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新選組関連その1(土方歳三資料館〜新選組ふるさと歴史館〜佐藤彦五郎新選組資料館 東京都日野市・万願寺駅/日野駅)

土方歳三資料館が10月に閉館してしまうニュースを受け、いつか再訪しなくちゃと思っていた矢先、GWの混雑前に訪問しようと思い立って訪問。
日野は新選組の地として有名で、関連する資料館が日野の各所に点在する。せっかく土方歳三資料館を訪問するなら新選組に関連する資料館もコンプリートしておきたいと思い立ち、鬼のようなスケジュールを組み立てる。体力というものを計算に入れていない。

・土方歳三資料館(東京都日野市・万願寺駅)
土方歳三が愛用していた『和泉守兼定』の刀身を公開しているというのもあり、折りしも刀剣ブームを受けて見学者が激増、開館時間を早める処置まで行われている。念には念を入れて開館前の朝8時半に訪問。休日なのに早朝6時起き。

早朝は行列が少なめ 午後にはこの看板あたりまで行列

眠い目を擦りながら訪れればすでに行列が20人ほど。最後尾に並んでいたら5分もしない間に続々と後続がつきはじめる。その状況下に資料館側も憂慮したらしく、本来の開館9時よりも少し早い時間から入場が始まる。

周りは人だかり この看板は行列の途中にある

庭には青銅でできた土方歳三の胸像がある。裏には義豊の名前も刻まれている。他にも矢竹や歳三錦といった所縁の草木が植えられている。入口には旧土方家の大黒柱が梁になって残されている。歴史的資料が多く館内は撮影できない。

看板のある柱と梁は生家のものらしい

1フロアで決して広くはない資料館ながら、土方家の歴史から新選組、五稜郭に至るまでの関連資料が多く展示されており量と質ともに満足できる内容になっている。お大尽と呼ばれた豪農の家に生まれながら父も母も亡くして兄夫妻に養育され、実家秘伝の「石田散薬」を行商しながら剣の修行を積んだ時期、そこから天然理心流の同志たちと京都で新選組として活動する時期、そして鳥羽伏見の戦いを経て五稜郭までの時期、それぞれの時期に関係する資料を紹介している。祖父が得意だった影響を受けて豊玉の号で吟じた俳句も載せられている。

従来であれば自由な順番で見ることが可能なのだろうけれど、キャパシティを大きく超える人数が訪れていることもあり、このご時世ながら一歩ずつ詰めてじりじり進むという形態なので、もちろん感染対策をとっていることが大前提となる。

この右側にいるアニメキャラクターと撮影できるよ!やったね!

最後には木刀(模擬)を持ちながらアニメキャラクターと一緒に希望者は記念写真も撮れる。スタッフの方による撮影の合図「いずみのかーみ」がツボ。トイレは個室で洋式。

・新選組のふるさと歴史館(東京都日野市・日野駅)
土方歳三資料館から日野バイバスを魍魎の如く西進し、川崎街道を北へ曲がって日野駅の方へ向かう。途中の日野郵便局から裏道へ入り、水路沿いをひたすら歩いて行くとやがて度肝を抜かれるような階段が現れる。

殺す気か

百段階段。実際には百段以上ある。ここを上るのが最短距離だし何よりこんな面白いところ上らないわけにはいかない。というわけで息を切らしながら上りきって息も絶え絶えに直進、1つ目の信号を曲がったバス通り沿いにあるのが新選組のふるさと歴史館。こちらも混雑するという情報があったので優先して訪問を試みた次第。

11時くらいには混雑しはじめるらしい

実際には先客が2名ほどいたくらいで先ほどに比べたらかなり自由に見学できる。
ロビーには記念撮影できるスペースがある。館内は撮影できないのでここで記念写真を撮るというのが一般的。従来であれば衣装の貸し出しも行なっているらしく、何人もの芸能人が訪問して撮影している写真が残されている。

地元の学生有志が爪楊枝で作ったらしい肖像

最初の展示室では日野についての紹介がある。新選組を知る上では欠かせない日野宿。新選組の面々が登場する前、江戸時代に主要街道の宿場町として栄えたことがわかる。ここだけは郷土博物館のような展示内容になっている。

隣の展示室からが新選組に関連する展示内容となっている。天然理心流の道場である試衛館の道場主(先代の養子)である近藤勇や門人の佐藤彦五郎、土方歳三、沖田総司、井上源三郎、山南敬助の他、永倉新八、原田左之助、藤堂平助(あるいは斎藤一も)など、のちの新選組の中核をなす人材がこの時に集まっている。尚、この時代に勧進された八坂神社奉納額の複製も展示されている。門人では近藤勇、佐藤彦五郎、沖田総司、井上源三郎の名前がある。ちなみに初期メンバーの土方歳三のみ名前がなかったので学芸員の方に尋ねたところ、この当時まだ門弟ではなかったからだそう。

