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寄り道 EP .LOG

1.はじめに

 2021/09/24 20:00  に私が中身を作成したEP 『寄り道 EP』が OMOIDE LABELからリリースされました。かわいいジャケットは絵師の、ひなたさん@wolf_guguが作成してくれました。OMOIDE LABELのオーナーYZOXさん@yzox_jpnとTwitterのDMで連絡を取り合い、Bandcamp上で配信されました。この記事では『寄り道 EP』に関係する文章を記しました。この記事を読む事で、DTM活動をする上で役に立つ情報を得る事ができ、音楽センスも上がる、といった感じになればいいなと思いながら文章を記していきました。

2.これだけは知っておきたい2つの事

①OMOIDE LABELとは?

良質な曲が詰まったアルバム、EPを投げ銭(0円から)にて提供するBandcamp上にアカウントを持つ優良ネットレーベルです。デジタルリリースでこれまで170数以上の作品をリリースし、多くのサポーターがついています。


②Bandcampとは?

音楽を作っている人、好きな人なら使わない手は無い便利なサービスです。世界中の音楽センスのある人たちがこの場所に集まっています。Bandcampのアプリは音楽センスを上げたいという人にはマストアイテムです。以下のリンクからアカウントを作成しBandcampの世界に触れてもらえればと思います。

3.『寄り道 EP』を構成する曲について

 ゲームセンターのBGMといった感じです。このEP には4つの曲が含まれています。いずれもビートの効いたノリのいい楽曲です。全ての楽曲は2015年に購入したマルチエフェクターZOOM G3に付属してきたDAWソフトCubase 
LE 8によって作成されています。ちゃぶ台にノートPCを乗せて座布団に座り作成していました。制作期間は8月の頭から9月の半ばの1ヶ月半程です。主に休日、土曜日に夜遅くまで起きて作っていた記憶があります。以下に詳しく各曲について記しました。


①朝(Morning)

 ある日、私はタイムストレッチというものをTwitterのタイムラインとドリルンベースのWikipediaの記事から知りました。早速、試してみようと思いプロジェクトを立ち上げました。その中で色々と試している内にできた曲です。タイムストレッチとは、オーディオ信号のピッチをそのままで、テンポだけを変更する事です。対義語はピッチシフトです。

使用したVST インストゥルメントは
・HALion Sonic Se
・KORG MS-20
・KORG POLYSIX
・MODO BASS

です。



HALionはDAW備え付け音源で、後はセールを狙って安価で購入しました。VSTの世界では90%OFF という狂気がままあります。タイミングさえ合えば結構プアな私でも高価なVSTでも購入できたりします。後に記されてる曲についてもほぼ上のVSTを使用して作成しました。

手順としては

1.BPMを120-125に設定しオーディオライブラリーからドラムンベースのタグがついているオーディオファイルを選択する。4小節あること。
2.上のファイルを0.5小節分まで、タイムストレッチで縮小する
3.同じタグの中からオーディオファイルを選び縮小したファイルと組み合わせて踊る事ができるループを作成する。
4.踊る事ができるループの上に人に聞かせても恥ずかしくないコード進行、ベースライン、メロディを作成し曲を展開していく。

以上の手順を踏む事で似たような曲を作る事ができると思います。この曲の作成時はSquarepusherの 『Hard Normal Dadyy』と『 Big Loada』をよく聞いていた記憶があります。


②追跡(Chase!!)

 この曲は8月の始めに公開された、OMOIDE LABELの大型コンピレーションアルバム『Variations 甲』に収録された曲です。

 曲のミックスとエフェクトの処理、マスタリングなど、手を加えたものを今回のEPに収録しました。この曲の作成時、私は近日中に企業で働く事が決まっていました。焦りながら曲を作り、コンピの応募をしたと思います。「働きながら曲を作るなんて無理だ。」とか、「早く完成させないと。」と思っていました。この曲は6月の終わりの週に作り始め、7月に入るまでには完成していたと思います。今回のEPはこの曲に新しく3曲をつけ加えたものという事になります。曲そのものについてはドラムンベースのリズムトラックに4分付点の太い音のベースを打ち込み、適切だと思えるようなメロディを作っていきました。キーはDドリアンで、テンションコードを多めに使いました。ドリアンのスケールを使っているため教則本的にはジャズみたいに聞こえるはずなのですが、90年代のアーケードゲーム筐体ネオジオのアクションゲームのBGMに使われていそうな雰囲気になったのは、私がチープな音源を使っているのとゲームのBGMにドラムンベースのリズムトラックが多用されているため、ゲームのBGM ぽく聞こえるのだと思います。

