見出し画像

川崎市平和館(神奈川県川崎市・元住吉駅)

8月だから、という理由にするべきでは無いにしても、8月に入ると先の戦争のことを考える機会が多くなる。先人たちの犠牲の上に今があることを忘れてはいけない。広島、長崎、それに東京も大空襲によって多く被害を受けた。東京近郊である神奈川県もその例外ではなく、この平和館のある川崎市も軍需工場が多くあったことから標的とされ甚大な被害を受けている。平和館のある中原平和公園は米軍による接収のあと、返還されたことをきっかけに作られた平和祈念の公園で、園内には平和祈念の像や彫刻作品が多く展示されている。

ほぼ貸切状態の館内ながら、この時期ということもあるのだろうか、数人の見学者が訪れている姿が見受けられる。2階の展示室は入口から空襲によってできた瓦礫、天井には空襲爆撃に使われたM69爆弾の模型も再現されており、否が応にも戦争を感じずにはいられない造りとなっている。

シリアスな気持ちになる

死傷者3000人以上の被害を受けた川崎市は特に太平洋戦争の末期に20回以上の空襲にさらされており、中でも1945年4月15日の通称「川崎大空襲」では焼夷弾や機銃掃射により民間人に多くの犠牲者を出し、特に現在の川崎駅周辺は川崎市役所を除いたほとんどが焼け野原となったという。なお、その後5月29日には横浜大空襲が行われ、こちらでも10000人に上る死傷者が出ている。

灯火管制下の生活

奥にある映像室では巨大なスクリーンで空襲爆撃についての映像を紹介している。こちらでは川崎大空襲だけでなく、特に第二次世界大戦での世界中で起こされた空襲について採り上げており、スペインでドイツ空軍によってもたらされたゲルニカ空襲など、惨状を余すところなく流している。小学校の見学なども見据えて座席数は多くあるが確実にトラウマになるほどの案件。それだけ戦争は悲惨だということが伝わる。

空襲だけでなく国家による弾圧というアプローチでも展示がされている。特に太平洋戦争が終わってからも世界各地で戦争や民族間の紛争は絶えず起こっており、ナミビア、韓国、カンボジア、ルワンダ、そして21世紀に入ってからもスーダンでも虐殺が起きているという。こういった報道は国内にあまり入っておらず、世界の混迷は未だ続いている。こういったことに対してジャーナリズムはどう対応するのかが強く問いかけられている。メディア関係者はこういう博物館に足を運ぶべき。ゴシップ記事とかは『週刊実話』とか専門誌に任せておけば充分に事足りるので。

防空壕に入れる

1階には防空壕の原寸大模型があり内部に入る体験もできる。その他、企画展として今回は長崎の原爆投下についての特集が組まれている。企画展示室はイベント講座でも利用されている広いスペースで、展示室内には岡本太郎『明日への神話』を学生が複製した作品も展示されている。トイレは和式と洋式はウォシュレット式。薄れつつある戦争の記録を知るためにも訪れておきたい博物館の一つ。

企画展示室は体育館みたいなスペース


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?