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東京都庭園美術館(東京都港区・目黒駅 ボタニカルアート)〜国立科学博物館附属自然教育園(同上)

・東京都庭園美術館(キューガーデン 英国王室が愛した花々 シャーロット王妃とボタニカルアート)

東京都庭園美術館で開催されていたのは英国王立植物園のキューガーデンが所蔵するボタニカルアートの展覧会。
ボタニカルアートとは端的に言ってしまえば植物画で、科学的な視点から描かれているため、全体図の他に雄蕊や雌蕊の拡大や花びらの特徴なども捉えている絵になる。18世紀に建立された庭園を基礎とし、その後にシャーロット王妃によって規模が拡大したことで一気に隆盛したキューガーデンは研究機関としても飛躍を遂げ世界最大級の植物園となっているという。
ボタニカルアートの画家は王家御用達の宮廷画家だったりするのだけれど、同時に女性画家の活躍も目覚ましくなっているというのも時代性を考えると興味深い。

庭園美術館は展示内容によって撮影OKとNGの時期が分かれている。今回は撮影不可。研究資料として今でも扱われることが多いのかもしれない。
細部に渡るまで精緻に描いており、アートというより資料の趣が強い。花の名称には詳しくないので、どこまで正確なのかはよくわからないのが惜しいが、他の見学者はかなり熱心に見ている人が多い。年配や子供連れの方が多い印象がある。もしかしたら自身でも同じように花の絵を描いているのかもしれない。

ボタニカルアートの展示とともに、王宮で愛用されていたウェッジウッドの陶器も展示されている。陶器の模様も当然ながら花の紋様が施されている。天気が良かったのもあってか館内は結構な人数で、人ごみを避けてややスピードアップ気味に見学。作品の前に人が集中しているときは逆に室内の造形を眺める。

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ほとんどの部屋には天井からユニークなデザインを施された照明器具が吊るされているので、その一つ一つの造形を比べてみるのもまた面白い。
書斎には照明器具がなく間接照明になっているのも時代性を考えると面白い。どうやら実際の書物の際は机上にランプなど置いていたこともあるらしい。
いつもここに訪れる際にはとにかく気になった点を片っ端から尋ねるという、厚顔無恥な行いをしでかしているのだけれど、学芸員の方はかなり詳細に答えてくださるのでかなり良い印象がある。書斎の間接照明の件もしかり、姫宮寝室と姫宮居間だけが当時の壁紙を残しているという情報だったり、ボールを投げると投げ返してくれるその知識量には頭が下がる。

見学コースはまず本館の1階を回って2階に階段で上がり、再び階段で降りて1階から新館へ移動する、という順路になっている。トイレはウォシュレット式。
1階の階段を降りてすぐの窓が相変わらず一部欠けている。おそらく窓も当時のままななのでガラスの張替えは行っていない模様。個人的には密かにその穴をここに訪れる際のチェック項目にしている。

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通路を抜けて新館でも同じようにボタニカルアートの展示がおこなわれている。当時のアトリエを再現した箇所だけは撮影することができる。アトリエとは言いながらも食卓の延長にあるようなもので、当時のボタニカルアートは意外と生活圏と身近にあったものなのかもしれない。

新館の第2展示室では庭園美術館の四季と、キューガーデンの所蔵コレクションについての紹介映像。ちなみに庭園美術館と、隣の自然教育園にも題材で描かれていた植物のいくつかがあるそうなので、興味がある人はそちらも探してみると良いコースなのかもしれない。地図も配布している。
日本庭園には池があるのだけれど、この池が異様な青さを湛えている。もしかしたら藻などの効果なのだろうか。空の青さとは違う深い青。

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・国立科学博物館附属 自然教育園

庭園美術館自体も広大な土地なのだけれど、それよりもさらに広大なのが隣にある自然教育園。庭園美術館の土地はその一部であると言っても過言ではない。国立科学博物館が管轄している広大な敷地には四季折々の植物が、生育に見合った場所で咲いている。また絶滅する種の保存も行っているという。正門すぐにある教育管理棟ではそれらの研究成果などがまとめられているため興味の限りいくらでも見られる。

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園内は特別保存地区(立ち入り禁止)と見学地に分かれている。全体でみれば見学コースは1周するのには1時間半ほど必要だが、そもそもが広大で多種多様の植物があるのでじっくり見れば数時間はかかる。園内には屋外休憩所も点在するため、そこでピクニック気分で弁当を使うのも良いかもしれない(「食べる」よりも「使う」って表現を一度やってみたかった)。

道が枝分かれしているところもそう多くないので、好きな感じで歩けば見所はほぼ制覇できる。道なりにある路傍植物園、武家屋敷の名残である土塁(Earthwork)、物語の松、ひょうたん池と水性植物園、山道レベルの森の小道、野外で植物が咲き乱れる武蔵野植物園、折れてしまったおろちの松、水鳥の沼、館跡、といった場所をぐるりと回れば良い。

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ただし、いわゆる白金台という台地のため勾配がめちゃくちゃある。全体を回るとなると体力も必要になってくる。特にひょうたん池と水鳥の沼は低地にあるため、この二つどちらかを回ろうとすると、必ず長い坂道あるいは階段を下るし、戻るときは長い坂道あるいは階段を上るはめになる。というより園内の中心部に位置するため、どちらにしても坂道を行く覚悟は必要。

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夏場は虫に注意。雨を防げる場所は入り口の教育管理棟だけなので天候も。園内のトイレは洋式。教育管理棟のみウォシュレット式。庭園美術館とセットで行くのが賢いかもしれない。そのあと別の所へ行くのは賢いやり方とは言えない。目黒川を見てみようだなんて考えるのはもってのほかである。

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