(ドラムンベースを聞くならば、というプレイリストです。)

(私は↑のサイトが無いと曲を作る事ができません。)


③工事(Construction)

 この曲はセンスとか閃き、発想という言葉に頼らずある料理のレシピがあってその通りに作れば、ある程度の質を保った料理ができあがるように曲を作りたいと思っていた時に作った曲です。曲のレシピが欲しいと思っていたとう事です。働き始め、帰宅時には脳が死んでいるので、脳を通す事が不可能な状況の中で曲を作ろうとしていました。①の曲も働き出した時に作ったのですが、偶然できた曲だったので、再現性が低いと思い危機感を抱いていました。私は休日に部屋にある教則本各種をとり出しました。


(↑の教則本はkindle unlimitedで読むことが可能です。)

そして、本を読みながら打ち込もうとしたのですが、無理でした。余計に脳に負荷がかかりました。仕事の疲れがある中、意味不明なカタカナの羅列を読み理解しPCに打ち込むという事はできませんでした。教則本→PCではなく、教則本→メモ→PC といった手順を踏む必要があると思いました。メモを通す事によって読みたくない本を読む事ができ、考えがまとめられ、理解が進むと思ったからです。そして、メモは思考停止の行為の中でも割りと生産性が高い方だと思っていたからです。私は頭に負荷をかけるということをしたくありませんでした。最初はPC上のメモを使っていたのですが、スプレッドシートを使った方が便利だと思い途中からはスプレッドシートで曲のレシピを作成していきました。

このようにして作りました。効率の面は考えれていないのですが、心理的な面ではやることがわかっていて、もし、わからなかったらどこがわからないかが視覚化できているのは安心感がありました。今日はここまでできそうだな、今日はここで終わりにしよう、明後日までにはここまで進んでおきたいとか、そういう気持ちが沸いてくるのは新鮮でした。後は自分の意思とは無関係な所で命令を出す存在を自分で作り出すのも良かったのかもしれません。契約が生まれて強制力が働き、怠ける事に後ろめたさを生じさせるといった緊張感がありました。おかげで仕事で疲れていたからできなかった、という状態はこの曲の作成時にはありませんでした。

 後は教則本には多くのジャンルの曲の作り方が紹介されていたので、どうせ参照するのならあまり聞いた事がないような曲を作りたいと思い、エレクトロのジャンルのページを開き、作っていきました。(私はアフリカ・バンバータのプラネットロックぐらいしか知りません。)途中でユーロビートみたいなハウスみたいな曲の展開になるのは、参照する教則本を今の自分の力ではどこをどう読んでもこれ以上進めないと判断したのと、最初はきっちり作っているから後は適当にやっても総合的にはまとまりがあるだろう、と考えたので、4つ打ちのアッパーな展開を挟みました。

(③の曲作成時に参考のため流し聞きしていたプレイリストです)

④地下(Underground)

 この曲は③の曲の教則本の言いなり期にできた曲です。曲はできなくてもいいからとりあえず譜例を打ち込もう、といったムードの時にできました。『DTM打ち込みフレーズ』に紹介されていたベースのフレーズで、見ただけ異常だと思えるようなフレーズが紹介されていたので、それを自分の好みのキーに変更し、理論的に処理できる範囲で打ち込み、DAWのサンプリングライブラリにあるテクノ系の4つ打ちのリズムトラックを組み合わせて作っていきました。気持ちの上では感覚で作った感が一番でている曲です。この曲は1日で、できました。一筆書きで作られていった感じです。私はDJをしたことが無いので、こんなことをいってはいけないと思うのですが、とびっきりに合うMixができた時にはきっとこんな気持ちになるんだろうなと思うくらい、ピッタリとはまった感がありました。

4.『寄り道 EP』のミックス、マスタリングについて

 正直な所、勘です。こう書くと、よくわからないけど、うまくいったから良しとしていると感じられるとは思います。実際はそうなのですが、気持ちの上ではロジカルに処理していきました。ただこれは間違いないと言える知識が頭の中に無い/ネット上、本の中に間違いない知識はあるがそれを理解していない、という状態だったので、わかっている人にとっては「何やってんの君?」という状態だったので書きました。耳よりも目を信頼し、目の前にあるダイナミクス系プラグインのインジケータとステータス表示を頼りに処理していきました。インジケータが赤になったらアウト、しかしデカイ音圧感を出したい時は一時的に赤になってもセーフ、マルチバンドコンプのアウトの値を1.5を基準として、そこから細かく上げて/下げていこう、みたいな事をやっていたと思います。後は、常識的な範囲で、極端な事はしないようにと考えていました。例えばギターウルフというマーシャルのアンプをフルテン(全てのパラメーターをマックスの10にする事)にして演奏するとてもかっこいいガレージバンドがいるのですが、それは自分にはできない。音割れしてバッキバッキのサウンドは憧れるが、自分の曲では、できない、多少、音割れしている部分は出現するかも知れないが、音のバランス感は出していこう、みたいな事を考えていました。あーでもない、こーでもないの繰り返しを二週間程やっていたと思います。主に使用していたプラグインは5年程前のセール時に購入したWAVES社のダイナミクス系プラグインです。



