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チマッティ資料館(東京都調布市・調布駅)

京王線の調布駅。普段の生活圏内にあまり京王線を使用する機会がなく、そもそもどう行ったら良いのかすら手探りである。名前の似ている田園調布からはだいぶ離れている。

春の終わりから初夏にかけての暑い日。隣駅にある武者小路実篤記念館を目指している矢先、興味深い史跡があることを知って少し見てみようと思い立ち調布駅に降り立ったわけである。

映画にもなった遠藤周作『沈黙』。江戸時代の隠れキリシタンをテーマにした小説である。
簡単に概要を説明すると、戦国時代にもたらされ九州を中心に発展したキリスト教だったけれど、いろいろな理由でキリスト教禁止令が敷かれ、民衆たちは棄教を強制された。そんな状況を見かねてヨーロッパの本国から、民衆の信仰を絶やすな、という目的で密かに派遣されてきたロドリゴ神父が信仰と迫害の間で苦しむ物語である。
これは実際にあった話に基づいている。そしてモデルになった神父のお墓が実はこの調布駅の近く、サレジオ神学院という教会の敷地の中にあるという。

いざ行きめやも、と地図を片手にその場所を目指す。調布駅を電気通信大学方面へと汗だくになりながら北進することおよそ20分。ほぼ深大寺のそばである。朝とはいえ陽射しがなかなかきつい。
次の予定もあるしいい加減やめようかな、と心が折られそうになった時、教会の敷地が見えてきた。教会は基本的に開放されている。とはいえ、信者ではなく見学が目的の自分は部外者であることにはかわりない。敷地内に迷惑がかからないように見学することにする。

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敷地の奥の方にチマッティ資料館がある。日本での布教に尽力したチマッティ神父の生前に集められた化石など(交流のあったボロニャ大学から送られた)標本や作曲した歌曲、著作など多数の資料がある。事前に連絡しておくと館内の案内もしてくれることも。

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チマッティ資料館のすぐ脇に『沈黙』のモデルとなったジュゼッペ・キアラ神父のお墓がある。戒名が刻まれ、帽子をかぶっているかのような変わった形をした墓石は調布市の指定有形文化財となっている。
神父やシスターが朝のお勤めや清掃などで忙しい中でも優しく迎えてくれるので、とても安らかな気持ちになる。

資料館の向かいにある地下聖堂にはチマッティ神父の棺も安置されている。とてもひんやりとした空気の中で誰もいない。じっと座りながら思いをはせるのもまた良い。

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