロナ禍の社会情勢の変化も重なって、仕事に行けないくらい、精神的に落ち込みました。
でも、この時にハマって次の仕事になったのが、占星術師でした。
スピリチュアルな世界への興味
――愛犬の死にコロナ禍の変化が追い打ちをかけて、精神的にダウンしてしまったのですね。しかし、そこから占星術師に転身というのも、思い切りましたね。
私はもともとスピリチュアルな世界に深い興味がありました。占星術にハマったのはそれが大きかったと思います。占星術のブログを書いて、ブログから鑑定を受けたい方を募集したり、ココナラなどのクラウドソーシングで鑑定の依頼を受けたりしていました。
今は占星術師としての活動はしていませんが、ホロスコープ(西洋占星術における天体の配置図)から人の性質や運勢を読んだりすることはあります。誕生日を聞くと気になっちゃうんですよね(笑)
当時は、「これが私の天職かもしれない」と思うほど、のめり込んでいました。でも正直、占星術師一本で食べていくというのはなかなか難しい。1年ほどで行き詰まってきて、気分転換にと行ったのが、スウェーデン留学でした。
――気分転換にスウェーデン留学とは、これもまた大胆な選択ですね。
スウェーデン留学には以前から興味があったので、ちょっと行ってみようと思って。スウェーデンでは、修士号が1年で取れるんですよ。大学で行動心理学を専攻していたので、最初の1年で英語を学んでから次の1年で修士課程に進学しようと考えました。
でも、結果として私は、スピリチュアルな世界ほど心理学にハマることはありませんでした。私には、心理学の科学的アプローチが、スピリチュアルな世界に比べて表面的に感じられてしまったんです。もともと、既知のものよりも新しいことを学ぶのが好きというのもあると思います。それで、心理学の修士はやめておいて、1年で帰国しました。
フリーライターへの道のり
――スウェーデン留学は、逆にスピリチュアルの世界の奥深さを再認識する結果となったわけですね。帰国後、フリーライターとして活躍されていますが、どんなきっかけがあったのでしょうか?
実は、ライターとして初めての仕事は、公務員時代に少しだけ挑戦した副業でした。家電量販店をぶらぶらしていたところ、Macのパソコンに一目惚れして購入し、何か始めたいと思ってやってみたのがきっかけです。副業と言っても、1記事300円ほどの報酬で、長くは続きませんでした。
でも、書くことは好きで、占星術師の時もブログや鑑定結果を書いていたので、ライターに通じることは継続していましたね。
書いている瞬間、私は自我が消えている感覚があって、とにかく夢中で書くんですよ。書くことに没頭しているその時間がすごく好きなので、ライターは自分に合っていると感じています。
本格的にライティングを始めたのは、スウェーデン留学に行く前の頃です。独学でKindleの執筆を学び、留学直前に1冊発売したら、ありがたいことに沢山の方に読んでいただけました。私の実体験も交えて書いた、心理学系の本です。
書くことが好きで、書いたもので収入が得られたことで、これが仕事になるかもしれないと思いました。
――公務員時代からライティングを始めて、独学でKindle出版まで。着実にライターへの道を進んでいたわけですね。
そうですね。スウェーデン留学中も4冊ほど書いていましたが、帰国後、フリーライターとして本格的に活動を始め、約1年になります。これまで、自分のコンテンツで書いたのが13冊、依頼を受けて他の方のコンテンツをライティングしたのが6~7冊です。
今はKindle以外にも少しずつ幅を広げていて、企業出版も1冊手掛けました。
――フリーライターになって約1年とは思えないほどの実績ですね。ライターとして急成長を遂げたSさんですが、今後の目標を教えてください。
まずは、商業出版の案件をやったことがないので、挑戦したいと思っています。でも、その場合は出版社と繋がる必要があり、新規参入の壁は高いなと感じています。企業出版はひとつ経験したこともあり、案件獲得までのイメージがありますが、商業出版はきっかけがなかなか掴めません。
その突破口を探る中で、今年の3月~5月に開催された、ブックライターの第一人者である上阪徹さんのライティング塾に参加しました。模擬取材や編集者の方との懇談会などもあり、今後の活動の糧となる様々な学びを得ることができました。
今後は、塾で学んだことを活かして、Kindle出版などに引き続き取り組みながら、できる仕事の幅を広げていこうと思っています。取材の経験を積んだり、編集の仕事をしてみることも考えているところです。最終的には、出版社から直接お仕事を受けて、商業出版のブックライティングができるようになれたら嬉しいですね。
【インタビュー後記】
占星術師という一風変わった経歴のあるSさん。実はその頃から取り組んでいたライティングで、憧れのフリーランスとしての働き方を手に入れたのでした。
インタビューでは、記事に書ききれない面白い旅の話も。好奇心旺盛で、様々な仕事や旅を経験したSさんがライターに行き着いたことには、どこか納得感があります。
自分の興味・関心に素直で、柔軟に行動できることは、ライターとしての強みそのもの。Sさんの今後の活躍から目が離せません。
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