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西早稲田・雑司が谷、およびその周辺

半分青い金柑や、落ちてしまいそうな柚子、見頃を逃した椿、早咲きの梅。自分に関心が集中していた間にも季節は進んでいて、2月も目前だと気づく。

最寄り駅に着いた。電車に乗って降りたことのない駅で降りるのが、今日の私の予定。

焼きりんごを、おそらく初めて食べた。ベイクドチーズケーキの気分だったけど、売り切れとのこと。せっかくならと未知のものを注文した。

上にかかる「白」がじゅわっと溶けていくさまが、きれいだった。「白」はアイスクリームかと思ったら、生クリームかメレンゲか、アイスクリームより儚くてさっぱりしたものだった。

おいしかったけど、バニラアイス添えのアップルクランブルを食べたくなる。バターやビスケットの塩気や、重さを求めていた。チーズケーキの口からは抜け出せていない。

都内を走る路面電車に高揚する。

初めて知った都内の路面電車は、東急世田谷線。世田谷区という圧倒的人気エリアを走る電車なのに、路面電車。バス停とほぼ変わらないくらいの間隔で駅があるのも、住民との距離が物理的に近すぎるのも、どこかの地方に来たみたいで興奮する。

西早稲田あたりを歩いていると、思いがけずもうひとつの路面電車に遭遇した。都電荒川線。車両は1両のみで、もはやバスより小さい。都内には世田谷線だけかと思っていたので驚く。

実際のところは分からないけれど、路面電車は効率が悪いと思う。でも、一市民としてはなくなってほしくない乗り物だ。車や人のすぐそばを電車が走る独特な風景や、都心の人々を運ぶには小さすぎる車両、警告にしてはのどかに聞こえる(気のせいか?)踏切音は、誰かにとって緊張を解くきっかけになるものだと思うから。

効率以外のことが判断基準になって路面電車が走り続けられる未来があったら、私はすごく嬉しい。

この冬、休日はひとりで「思いを馳せていたものを食する(飲む)」ことが多い。平日はリモートワークをしており3食おうちごはんなのと、エッセイ本やラジオの影響で食への探究心が向上しているのが主たる理由。「思いを馳せていたもの」が肝である。

思いを馳せ、わざわざお店まで足を運び、己の胃袋に問いかけながら注文して食事をするとき、雑念が消えていることが、ままある。あたたかいものを食べればお湯に浸かっているように気が緩むし、初めての料理を前にするとうまさの正体を突き止めようと味覚に集中する。食べ終わったときには達成感すらある。

さまざまなことに意識を向けすぎた結果、キャパオーバーになるきらいがある私にとって、一番の思考を手放す方法が「満を持して食べる」ことなのかもなと思った。


20240127 Written by NARUKURU

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