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なんで俺が。

「なんで俺が」が口癖の中学2年生市川。

ある時親友の高谷と悪ふざけをしていたとき教室の花瓶を割った。
「あー!市川が花瓶割ったー!」
市川が叫ぶ。
「なんで俺が!高谷が押したんだろ!」

ある時親友の高谷にちょっかいをかけられる。
「おい市川、鈴木さんに好きですって言ってこいよ〜」
市川が叫ぶ。
「なんで俺が!ホントは高谷が好きなんだろ!笑」

ある時親友の高谷にクラス会で室長を任される。
「みなさん、僕は市川くんが室長にふさわしいと思います!投票よろしくお願いします!」
市川が叫ぶ。
「え、なんで俺が?俺なんかでいいの?」

ある時親友の高谷に悲劇が起こる。
「えー、今日はみなさんに残念なお知らせがあります。昨晩、高谷くんが交通事故で亡くなりました。お通夜を行いますので.....」
え、え...?待って?高谷が亡くなった...?どういうことかさっぱりわからない、突然すぎて状況が読み込めていない。昨日まで一緒にいたじゃん高谷。一緒に遊んでたじゃん高谷。本当に?ねえ先生本当に?

ああ。そういえば高谷、あのとき花瓶割ったのは俺だ。俺が悪かったよ。
ああ。こんなことになるならあの時鈴木さんに告白しておけばよかったなあ。高谷、俺なら成功だったっしょ。
ああ。室長も俺でよかったかな。うん、それはそのはず。間違いない。
ああ。なんで俺の周りばかりこうして不幸なことが起きるんだ。いつもいつも。ああ。最悪だ。俺ばっかり。俺ばっかり。なんで。なんで。なんで俺が。なんで俺ばっかり。

いや、違う。いや。違う。絶対に違う。いつも俺は俺中心で考えていた。いつもいつも俺の横には高谷がいたじゃないか。高谷がいたから新しい花瓶も折半した。高谷がいたから鈴木さんと仲良くなれたし。高谷がいたから室長になれたし。高谷がいたなら今頃悪ふざけしてるだろうし。
高谷。高谷。高谷。悪かった。気づけなくて悪かった。俺には高谷しかいない。高谷なしの生活なんてつまらないよ絶対。お願いだから戻ってきてくれ。なんで。なんで。

市川が叫ぶ。

「なんでお前が」

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