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「イギリスが世界最高の飲み水」と話すイギリス人、からの下水道システム

イギリスメディアSkyのPodcastを聞いていた。そうしたら、引っかかる言葉が片耳に入ってきた。

「....I know we have the best drinking water in the world….」

ん?イギリスが世界最高の飲み水?
耳を疑った、と言うのはさすがに大袈裟だが、イギリス人が何か勘違いなさっているようだ。まずイギリスに美味しい水のイメージはないし、スイスの飲み水の方が100倍美味しいし、イギリスって山ないじゃん!と主観満載で突っ込みたくなった。

しかしふと思った。美味しい水とはそもそも何か。

とその前に、そもそも何のニュースについて話していたんだろう。流し聞きだったので頭に入っていなかった。調べたらどうやら、イギリスの下水道システムがやばいという報道だった。

ロンドンのようなイギリスの大都市の下水道システムは、合流式下水道(combined sewage system)である。トイレやシンクの排水、それと外の雨水の排水が同じパイプを通る仕組みだ。これが問題なのは大雨の時で、下水道のキャパを超えて溢れてしまい、フィルターされないまま、川や海に流されてしまう。
今世界のスタンダードは、家庭排水と雨水排水のパイプが別々の分流式下水道(separate system)である。今もし下水道をデザインするなら、合流式は誰も選ばないらしい。これは素人目にも当然のことと感じる。

「合流式下水道」と検索すると、一番トップに京都市のリンクが表示された。「なぜ合流式下水道の改善が必要か - 京都市」。

古い記事だが、分かりやすい。ぼくは2012年から2014年に京都に住んでいたが、鴨川含めてどの川も汚かったという印象は特にない。しかし大雨の日の鴨川には汚水がそのまま流されていたのかもしれない。
京都とロンドンに通ずるのはどちらも昔から人口の多い街だったということだ。つまり、下水道システム自体を導入するのが早かった。イギリスは世界に先駆けて産業革命を起こした国で、近代化がどの国よりも早かった。そんなイギリスを他国は追随してきた。

しかし記事を読んでいると、どうやら1856年にロンドンは合流式下水道システム導入を決定したようだが、その当時に分流式の案も同じく議論されていたようだ。しかし、行政は結果的に間違った判断を下した。もちろん合流式であれど、1858年の大悪臭(Great Stink)という、小学生だったら大爆笑しそうな名称の悲劇を乗り越え、下水道を機能させて、当時の劣悪な環境から多くの人の命を救ったとされている。
今は時代が変わった。1800年代半ばは、ロンドンの人口は2百万人程度だったが、今は9百万人だ。排水もその分増える。
気象状態も変わった。1800年代半ばは、大雨で放水するのは年間12日程度だったが、今は年間60日にも及ぶらしい。

最近の日本で思い出すのは、7月半ばにあった秋田の線状降水帯による洪水被害だ。6月末に岩手県奥州市に引っ越してきたが、お隣の県で悲惨な状況になってしまったニュースを見て、奥州市でもバケツをひっくり返したかのような大雨が夏にちょくちょくあったので、もしかしたらとけっこう怖かった。
秋田市のホームページに「下水道の歴史」があった。「平成16年度からは、合流式下水道の改善事業にも取り組んでいます。」と書いてある。改善進捗は分からないが、となると7月の洪水は、合流式下水道システムが災いして、氾濫を起こしたのかもしれない。


Skyの記事では、デンマークのコペンハーゲンを視察していた。なんとそこでは、家庭排水と雨水排水の2本の合流式下水道システムどころか、それを超えて、家庭排水と路上雨水排水と屋上雨水排水の3つに分けたシステム(triple separated system)を導入しているそうだ。いやぁ流石北欧。この辺のインフラ整備が良く出来ているニュースしか耳にしない。
想像だが、路上雨水は汚いので最低限フィルターして川や海に流さざるを得ないが、屋上雨水は比較的綺麗なため、違った用途に再利用できる目的で3本に分けたのだろう。
Skyの記者は、デンマークは3本も出来ているのに、我々イギリスは2本にすら出来ない、と嘆いている。

「イギリスが世界最高の飲み水」と口走ってくれたイギリス人のおかげで、下水道システムについてちょっとだけ知ることができた。今思えば、それはイギリス人特有の自虐かもしれない。排水システムがひどすぎる、でも飲み水は普通に飲める、そのギャップというか幅は世界一、だから最高の飲み水、というユーモアだと解釈することにした。

さて、下水道システムはここでは本題ではない。

美味しい水とは何か。

これは興味があるし、南部鉄器の活動に携わる身としてもちゃんと知りたいので今後調べていく。
キーワードとして、山、硬水軟水、ミネラル、イメージ(ブランディング)あたりを考えている。


小泉成文


大好きな横浜名物シウマイ弁当を食べる時、人生であと何回食べられるんだろう。。と考えます