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海外の固有名詞は、原則アルファベット、例外and/orカタカナ表記で書くべき

NewsPicksでこんな記事を最近見た。

顧客には、Venmoの他、手数料ゼロの投資アプリ「ロビンフッド」、仮想通貨取引所のCoinbaseやGeminiといったところがずらりと勢ぞろいしている。
https://newspicks.com/news/4553140/

ここで気になったのは、Venmo、ロビンフッド、Coinbase、Geminiといったサービスの表記のされ方の違いだ。
なぜロビンフッドだけカタカナなのだろうか?他より有名だから?しかしこの4つだったら、日本では知名度は同じような気もする。

カタカナ表記だけだと検索できない

この記事で思い出したことは、前にある記事を読んでいて(確か日経の記事だったと思う)、気になった海外の会社名があったのだがカタカナしか表記がなく、それで検索してもヒットせず、またアルファベットを予想して検索しても見つけられなかったという過去だ。
例えばこんな感じの記事だ。

クラウドコンピューティングの技術を活用したビッグデータの保管・分析サービスを提供する米スノーフレイク(カリフォルニア州)が日本市場に本格的に進出する。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52720650Y9A121C1X30000/?n_cid=SPTMG002

スノーフレイクというアメリカの会社に関する記事だが、「スノーフレイク」とGoogle検索してもこの会社は出てこない(スノーフレイクの街角という曲が強い)。ぼくの場合は7件目くらいで同じ日経の記事が出てきただけだ。
しかし「snowflake」と検索したら、1件目に会社HPがちゃんと出てくる。今回はスノーフレイクという単語だからアルファベット(英語)が予想できたが、これが違う単語の場合はアルファベットが分からないケースもある。
そうなると、メディアとしての意味をなしていないように思える。Aという会社を報道してるのに、読んだユーザーは自分でAを調べようがないからだ。

なぜアルファベット表記すべきか

どうすればいいか。ぼくの提案は、記事で書かれる海外の固有名詞は、原則アルファベット、例外and/orカタカナ表記で書くべき、である。

詳しくは後述するが、以下の点が理由にある。
・検索面
・学習面
・オリジナルの尊重

各メディアはどう海外の固有名詞を表記しているか

例に挙げたNewsPicksと日経以外のメディアは、海外の固有名詞をどう表記しているか気になったので調べてみた。メディアは適当に選んだ。

メディアリスト:
WIRED、TechCrunch、マネー現代、Diamond Online、NHK、週プレNEWS、Bloomberg、ねとらぼ、Forbes、美術手帖、Business Insider、東洋経済ONLINE


WIRED

オープンアクセスの科学学術誌『Science Advances』で画像を公開したのだ。
(中略)
論文の筆頭著者であるポール=アントイン・モロー博士は語っている。
https://wired.jp/2019/07/16/quantum-entanglement-photo/

この雑誌とこちらの博士の違いが分からない。雑誌名はアルファベット、人名はカタカナというルールがWIREDにはあるのだろうか。

TechCrunch

米ネットフリックス(Netflix)は現地時間1月19日、スタジオジブリの21作品を、日本、アメリカ、カナダは除く国々で、2月より配信することを発表した。
同社はフランスの配給会社、ワイルド・バンチ・インターナショナル(Wild Bunch International)より、
https://jp.techcrunch.com/2020/01/20/netflix-ghibli/

併記パターンだ。アルファベット「Wild Bunch International」があり検索しやすい。もしカタカナ「ワイルド・バンチ・インターナショナル」だけで調べると、日本の関連記事が多くヒットしてしまい、肝心の会社HPに行きづらい。(+会社と検索すれば出るかもだが、面倒なのでできればしたくない)

ネットフリックスによるジブリ作品の配信では、28言語の字幕、最大で20言語の吹き替えが用意される。同社のオリジナルアニメーション担当のアラム・ヤコビアン氏は「ネットフリックス、そして我々が抱える数百万もの会員の夢が叶った。

同じ記事の続きだがここでは2つのことがいえる。1つは2回目以降のネットフリックスはカタカナだけで表記していること。これはいたずらに併記を続けても長くなるだけなので良いとは思う(Netflixのが短いけど)。
もう1つはアラム・ヤコビアン氏がカタカナ表記だけであること。これはアルファベット表記をしてほしかった。この人物の日本の関連記事だけがヒットし、重要な本人HPやWikipediaページにたどり着けないからだ(あればの話だがあるかも分からない)。アルファベットを予想する時間もムダにかかる。それはそれで楽しいかもしれないけど。

