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『それでも僕はここで生きる』 #25 畏敬
25.畏敬
最近僕の前に出現した二人の女は、南の要素をもっている。これが偶然なわけがない。僕は、次のステップに進みたくなった。だが、何をしたら良いのかわからなかった。
とりあえず僕は『広瀬南』のいる療養所に向かうことにした。
療養所の『広瀬南』の部屋に来ることももう慣れてしまった。だが、そんなことを言っている場合ではない。彼女は手がかりを握っていて、僕は一刻も早く南を見つけ出したいのだ。いや、そうしなければならないのだ。
『広瀬南』の部屋に来ると、彼女はいつものように眠っていた。僕はいつもの暗闇に誘われるのを待っていた。
だが、いくら待っても暗闇は出現しなかった。僕は残念な気持ちになった。毎回そうなるわけではないとおいうことがわかり、僕の焦りは大きくなった。
でもここで踏みとどまっているわけにはいかない。僕は祖父の様子を見てから療養所を後にした。
療養所を後にした僕はアルバイトが始まるまで時間があることを思い出し、車を走らせて近くの川に向かった。
川の近くに到着すると、車を駐車し、降りて、川に近づいた。
そこは川の下流であり、あたりに広がる砂や石は粒が小さかった。川の水を触ってみると、水はかなり冷たかった。
川を改めて見てみると、流れはかなり早く、恐怖すら覚えた。流れが急なところはまるで荒波のたった海のようで、僕はそこに死を予感させられた。
怖かった。大自然の圧倒的な力を見せつけられ、僕は人間の小ささをひしひしと感じ取った。
川の周りは木々に覆われていたが、川幅が広く、かなりひらけた印象を受けた。川は太陽の光を受けて輝いており、とても綺麗な一面もあった。
僕はこの川の流れる光景を見て、幼少期の記憶を蘇らせた。
あまり長くいると、恐怖で帰れなくなってしまいそうだったので僕は足早に川を後にした。
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