 上からMS処理、マルチバンドコンプ、主にコンプ、EQ系のプラグインが数々つまったパッケージです。勘と書きましたが(書き方が悪かったのかもしれませんが、本当にそうだとしか思えないです。)さすがにコンプとEQの処理を施す、ディレイの処理、可能な限り音割れを発生させずにマキシマイザーで音圧を稼ぐ等、適切な行程をある程度は踏んでいます。

 理解できていないのですが、この本に書かれている事をつまみ食いしながらやっていった感じです。

5.『寄り道 EP』のジャケットについて

 運が良かったです。たまたま私にかわいい絵をかけるかわいい後輩がいて、連絡した所、タイミングが合い二つ返事でOK がきて、事がスムーズに運んでいったという話です。もしダメだったら、私がペイントで作成したしょうもないイメージのジャケットになる所でした。そうなったら終わっていました。私は音と画像や映像といった視覚の情報を結びつけるセンスが致命的に悪いです。かわいい後輩に、「どんな感じの絵がいいですか?」と聞かれた時に「草原にそそり立つ冷蔵庫」と答えたぐらいです。その頃には、曲にタイトルをつけ終わっていて、タイトルに生活感がある、と思っていました。

生活感→冷蔵庫といき、音楽をやってる身なので普通とは異なる事をしたい気持ちが働き「草原にそそり立つ冷蔵庫(普通、冷蔵庫は家の外に無い。さらに草原という日常と離れた場所に冷蔵庫がある。これはかなり普通ではない。)」となったのでしょう。

さすがに、かわいい後輩にリクエストした後になって、私は間違った事を言っている、という気持ちになったので、冷蔵庫発言を取り止め、常識的なリクエストをして今回のジャケットになりました。とんちんかんな発言をする男の依頼をしっかりと聞いて、一週間以内という早さで良い作品を仕上げてくれた絵師のひなたさん@wolf_guguには頭が上がりません。本当に感謝しています。

6.『寄り道 EP』作成時に聞いていたプレイリスト

 全て私が作成したプレイリストです。ZUNTATAはもう無意識下で私に影響を与えています。父がいただけない方法でゲームをプレイする人だったという事もあり、幼少時、私の家には80年代~90年代のアーケードゲームをプレイする環境が整っていました。保育園の時に『ダライアス外伝』と『メタルブラック』をプレイする事に熱中していました。上のプレイリストは、最近、ZUNTATAのアルバムがSpotify上でほぼ聞ける事を知り、入手困難なサントラのアレンジアルバムをまとめたプレイリストになります。正直、ゲームや映画、アニメのサントラはその作品を体験していない人にとってはもの足りない、退屈なBGMになりがちですけど、上のアルバムはそういった事情に反してトラックとして完成度が高いなと私は思います(時代が時代なので、今のサウンドと比べるとびっくりするくらいチープだとは思いますが)。普通に個人の思い出と関係無しに今回の曲作りの参考になりました。

 フュージョンはVaporwaveやCitypop を知った時にそのサンプリング、影響元として存在を知った感じです。新品でも1000円以内で買える安さと良いサウンドと曲、癖の無い洗練されたグルーヴと妙に多いシュルレアリスティクなジャケットと、買わない理由を見つけるには、へそ曲がりになるしかないという事でハマりました。2017~2018年頃はハードオフで安いフュージョンのレコードを大量に買っていました。今はテクノとアンビエントばかり聞いているのですが、やっぱりアパートの部屋でレコードプレイヤーから流れる16分のビートに対し腰をくねらせながら一人で踊っていた期間が長いだけあって、グルーヴ面では影響があるのでは?と思っています。

 アシッドフォークは直接的にサウンドや曲構成の面で影響した訳では無いのですが、休日の朝、あまり体を動かしたくない時によく聞いています。休日の寝溜めしている時間を肯定してくれそうで私は好きです。私は内乱と処刑の暗黒の中世ものの漫画・小説が好きでもあるので、アシッドフォークを聞く事によって。その時代の世界感を味わえる気もします。世界史が好きな人は好きになるのでは無いかと思います。

