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江戸川区郷土資料室(東京都江戸川区・新小岩駅)

江戸川区の郷土博物館機能は単体での博物館ではなく、グリーンパレスというコミュニティセンターの中にある一室になる。これまでに訪問した23区の郷土博物館の中では割とコンパクトな印象がある。新小岩駅が最寄りではあるものの、徒歩で20分ほどかかる距離にあるので気合を入れるかバスなどの交通機関を合わせて利用すると良いかもしれない。

開設からは50年以上の歴史を持つ江戸川区郷土資料室は、このグリーンパレス改修工事に際してリニューアルされてから15年ほどになる。特に受付はなく自由に入場できるのが特徴的だろうか。まずは昭和のかつての暮らしを模した再現展示がある。展示物は触れないようにとの注意書きが各所にあり、スタッフが無人であることの配慮が窺える。

注意書きの山である

江戸川区の歴史は比較的あまり長くはなく、ほとんどが海で陸地化したのは弥生時代の中頃。集落跡などは見つかっておらず、かろうじて書物に小岩周辺と推定される場所が記載されているくらいだという。とはいえ郷土博物館おなじみの土器や板碑はそれぞれ展示されている(石棒はなかった)。そもそも江戸川区という名称自体がまだ100年も経っていない新しいエリアではある。中世では葛西周辺で荘園があった記録が残されている。江戸時代には米作りが盛んで、沿岸部で漁業が行われるなど、農業や漁業の生産地としての趣が強かった様子。幕府直轄領として鷹場も設けられていることから広大な土地だったことが推測される。名産品としては海苔やレンコンの栽培が特に挙げられている。

海苔といえば高下駄

幕末になると朝廷と幕府との戊辰戦争が発生すると、江戸城無血開城のあとに小岩と千葉県市川で激しい戦争が行われている。江戸時代の掘削後に誕生した江戸川を中心として多くの川があったこのエリアは、江戸時代には幕府の方針で橋がなく渡し舟が各所に点在していたけれど、明治政府が進出するとその必要性もなくなり橋が架けられるようになり、渡し舟は廃止されたという。荒川・中川・江戸川の改修を経てから後は鉄道の普及によって一気に発展、工場や住宅が立ち並ぶ場所となった。葛西臨海地域の埋め立てもこの頃に着工している。

水門についても紹介 江戸川だけに

もともとこの郷土資料室は地域に密着して学校の社会科見学などで地域の歴史を学ぶことを目的として作られたことから、どの展示にも丁寧なキャプションが付いているのが特徴的。知識ゼロでも学ぶことができるようにハードルが低く設定されているのが印象深い。書物よりも現物を展示していることから割と初心者でも楽しめるかもしれない。トイレはウォシュレット式。

見渡す限り赤いパネルが紹介文


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