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『深紅の誓い - ナラフラの花物語』

おはようございます。

今年の一番のテーマは、
これまでにない、赤を極めよう〜!
というのが、ワタクシの一つの目標でもありました。

なので、、、、
いろいろな赤を作り出すための交配をしてみたのですが、、、

ほんと、、、
ほんと、、、

いい赤ができました!!!
ということで、このペチュニアを短編小説にしてみました。
一部フィクションでございます(笑)
#なんで小説なん
#そりゃーナラティブだからさ



『深紅の誓い - ナラフラの花物語』


**第一章:夢の追跡者**


静かな町のはずれ、遠くに海が見える小高い丘に『ナラフラ』と名付けられた温室が立っていた。この温室のガラスは、日が落ちると夕焼けの色に染まり、その美しい光景は遠くからでもはっきりと目を引いた。


キヨシは毎朝、目を覚ますと窓の外の景色に心を落ち着かせ、一日の始まりを迎えていた。彼の日常は単純で、夢の追跡者としての生活が続いていた。夜明け前の静けさの中、温室の中に入ると、彼を待つのは無数の緑の葉と花々。それらの中で、彼が最も期待しているのは、深紅のペチュニアの開発だった。




彼はいつも心の中で繰り返していた。「この色、この形... ああ、きっと驚くだろう、皆。」と。


温室の中で過ごす時間は、キヨシにとって特別なものだった。一歩その空間に足を踏み入れると、都会の喧騒や日常の雑念から解放され、彼だけの静かな時間が流れ始めた。その時間の中で、彼は植物と心を通わせ、彼らの声を聴き、彼らの気持ちを感じていた。


彼が『ナラフラ』を訪れるたび、隣の家から猫がやってきて彼の足元で寝転び、時々彼の作業を邪魔していた。その猫は、キヨシが「ミミ」と名付けた白と黒のまだら模様の猫だった。ミミはキヨシと一緒に夕日を眺めることが日課となっていた。




ある日、キヨシは先人の育種の手帖を見つけ、それを元に新しい交配の試みを始める決意を固めた。手帖の中には、過去の失敗と成功、そして夢や希望が綴られていた。それを読みながら、キヨシは自分の夢と、その先にある未知の世界を想像していた。


夕暮れ時、キヨシはミミとともに海を眺め、自分の夢と未来を語り合った。彼の声は風に乗って遠くへと運ばれていったが、ミミはじっと彼の話を聞いていた。夕日の下、二人は夢を追い求める旅の始まりを感じていた。





**第二章:試練の日々**


時間は過ぎ、初夏の暑さがやってきた。『ナラフラ』の温室は緑の葉に覆われ、生命の息吹が感じられる場所となっていた。キヨシは日々、深紅のペチュニアへの情熱を燃やし続けていた。その情熱は、手帖のページを熱くしたり、風に乗せられた種を遠くへと運んでいた。


しかし、新しい交配の試みは、思っていたよりも困難だった。夜が更けても、キヨシは灯りをともして温室で作業を続けていた。彼の手には、土や水、そして希望が染みついていた。




ミミもキヨシの横で夜更かしをし、彼の行動を見守っていた。時には彼女が彼の手をなめて励ましたり、頭をなでて慰めたりしていた。猫の柔らかい毛と、その優しい目はキヨシに安らぎをもたらしていた。


交配の過程で、何度も失敗が続いた。芽が出ても、すぐに枯れてしまったり、思った色とは異なる花が咲いたり。キヨシは挫折の感情に襲われることもあった。しかし、彼の心の中には、夢を実現するための強い意志があった。




ある晩、夢の中でキヨシは美しい深紅のペチュニアに囲まれていた。その夢の中で彼は感じた喜びと安堵感は、彼の心を温め、新たな勇気を与えてくれた。


翌朝、キヨシは早起きして、夢の中で見たイメージを基に再び交配の試みを始めた。今回は、少し違った方法で土を調合し、種を植えてみることにした。太陽の光、風の力、そしてキヨシの愛情が新しい生命を育む手助けをしていた。


日々の作業の合間には、キヨシは海を眺めながら心の中で祈りを捧げていた。海の波の音、遠くの鳥のさえずり、それらの自然の音楽は彼の心を癒していた。ミミもその隣で、キヨシの祈りを共にしていた。




