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菊池寛実記念智美術館(東京都港区・虎ノ門ヒルズ駅 中里隆展)

大倉集古館の目と鼻の先にある。現代陶芸のコレクターであった菊池智によって、炭鉱で財をなした父の名を冠して建てられた美術館。敷地内には西洋館もあり、日によっては公開されているそう。今回は残念ながら公開されていない。

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正面のドアーを入ると目の前に飛び込んでくるのは2021年に惜しくも亡くなった篠田桃紅による書画。すぐ横にはカフェーがある。
建物自体は上に高くそびえ立っているが、美術館は地下1階になる。螺旋階段を降りて(ここにも篠田桃紅の作品)地下へ降りるとそこが展示室となっている。

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今回は陶芸家である中里隆の作品展。本人を含め三兄弟ともに唐津焼で名をなしていて、現在は唐津を拠点にしつつも国内、どころか世界中の窯へと出向いてその土地の素材を用いながら作陶を行っているというアーティストでもある。陶芸一家の元に生まれ、デザイン会社勤務などを経たのちに父や兄たちと同じ陶芸家としての道を選んだ中里。へなっとした形の陶器で遊び心をのぞかせることもあれば、絵付けや釉薬に独自性を見出そうとする作品もあって多彩である。

https://www.musee-tomo.or.jp/exhibition/past_exhibition.html


最初に気に入ったのは唐津南蛮鴨徳利という徳利。ゆるい鴨のかたちをしている。これを使ってクイッといきたいものです。思った通り本人も酒飲みな模様。
陶器というのはろくろを回して形を整えて行く縦型のものである、という認識でいたのだけれど、それだけではないということを今回ようやく知ったきっかけでもある。要はろくろで整形したもの同士を組み合わせて、新たな形を作る、というやりかたがあることを知る。ドラ鉢状に練り上げたものを二つ、口同士をつなぎ合わせてまたろくろに回し、上から穴を開ける。そこに別で作った頸をつなぎ合わせることで変わった形の瓶が出来あがるのである。伝統的な唐津焼から見れば異端なのかもしれないけれど、この発想は見事なもの。

後半の展示室では工芸からアート作品まで広がって行く表現を表している。有元利夫や鈴木良一といったアーティストたちとのコラボレーション作品などが華を添える。
現在でも唐津で自身の窯である隆太窯を拠点として息子・孫と一緒に作陶を行っているという。父や長兄は人間国宝となった人物である。自身もこのまま続けていればあるいは人間国宝となる日も遠い話ではないだろう。

トイレは地下とロビー階にあり。ウォシュレット式。ただし小便器は大人向け。ミュージアムショップは小さく、受付の横に添えられている程度だったが、中里隆の陶器も販売されている。

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