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埼玉県立近代美術館(埼玉県さいたま市・北浦和駅 美男におわす展)

神奈川には多摩川、千葉には江戸川があるように、都内から埼玉へ出るのは荒川という巨大な大河が行く手を阻む。県立近代美術館があるのは北浦和駅。電車での体感時間が思ったよりもある。北浦和駅からの道は直線になっており、MOMASこと美術館のある公園を駅から見渡すことができる。

今回は会期ギリギリの「美男におわす展」へ。匂わすなのか、に居わすなのか、ダブルミーニング的にあえてひらがな表記しているのが洒落ている。江戸時代の浮世絵から現代アート・マンガに至るまで、美男にコンセプトを絞った展示の仕方に学芸員の方々の意気込みが感じられる。つまり「覚悟」ってやつだ。ほとんどの展示に説明文が丁寧に添えられており、愛がこもっている。

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2階で行なわれているこの企画展では現代アートの項に関しては撮影ができる。浮世絵は撮影できない。このあたりはどの館も共通だろうか。出展している作家陣も錚々たる顔ぶれで、蕗谷虹児の男色っぽさ、高畠華宵の妖艶な目つき、歌川国芳、歌川豊国らのスタイリッシュな浮世絵、月岡芳年の怒涛の浮世絵など堂々たるもの。個人的には金子國義と船越桂が出展されていたのが僥倖である。それに竹宮恵子、魔夜峰央、よしながふみといった少女マンガまで幅広く網羅されている。

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やはり高畠華宵は大量に出展されているだけに秀逸で、どうやったらあんなに色気のある三白眼を描けるのか。山本タカトも然り。眺めていると胸がドキドキしてくるのである。これに金子國義も同じエリアに配されている。ここのキュレーターはよくわかっている。

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アニメ『聖闘士星矢』のコーナーもある。登場人物みんな目が大きい。なぜか二の腕を露出している。ここまできたら『キャプテン翼』もぜひお願いしたいところである。近くにいわゆるBLの走りとも言える雑誌JUNEがいくつか展示されているのも良い。すべて雑誌ロゴの隣に美少年の写真が載っているのもまた食欲をそそるではないか。たまらぬ。

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現代アートでは金巻芳俊の『空刻メメント・モリ』が秀逸。全方位からぐるりと角度を変えて見つめればあら不思議、死を想うのである。船越桂も確か松濤美術館でも見た作品だったが、改めてまじまじと見る。目玉の大理石に吸い込まれるようである。ドゥフドゥフ言いながらじっとりと作品を眺めるのであった。

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常設展は館の入口側にある。MOMASの所有する絵画が中心で、ピカソ、シャガール、キスリングといった画家の作品は撮影も可。モネもね。

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それにドラクロワや、国内からは鏑木清方、小村雪岱、伊東深水らが並ぶ(これらは撮影不可)。特集として中野四郎による彫刻・塑像が多くある。屋外にも展示場があり、意外と広い。

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地下には船越桂の父である船越保武の彫刻作品がある。基本的にはこの地下フロアは有志やサークル活動の発表の場所として使われている様子。長机が出しっぱなしにされていたり、ちょっとした文化祭のような感覚がある。悪くない。トイレはウォシュレット式。

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