ある日、キヨシが温室の中を巡ると、小さな緑の芽が土から顔を出していた。その芽は夢の中で見たペチュニアと同じ形をしていた。キヨシの心は、喜びで満ちていた。彼はその芽を優しく撫でると、ミミとともに空を見上げ、深く息を吸い込んだ。新たな希望の芽が、彼の夢の中に生まれてきたのだ。




**第三章:夏の約束**


夏の日差しは『ナラフラ』を照らし、温室の中は熱気に包まれていた。しかし、キヨシの心は冷静で、彼の目には夢を追う決意の光が宿っていた。その小さな緑の芽が、彼の夢の一部として大切に育てられていた。


日が昇るたび、キヨシはその芽の成長を確認し、水や肥料を与え、愛情を注いでいた。ミミもまた、その芽の周りで丸くなり、昼寝を楽しんでいた。温室の中は、新しい生命の息吹と共に、希望と夢で満ちていた。


夏の夜、『ナラフラ』の周りには、夜空を舞う蛍たちが灯りをともし、幻想的な景色を作り出していた。キヨシは、ミミと共に蛍の光を眺めながら、深紅のペチュニアが咲く日を心待ちにしていた。彼は瓶に蛍を取り入れて温室に置き、その光を通して芽を照らしていた。





数週間後、キヨシが温室を訪れると、深紅の花びらがゆっくりと開き始めていた。花の中心からは、強い生命力と希望の光が放たれていた。花びらは繊細な八重咲きで、夢の中で見ていた景色そのものだった。


キヨシの目には涙が浮かんでいた。彼の夢が、この深紅のペチュニアの中に実現したのだ。彼は、そのペチュニアの前で膝をつき、感謝の気持ちを伝えていた。


その日の夕方、キヨシはミミと共に海辺へと出かけた。彼は、夢を追い求める中で得た深紅のペチュニアの花を持って、海に向かって声を上げた。彼の声は、夕日に照らされた海面に反響し、遠くへと届いていた。





「これだ、これが私が追い求めていた色だ!」キヨシの興奮と喜びは、夕暮れの海辺に響き渡っていた。


夜が更けると、キヨシはミミとともに『ナラフラ』へと戻り、深紅のペチュニアを大切に温室に戻していた。その夜は、星空の下、キヨシとミミ、そして深紅のペチュニアの三者が、夏の約束を交わしていた。





**第四章:名前の誕生**


深紅のペチュニアは、日々のキヨシの努力と愛情の結晶だった。温室『ナラフラ』の中、その美しい花は夏の日差しを受けながら、静かに時を刻んでいた。キヨシはその花を見つめるたび、自分の情熱と、長い日々の試練を感じていた。


しかし、その美しい花にはまだ名前がなかった。キヨシは、この特別な花にふさわしい名前をつけるべく、町の中心部にある広場で展示会を開くことを決意した。町の人々にこの新しいペチュニアを見てもらい、名前の提案を受け取る計画だった。



展示会の日、広場は多くの人で賑わっていた。子供たちは、深紅のペチュニアの前で目を輝かせ、大人たちはその美しさに感動の涙を流していた。人々は次々と名前の提案をしてきた。キヨシは、それらの提案を手帖に書き留めていった。


「夢の瞬間」「情熱の実」「永遠の紅」... 数え切れないほどの名前が提案されたが、キヨシの心にはまだ響く名前が見当たらなかった。


展示会の終わり頃、町のはずれに住む老婆がやってきた。彼女は、ペチュニアをじっくりと観察した後、キヨシのもとへと歩み寄ってきた。


「この花は、夢や希望、そしてあなたの情熱を表しているわね。それを名前に込めてはどうかしら?」老婆の言葉は、キヨシの心の中で深く響いた。




夜になり、キヨシは『ナラフラ』の中で深く考え込んでいた。ミミは彼の足元で丸くなり、安らかに眠っていた。キヨシは手帖に書き留めていた名前を一つずつ眺めながら、深紅のペチュニアを見つめていた。


そして、遂に彼は決意した。その名前は、彼の情熱と夢、そして町の人々の期待と愛を込めて選ばれた特別な名前だった。


翌日、町の広場には大きな看板が設置された。その上には、大きな文字で深紅のペチュニアの新しい名前が書かれていた。町の人々は、その名前を前にして、感動の涙を流していた。


そして、その名前とともに、この深紅のペチュニアは永遠の歴史に名を刻むこととなった。キヨシの夢は、『ナラフラ』の中で、永遠に輝き続けることとなった。

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