館内では記念撮影できるのが2箇所

やがて幕末の動乱期になると、京都の治安維持を図るという名目で清河八郎が結成した浪士組へ参加、京都へ上洛することに。ここで本来の目的と外れ勤王を明らかにした清河八郎と袂を分かち京都に残留、水戸出身の芹沢鴨らと共に京都守護職だった会津藩主の松平容保の庇護によって新選組を結成した。試衛館の人物が全て京都に残ったのかと言われればそうではなく、その何人かは日野へ戻っている。試衛館メンバー上洛時に名主として日野に残留していた佐藤彦五郎からはこの出戻り組を強烈に非難した手紙が残っている。
展示コーナーの一角では天然理心流の型についても説明されている。従来であれば実際に木刀を用いて練習することもできる。

展示ではその後の京都での活動における池田屋事件の報償目録や、鳥羽伏見の戦いを経て五稜郭で土方歳三が戦死するまでの詳細を展示している。幕府側だった新選組は明治時代になって不遇の扱いを受けていたが、徐々にその評価を回復して今日に至るといったことや、出戻り組たちの一部が結成した新徴組(沖田総司の義兄も参加していた)もまた同様に評価を回復していったことなどが紹介されている。現在も親族たちによる交流があり、近藤、土方、沖田、斎藤、永倉、佐藤らの親族が一堂に介した記念写真も残されている。
映像で新選組の歴史についてが紹介されているのだけれど、ガラスケース内の展示といくつか矛盾している箇所もあってミスリードを誘いそうになるので大略を知るというスタンスで観るのが良いかもしれない。
ちなみに土方関連の手紙を見ると、「圡方」と「土方」両方のものが混在する。これについても伺ってみると本人は「土方」、他の人はどちらもまちまちで書いていたらしい。土方家は日野に点在しどちらの名字もある。土方歳三の家は本家筋に近いそう。トイレは和式と洋式。

・佐藤彦五郎新選組資料館(東京都日野市・日野駅)
百段階段を降りて川崎街道をひたすら北上、甲州街道へ進む途中にあるのが佐藤彦五郎の玄孫にあたる福子氏が館長を務める資料館がある。少し道を入った場所にあるけれども旗が立っているのが目印になるかもしれない。

旗が無いとぱっと見わからないかも

一般的な家を解放した展示室でそれほど広いわけではないものの、広さが重要なのではないことがわかる資料館。貴重な資料が大量に保管されており、新選組が好きであれば必ず訪れておくべき博物館。館長が在任中であれば一つ一つの展示品についても説明してくれる。訪れた時には見学者が2名だけだったのでほぼ独占状態で話を伺うことができた。
ここでの目玉はなんといっても刀身も公開されている『越前康継』。土方歳三の刀というと先だっての『和泉守兼定』、京都にある『大和守源秀圀』もあるが、『越前康継』は彦五郎の長男に渡したという記録がしっかりと残っている。もともと松平容保から土方歳三に拝領された刀で葵の御紋が入っている。刀剣の試し切りをしていた業物鑑定家の山田浅右衛門が試し切りを行った記録が刻印されており格付けがなされている。それだけの価値ある刀なので実際に常用使いされていたかは想像するしかないが、誰から拝領され誰に渡されたのかが記録に残っているのは資料価値が高い。

また有名な土方歳三の写真(函館から市村鉄之助が持ち帰った現品)、近藤勇の写真(本人から直接もらった現品)など、見るべき箇所が多く、佐藤彦五郎がどれだけ新選組隊士にとって重要な人物だったかが伝わってくる。
土方歳三が使用していた鉄扇(佐藤彦五郎の鉄扇に比べると骨組みは竹でできている)、愛用していた龍笛、それに土方歳三の手紙だけでなく、近藤勇、沖田総司、永倉新八の手紙まである。特に沖田総司の手紙は資料価値が非常に高く、ほとんど残されていない。非常に丁寧な筆遣いで字も綺麗、佐藤彦五郎の「藤」を抜いている(尊敬の意味を込めている)、冒頭のみ土方「君」で後続は土方「兄」と表現しており教養の高さが窺える。山南「兄」の死に触れている貴重な記録でもある。

そして近藤勇。佐藤彦五郎に贈られたピストール(発音注意)が残っている。記録では2挺が贈られており、そのうちの短銃が佐藤家に残されていたという。銃器の登録をしなくてはならず東京都に申請に行ったところ、銃器の鑑定員としてあの松本零士がいた、というエピソードも面白い。『宇宙戦艦ヤマト』でも沖田とか土方とか徳川が登場したように新選組好きな松本零士。時空を超えての出会いってやつですね。
新選組が世に出るきっかけになったのは子母澤寛による『新選組始末記』によるもの。子母沢は『新選組始末記』の執筆にあたり多くの関係者に取材をしたそうで、佐藤彦五郎の子孫もやはり取材を受けてそのしつこさに辟易したというエピソードも残っている。
生前の人たちから伝え聞いたエピソードに触れられるのは興味深い。こちらにも何人もの芸能人が訪れている。トイレは無し。

途中から見学者が増えてきた

全体を記事にすると恐ろしく長い記事になりそうなので(読まれているかどうかは別として)前半戦はとりあえずこの3箇所。
後半の記事は明日。

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