コンフォートゾーンを飛び越えろ。
もう5年以上前のことだけど、キャリアハックさんにこんなインタビュー記事を書いてもらった。
キャリアハックというのはエン・ジャパンが運営するオウンドメディア。Web業界の大物から、ぼくみたいな小物まで、片っ端から話を聞いてまわるとてもおもしろい媒体だ。
当時、同編集部にいた松尾彰大さん(その後はメルカン立ち上げ→heyでご活躍)から聞かれるままに自分のことを語った。
取材の最後のほうは怒涛の質問攻めだった。
高田純次ばりに適当に答えているわけだが、ここだけはまんざらでもなかった。
「声がいいので、Podcastをやってみたいなと思っています」
別に何か自分でやってみようとまでは考えていなかった。ぼんやりと考えていただけだ。ただ人の話を聞くのは好きだった。
そしたら、この記事が公開された直後に、とある人からこんな怪文書が届いた。
さらに3日後。
話が進んでいた。
このSHUREのマイクを5年後のいまでも使うことになるなんて、このときは思いもしなかった。
死なないことには乗っかる主義だ。
正直、しゃべることには苦手意識があった。
無駄に声が低いので人から「いい声」と言われることもあったが、実際問題、居酒屋で注文するときは気づいてさえもらえないし、滑舌も悪いので人と話すときもよく聞き返される。
すすんで人前でしゃべろうなんて思う人間ではなかった。
「でもまあ、やってみるのもおもしろいか。
上手くできなくても死ぬわけじゃあない」
それくらいのテンションで始めることにした。
iPhoneのインカメラで適当に撮った写真を、
パワポで適当に加工。
最初はこれくらいでいいのだ。ここで変にこだわると何もできなくなる。
名前の由来はまた別のところで書こうと思う。
1ヶ月後。
何度か集まって収録して、20話ほど録りためた状態でPodcast「ドングリFM」をスタート。
Apple Podcast(当時のiTunes)に自分たちのPodcastが登録されているのを見つけたときは不思議な感覚だった。
再生ボタンを押すと、聞き覚えのある「高い声」と「低い声」の世間話が流れてきた。
2015年9月17日。
コンフォートゾーンをほんの1歩だけ踏み越えた瞬間だった。
その後の快進撃について。
こんな小見出しをつけたけど、
残念ながらそんなものはない。
ただ月に1〜2回集まって、その時々に気になっている話題や面白かった出来事、お互いに薦めたい本やアニメなどについて話した。
誰が聴いてるのかもわからないなか、インターネットの空間に向かって、ただしゃべっては公開、を繰り返した。
ブログを書けば数千〜数万PVが当たり前だったけど、Podcastは全然勝手が違った。再生数なんて気にしていたらとても続けてられない。
モチベーションの源泉を外部に求めてはいけないのだ。幸いにも僕は、自分の番組を自分で聴いて笑っていられる人間だった。
たぶん初めてのお便りをくれたのは、きっとそんな僕らをかわいそうに思った友人・知人の誰かだと思う。
50話ほどくらい放送した頃、なんとなく勘がつかめてきたので、ゲストを呼ぶことにした。
最初のゲストはブロガーの「はあちゅう」さん。わざわざ収録場所に来てもらったうえに、手土産のお菓子まで持ってきてくれるホスピタリティに感動したのを覚えている。
そしてお茶すら用意してなかった自分を恥じた。
(それから5年、20人ほどのゲストに来てもらった)
はあちゅうさん、ARuFaさん、りょかちさん、佐藤ねじさん、けんすうさん、東京カリー番長、@941さん、Hagexさん、紫原明子さん、shin5さん、緒方憲太郎さん、井上佳央里さん、古田大輔さん、patoさん、竹村俊助さん、yukosekiさん、朽木誠一郎さん、カツセマサヒコさん、荒木博行さん、岸田奈美さん
誰かのものが、みんなのものになる瞬間が好き。
Podcastのなかで、
「そのうち番組ロゴとか作って、Tシャツなんかも作りたいですね」
「そしたらパーカーもほしいですね」
こんな会話をたびたびしていた。
もちろんいつも「そのうちやりたいですね〜」で終わるだけ。
4年ほどそんなやり取りを続けていたら、ある日突然、ロゴデザインがお便りで送られてきた。プロのデザイナーからだった。
ところで、気になっていることがあります。
番組のロゴマークやオリジナルグッズの件、その後いかがでしょうか。
少し気になっていたので、勝手に試作を作ってみました。
番組のジングルも同じ人が送ってくれた。
話数が400回、500回と増えてきて、昔のエピソードを振り返るのが大変になってきた頃、プロのSoftware EngineerがドングリFMの検索サイトを作ってくれた。
ここ1〜2年、「ドングリFMは自分のPodcastだ」という気持ちがだんだんなくなってきている。
始めたのは僕らだけど、いまは聴いてくれる人のものだし、関わってくれる人のものだ。
こんな個性的な人たちがいる。
僕らはただ公園の管理人みたいなものかもしれない。
雑草を抜いたり、新しい遊具を置いたり。こんなに楽しいことはない。
これからもっと多くの人が遊びに来てくれるとうれしい(現時点の最新話は666回まできた)。
コンフォートゾーンを飛び越えろ。
というわけで、この文章で僕が言いたいことはただひとつ。
「よくわからないこと」ほど何も考えずに始めてみるとおもしろい。
わかっていることを続けていると居心地がいい。慣れているから楽だ。安全で、温かいベッドのようだ。
でも恐る恐る一歩を踏み出してみたところで、ちゃんと呼吸はできているし、夜になれば眠くなる。
きっかけはどこにでも転がってる。あまり深く考えずに飛び込めばいい。
マイクの写真を送りつけてあっさりと壁を超えていく人もいる。そういうときはただ乗っかるだけでいい。
気づいたら自分のコンフォートゾーンを飛び越えているかもしれない。
40歳になった。
僕は来年、久しぶりによくわからないものに取り組んでみようと思う。
ZINEをつくるとか、本を書くとか。
魚を捌けるようになるとか、絵を描くとか、なんでもありだ。
まだまだここからだと、妙なやる気がみなぎっている。
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このnoteはドングリFMリスナーのアドベントカレンダー25日目の記事です。25日間、途切れることなく更新されたことには驚きと感謝しかありません。
書いてくださった方、読んでくださった方、全員にありがとうございます。