マネー現代

それが、Googleが提供する地図サービス「Google Map(グーグルマップ)」だ。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69819

丁寧だ。ただこの記事では、FacebookやInstagramはアルファベットで統一していたが、グーグルは上と下の引用のようにアルファベットとカタカナ表記が混在していた。

グーグルが本格的にグーグルマップ上の情報充実に動き始めたのは、こうした食通たちが次第にグルメサイトから離れていった、まさにその頃です。

Diamond Online

ユーチューブ(YouTube)で新しい動画ジャンルが流行している。「ルーティーン動画」だ。その内容は、主役となるユーチューバーの日常生活を流すだけ。
https://diamond.jp/articles/-/226034

これも同じく丁寧だ。(ただかなり個人的な意見だがYouTubeはカタカナ表記のユーチューブだとYouTubeっぽくない)

NHK

世界の貧困問題に取り組む国際的なNGOの「オックスファム」は20日、スイスで開催されている「ダボス会議」にあわせて経済格差に関する報告書を発表しました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200122/k10012254271000.html?utm_int=all_side_ranking-social_005

これは良くない例だと思う。カタカナ「オックスファム」で検索すると当然日本のものが出てくる。しかし日本のものはすでに解散している。
http://oxfam.jp/news/cat/press/post_687.html
一応調べたら日本以外ではふつうに活動しているNGOのようだが、こうなってくると、この報告書は大丈夫なのかという質問が1つ増えてしまう。

週プレNEWS

そうした現場の最たる例が、中国の大手動画配信サービス「ビリビリ」のイベントでした。
https://wpb.shueisha.co.jp/news/technology/2020/01/15/110496/

カタカナ表記のみだ。中国の会社名などの場合はアルファベットの代わりにオリジナルの漢字を入れても良いと思う。漢字から会社の由来や創業者が込めた意味が分かる場合がある。ビリビリは正直分からないが、阿里巴巴や百度、抖音短視頻だとイメージがわく。記事の最初にでてきたときだけ「ビリビリ(哔哩哔哩)」と表記して、以降ビリビリとカタカナで表記するのが良いと考える。

2017年2月に、落合さんにもお声がけして『ソードアート・オンライン』(以下、SAO)というアニメの劇場版作品の宣伝イベントをやりました。

これは以下省略の意味合いだが、海外の固有名詞にも同じことをすればいいだけだ。(あと別の話だがアルファベットを全角英字にしているのはなぜだろう)

Bloomberg

米調査会社アップ・アニーの調べで分かった。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-01-15/Q42XICT0AFB401

カタカナ表記のみだ。この記事ではカタカナ表記のみに徹していることが分かる。

ねとらぼ

詐欺師が悪いが「Paidy社にも問題ある」との意見も
https://nlab.itmedia.co.jp/research/articles/5166/

このように日本の会社名がアルファベットだけの会社はもはやたくさんある。それをカタカナに直したりは当然しない。(正直Paidyは、単語だけ見るとパイディとでも言いたいがペイディらしい。日本の固有名詞が読みづらいこういうパターンは併記の重要性を感じる)。

Forbes

インスタグラムの利用者数の年間上昇率は昨年、初めて一桁台にまで低下し、今後の3年で2%以下になると、調査企業eMarketerは先日のレポートで発表した。
(中略)
中でも力を発揮したのはショッパブル広告(shoppable ads)と呼ばれる新機能で、ユーザーらは広告からダイレクトにプロダクトを購入できる。
ただし、ショッパブル広告はまだ初期段階にあり、「広告主たちは広範囲な利用を決断するに至っていない」とeMarketerのDebra Aho Williamsonは分析する。
https://forbesjapan.com/articles/detail/31737/1/1/1?s=ns

これは良い表記の仕方だと思う。明らかにカタカナでも通用する固有名詞(インスタグラム)はカタカナで。そこまでは知名度ない固有名詞(eMarketer)はそのままアルファベットで。ショッパブル広告といった比較的新しい言葉は丁寧に英語を(shoppable ads)併記してある。また人名(Debra Aho Williamson)もそのままアルファベット表記で検索しやすい。

さらにこの記事の続きでは、以下のように人名は名字だけ残して表記してある。これも短縮化の観点で良い。

「広告主はインスタグラム広告がブランドの認知度向上に役立つとみなしているが、購入に関しては、その他のプラットフォームに依存している」とWilliamsonは述べた。

