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東京オペラシティICC〜東京オペラシティアートギャラリー(東京都新宿区・初台駅)

・東京オペラシティICC

北斎と広重という江戸時代を代表する浮世絵師にスポットを当てた企画。本来であれば劣化しないように薄暗い照明で展示する浮世絵を、デジタルプリントで細部まで再現して明るい照明の下で間近に見ることができる。
NTTの技術力を集めた企画展で、展示品はもちろんのこと、タッチパネルも非接触式の最新鋭(空間座標にタッチする感覚)で興味深い。


会場に先立って任意で約20分ほどの映像作品を見る。おそらく人数制限への配慮なのかもしれない。葛飾北斎『富嶽三十六景』と歌川広重『東海道五十三次』それぞれが残した代表的な作品の紹介などとともに、この企画展における目玉として、細部にわたるプリントによって和紙の模様まで再現されているということが挙げられている。
浮世絵といえば絵師が作者であると普通は考える。けれど実は出版事業が発達した江戸中期以降、大量生産するためにこれは分業制によって行なわれている。浮世絵というのは基本的に版画なので、絵を描く人(絵師)の他に彫る人(彫師)と摺る人(摺師)が必要なのである。
絵師が下絵を描き、彫師はそれを丁寧に板に彫る。色付けは彫師や摺師の仕事に依るところが大きい。一色ずつ位置がずれないように丁寧に和紙に刷り上げて行く。例えば葛飾北斎は多くの絵を江川留吉という彫師に指定していたという。
本企画では、和紙の模様にまでミクロにスポットを当て、いかに効果的な装飾を施しているのかまで見ることができる。

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本物と見紛う作品を10センチレベルの距離まで近づいて見られるのは大塚美術館以来かもしれない。浮世絵に興味があれば何時間でもいられるほどである。何と言っても富嶽三十六景と東海道五十三次が一堂に会しているという愉悦。それだけも満腹である。

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さらに面白いのは、北斎の『神奈川沖浪裏』の中に実際に入り込むことができたり、鑑賞者が移動するとそれに従って絵が動くなどのギミックがふんだんで、アミューズメントとしても成り立っている。西洋絵画からはゴッホやモネの絵があり、これもまた目の前に立って動作するとそれに従って絵が動くというのがある。なんという至福だろう。

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・東京オペラシティアートギャラリー

加藤翼という現代作家の展示会。巨大なインスタレーション群が目を見張る。大勢の手による大量の縄で巨大な構造物を曳き起こす、というアート。展示会にはその構造物と、曳き起こした映像が展示されている。

その中でミニチュアサイズの展示があり、個人的はそちらにメッセージ性を感じた。オリンピックの図録の上で、無数の紐によって曳き起こされる構造物。すれすれのバランスで成り立っていた、という意味合いのような。また、日本列島と韓国の間にある対馬の地図に無数に引かれる両国からの紐なんかは重たいテーマをはらんでいるような。

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巨大な構造物の方で最も興味を引いたのは東日本大震災後の三陸沖で、被災者である地元の人たちの協力を得て曳き起こされた灯台を模した建造物。あと、個人の秘密をシュレッダーで巨大な蛇のようにして地下鉄の構内に並べた作品は面白かった。

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正直なところ全てが良かったかというと微妙ではある。大学生のノリにしか感じられなかったものもあってどこまでアートと許容するかは個人差があるだろうから。けれど上記をはじめとするいくつかの作品は見てて面白かった。


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常設展は日本画が中心。松本祐子による妖艶な花や西野陽一の精緻な風景画に目を惹かれる。あと芝康弘のノスタルジックを感じさせる絵は日本人の原風景なのかもしれない。泣きそうになった。
若手作家コーナーでは衣川明子による抽象画。人面と魚が融合する自画像?みたいなのが良かった。
東京オペラシティのトイレは各階すべて安定のウォシュレット式。

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