東京藝術大学美術館(東京都台東区・上野駅 藝大コレクション展)
数多くのアーティストを輩出していることで知られる東京藝術大学。いわゆる日本における芸術大学の最高峰とされている唯一の国立大学である。当然ながら歴史も長く、前身である東京美術学校から数えれば130年以上の歴史を誇る。芸術家を生み出すだけでなく多くの作品を収蔵しており、今回の企画展では美術館の収蔵作品を中心した展示を開催。
三角型の螺旋階段を降りた地下に展示室がある。チケットはここで確認する。展示室は一室ながら広大で、見学者も多かったけれど分散して観ることができるくらいの広さと展示数、それに絵画の他にも像だったりとバラエティに富んだ構成になっている。
収蔵品の中でも奈良時代の天平期にスポットを当てた展示ということで、今回の目玉でもある『浄瑠璃寺吉祥天厨子絵』の中から弁財天及び四眷属像を中心にして梵天、帝釈天が紹介されている。さらに加えて前期には広目天と多聞天、後期には持国天と増長天がそれぞれ揃えられており、それら全て重要文化財というラインナップである。格が違う。さすが国立。大学の美術館の中でも重要文化財をこれだけ一堂に揃えられるところはあまりない。それぞれが800年以上前の作品である。
さらに同時代の羅漢図や、鎌倉時代の絵巻、時代を遡って7世紀に作られた繍仏裂などのこれまた重要文化財も惜しげもなく展示されている。印象深いのは、重要文化財ではないけれどこもまた古い奈良時代の月光菩薩坐像。漆塗りの木造なのだけれど、両腕と腰の部分が欠損していて、それでもまだ残されている。残そうとした先人たちの想いたるや。
明治・大正の大家による作品もまた注目したい。天平文化のテーマに合わせて仏像などを題材として取り上げている。狩野芳崖や橋本雅邦といった近代日本画の父たち(いずれも展示作品はこれまた重要文化財)や同年代の技巧派・川端玉章、さらに彼らの教え子世代にあたる下村観山、菱田春草らの作品もある。
中でも印象的だったのは『綵観』と呼ばれる明治時代につくられた工芸品で、当代きっての工芸家たちによる美の饗宴。18人の芸術家がそれぞれ与えられた画板に作品を注ぎ込む造りをしている。橋本雅邦や川端玉章をはじめ、高村光雲、濤川惣助、宮川香山、山田宗美などオールスター揃い踏み。それぞれの得意分野で仕上げる作品にうっとりすること間違いなし。
企画展の内容によっては別館である陳列館も開放される。今回は本館のみだったものの、名品が多く揃っていて見応えのあるボリュームたっぷりの展覧会。トイレはウォシュレット式。
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