もう1点。

しかし、アナリストは新興勢力のTikTokやスナップチャットがインスタグラムの売上を奪っていくと予想する。

確かにTikTokをティックトックと書くメディアはあまりみたことがない。スナップチャットはカタカナ表記だ。一定の知名度を誇ればカタカナ表記に変わる方式なら、TikTokのティックトック化はすぐそこに来ているかもしれない。

美術手帖

ラインアップのなかには1993年に同館で開催された「ロイ・リキテンスタイン展」や、02年に開催された「ゲルハルト・リヒター:エイトグレイ」展など、1936年から2006年までに開催された展覧会カタログが並んでおり、貴重な資料として活用できるだろう。
https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/4003

個人的にこういった展示名などは一番アルファベット表記をしてほしい。カタカナで検索しづらい。「エイトグレイ」といった作品名もアルファベット表記で目に焼き付けた方が絶対良いと思うんだけどなあ。

Business Insider

2020年のゴールデングローブ賞では、Netflixの作品から映画とテレビの17部門に34のノミネートがあった。しかし、その夜、映画部門で受賞したのは最優秀助演女優賞のローラ・ダーン(「マリッジ・ストーリー」)だけで、テレビでは「ザ・クラウン」のオリビア・コールマンがドラマ部門の最優秀主演女優賞を獲得した。
https://www.businessinsider.jp/post-205304

ここまで固有名詞のオンパレードだと併記するのは長くなるし気が引けるかもしれないが、それでもオリジナルの言語は最初は必ず表記すべきだと思う。エンタメ作品のタイトルは時々よくそんなとんでもなくセンスない邦題を付けたなというのがあるが、そのリスクヘッジとしても役に立つ。

東洋経済ONLINE

アメリカの議決権行使助言大手、インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は2019年2月に基準を改定し、
https://toyokeizai.net/articles/-/323723

ISSという省略名があるならば、わざわざ全てカタカナにせず最初からInstitutional Shareholder Servicesのままで良いのにと思う。


以上各メディアの表記の違いを見てみた。
メディアによって執筆者に判断をゆだねている場合もあるかもしれないが、各記事によって特徴があって興味深い。

海外の固有名詞をカタカナ表記だけにこだわる理由

逆になぜ海外の固有名詞をカタカナ表記することにこだわるのか。理由を考えてみた。

・アルファベットを読めない読者への配慮
・縦書きベースである紙新聞が母体で横書きが基礎のアルファベットは読みにくいため排除してきた名残
・日本語文化の尊重
・アルファベットだと発音が人によってばらけてしまうので共通の音の提示
・アルファベット表記すると文章が長くなる/読みにくくなる可能性
・報道対象の海外の会社が日本メディア用に親切にカタカナを用意してくれちゃっているためそれで報道せざるを得ない

などだろうか。

まとめ

これらの理由があってもぼくの考えとしては冒頭で示した通り、記事で書かれる海外の固有名詞は、原則アルファベット、例外and/orカタカナ表記で書くべきと思う。

現在、以上の理由等でカタカナ表記だけにこだわっているメディアは、アルファベットを表記してほしい。
アルファベットを読めない読者に配慮するならば、逆に読める読者にも配慮すべきだし、カタカナであれば読みやすさに直結するともいえない。

学習面では、毎日接するニュースだからこそアルファベット表記することで、言語への意識も潜在的に影響する気がする(特に若い時にどれだけ触れるか)。
また検索面では、インターネットで世界がつながっている検索の時代にもかかわらず、カタカナ表記だけで済ませることで検索をさせにくくしている点は事実であり不親切ではなかろうか。

余談だが、そもそもどうやってカタカナを決めているのだろう。海外固有名詞カタカナ決定委員会なるものがあったら参加してみたい。
また他の非アルファベット言語文化圏の国は海外の固有名詞をどう表記しているのだろうか。これも気になる。

カタカナは素晴らしい日本語の形態だ。ただ、だからこそ正しく活用すべきだと思う。海外の固有名詞にあてられるカタカナは当然ながらオリジナルをベースに作られる。メディアとして読み手を意識するのは当然だが、ソースであるオリジナルを尊重することも大事だ。
であれば、記事で書かれる海外の固有名詞は、原則アルファベット、そして読みやすさの観点を考慮して例外and/orカタカナ表記で書くべきとぼくは考える。


小泉成文 (Nari Koizumi)

大好きな横浜名物シウマイ弁当を食べる時、人生であと何回食べられるんだろう。。と考えます