見出し画像

ヤクザと家族 The Family

「”ヤクザ”という名の“家族”のおはなし」

◎時代は決して止まらず、そして誰にも平等だ

任侠ものだったり北野映画のような、ヤクザ同士の抗争にではなく、家族という目線から描いたこの映画は、今までのヤクザ映画とはまた違った、新たな価値観を生み出す映画となった。
劇場を出た後、世界を見る目が変わるのを実感したのは久々だ。
この映画では主に、1999年、2005年、2019年の三つの時代にフォーカスを当てて、時代の変化とともに、ヤクザという存在が絶滅危惧種になっていく様を映している。
そこで生きる人たちにとって、時代の変化はあまりにも残酷で、無慈悲なんだと、そしてそれは決して止まることのないものなんだと痛感させられた。
また、今までヤクザ・暴力団は悪い人たちだから無くなってしまえばいいと、ただ漠然と、でも絶対的に当然のように思っていた。
しかしこの映画を観てしまったら、その無責任さをものすごく考えさせられた。
私たちは日々、SNSをはじめ、ニュースなどのメディアが流す情報を何も疑わず鵜吞みにし、そこに悪者があれば、側だけ見ては寄ってたかって叩く。まるで正義かのように。
何も知らないのは当たり前で、しかしそれをろくに知ろうともせずに、同調行動で言葉を発する。世の中もっと自分の言葉に、正義に、意味と責任を持たないといけない気がした。

◎まるでそれは“白ひげ海賊団”

映画を観ていて、度々マタタビ感じたことが、綾野剛が入る暴力団の柴咲組が、凄くワンピースに出てくる白ひげ海賊団とリンクしていたことだ。
舘ひろしは白ひげに見えるし、綾野剛はエースに見えるし、そのうち海賊王目指し始めるんじゃないかと思ったり、思わなかったり。
血よりも固い絆で繋がってる柴咲組の疑似家族感が、この映画の副題でもあるThe Familyの形の一つだった。
そしてこの映画、綾野剛をはじめとする数々の役者陣の演技が印象的。
綾野剛のキレキレの怪演っぷりは今作も健在で、一人の男の三つの時代での変化を、彼の表情やしぐさ一つ一つから滲み出ていた。監督がキャスト選びで、主人公の山本は綾野剛以外考えられないと言っていたが、まさにだと思った。こういった役を彼にやらせたら、天下一品。
男気と人情を兼ね備えた、真の優しさを持つ柴咲組の組長を演じた舘ひろしもハマってたし、磯村勇斗や北村有起哉、尾野真千子や寺島しのぶらの脇を固めるキャストも強すぎでした←個人的には市原隼人がツボだった

昨年の日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した「新聞記者」を手掛けた藤井道人監督と数々の社会派話題作を生み出しているスターサンズが再びタッグを組んだ今作は、これまた秀作でございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?