7.『寄り道 EP』作成時によく読んでいた本

 作成時には教則本をよく読んでいました。

 これは個人的によく読んでいる音楽理論系の本です。何か迷ったらとりあえずこの本を開くみたいな感じです。曲中にアボイドノート(コードとぶつかる音)が出る場合はこの本のあるページを開き、「プロが大丈夫と言ってるからセーフ」みたいな気持ちにして、心を落ち着かせています。

 このシリーズでは著者がオススメする音楽アルバムを紹介するコラムがあるのですが、『DTMテクニック99』が紹介するアルバムが一番テクノ感があります。kindle unlimited で全シリーズ読めます。

 この本には何が書いてあるのか、わからない、という状態の本ですね。クラシック畑出身の著者がポピュラー音楽を理論的に分析するという形をとっているのですが、ロック畑出身の私には「?」となるような事が多いです。楽譜を読める事を前提として話が進められているので、楽譜を読む力に乏しい私は門前払いをくらっている状態です。しかし、クラシックという教養深い音楽を専門に学んだ著者が記す文章は非常に丁寧です。私は教則本の文章が好きでは無く、イライラしながら読んでいるのですが、この本にはそのような苛立ちは感じられません。(内容の意味不明さからくる苛立ちはありますが)私が持つ教則本の中での癒やし枠という感じです。

 今回のEPを作るにあたって一番お世話になった教則本だと思います。ベースラインとドラムパターンを考える時によく使いました。大学で買う教科書なみの厚さがあります。存在感があります。TAB譜ではなく、おたまじゃくしで譜例が記されてあるのを見た時は、「買う人の事を考えているのか?DTMerが楽譜を読めるとでも?」と思いました。しかし、クラシック畑の人が書いた訳ではないので、譜例は比較的単純なものが多く、ネットで調べればある程度読むことができました。中身の配色と文体をみた時に「とっかかりは難しいが、そこをクリアすれば後は簡単。」というタイプの本だと思いましたので、じっくり読んでいきました。紹介した本の中では一番、実用的な本だと思います。紙媒体で購入した場合は、譜例のMIDIデータが収録されたCDが付録されています。

 曲を作り込むこめば作り込むほど、オーディオミックスダウンの時間も長くなります。2分近くなる時があります。その時の待ち時間に私は短歌を読んでいます。今回は笹 公人の『抒情の奇妙な冒険』を読んでいました。帯の「他人のノスタルジイ」という言葉にしびれましたね。過ぎ去り昭和の情景をサンプリングしてミックスした短歌という感じです。

 Twitterのタイムラインに流れてきた時に、「これはぜひ、今すぐ買わねば」となった漫画です。久々に漫画に夢中になりました。分類はセカイ系の漫画で、地球侵略してくるエイリアンに対して対策係の少女三人組が何かしらのアクションをとる、という図式のストーリーです。単純作業だけどミスをしたらマズイ事になる実験をしている時に感じる緊張感をうまく表現できていると思います。そして、実験プロトコルや機器のマニュアルを読んでいる時に感じる冷たさも表現できていると思います。


8.『寄り道 EP』製作時に頼りにしていたサイト

 説明は省きリンクだけを貼っておきます。DTMをしている人なら誰でも知っているという感じのサイトです。特にDTM活動をする上でSleepfreaksを利用しないのは、FF8でノージャンクションプレイをするのと同じ難易度になると思います。後はDTMはシンセの扱いがメインになるので、シンセの取り扱い方を記されたサイトも見ることが多かったです。正直、勘とプリセット選びのセンスだけでやっているのですが、微妙に変化を加えたいときにシンセの取り扱いの知識は役に立ちました。






9.おわりに

 ここまで長々とした記事を読んで下さりありがとうございました。自作EPの紹介だと記事として役に立たないと思い、DTMの活動する上で参考になるような情報をぎっしりと詰め込みました。私は大学の軽音楽部でコピーバンドを組みながら、宅録をしその流れでDTMを本格的に、というプロセスを踏んできましたので、どちらかというとギタリスト向けの記事になってるかと思います。ギタリストの人はあまり、打ち込みをメインにやらないとは思いますが、メインに打ち込みをやるのも悪くはないですよ、という事も伝えておきたいです。最後にEPをリリースして下さったOMOIDE LABEL のオーナーのYZOXさん、今回はありがとうございました。私はとても嬉しかったです。

10.おまけ

未発表のテクノ系のトラックをダウンロードできるようにしました。





 





























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