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大妻女子大学博物館(東京都千代田区・市ヶ谷駅)

市ヶ谷から九段下方面へ向かい、東郷元帥記念公園の方へと坂道を下りる。坂道を降り切った番町学園通り沿いにあるのが大妻女子大学博物館である。大妻通りのある校舎とは離れた図書館の地下にあるので注意が必要。
大妻女子大学は大妻コタカが裁縫や手芸の塾として作った塾を母体とした女子教育の大学。塾は今から100年以上前に創立されており、大学としては70年以上の歴史を持っている。中学校と高校も併設されている。

入口の右手にはかつて大妻コタカが晩年に暮らしていた居室の一部が復元されている。東京大空襲で焼き出されたコタカは校長室に畳を敷いて生活を続けていたが、戦時中に戦意昂揚の講演を行なっていたことから戦後に追放処分を受け住む場所を失うことに。そんな折に著書を出版した書店の主人が、ベストセラー本になった感謝の意を込めて建ててくれたものだという。

教育のため印税は度外視で本を書いたことがこの家につながった

学校設立後に夫を亡くし、戦後も学校を追放された波瀾万丈の人生(後に復帰)。子宝に恵まれなかったコタカは愛情を学校教育へと向けて心血を注いだ。有名な校訓として「恥を知れ」というのがある。一見すると攻撃的な言葉に見えるが、これは他者に言うのではなくて自分自身を戒める言葉である。

夫の良馬氏は割と早く亡くなっている

1フロアの展示室では大妻学院の教育課程で培われている日本刺繍、刺繍レース、レース編み、ビーズ織り、マクラメ織、つまみ細工、押絵といった技術の中で、大妻で実際に作られた手芸品や裁縫品を紹介している。ステッチ(刺繍のさし方)をまとめた見本などがある。明治時代に刺繍は女性の自立を助ける新しい職業として期待され、教育に盛んに取り入れられたという。
手芸には疎いため耳馴染みのない単語が結構あるのだけれど、特に聞きなれない技術としてはマクラメ編みというのがあった。リリアン糸と呼ばれるレーヨン糸を結んでレース模様を作る技法だという。大正時代には各地で講習会が開かれるほどだったという。

マクラメ編み 編み方がさっぱりわからないでヤンス

裁縫や手芸に関しては完全に素人なのでさっぱりイメージのつかない単語が多く、ひたすらにその技術に驚かされている状態なのだけれど、そんな展示品の中で最も目を惹かれたのが瓶細工。ガラス瓶の中に瓶の口よりも大きい人形を入れるという工芸品で、いわゆるボトルシップの裁縫バージョンといったところ。実際に大妻コタカが瓶細工作品を作り皇室に献上した記録もあるという。かつては大妻学院でも教えられていたが現在は途絶えてしまっているというのが惜しい。

瓶細工 いやこの技術すごすぎる 作り方が全く想像できない

一通り30分ほどあれば見られるほどの展示スペースではあるけれど、手芸・裁縫に触れてこなかった人はもちろんのこと、好きな人なら尚更、その技術をじっくりと味わってみるのも良いのでは。トイレは洋式。

女子大の博物館は割と緊張する


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