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下町風俗資料館〜東照宮〜旧東京音楽学校奏楽堂(東京都台東区・上野駅)

朝9時半といえど上野の朝は早い。
JRの上野駅パンダ口を降りれば、オリンピックという厳戒態勢であちらこちらに警察官が点在し、またあちらこちらに点在して縄張りを持つ段ボーラーたちが眠りについている。
振り返れば巨大なパンダ。そう、上野といえば動物園。なんでこんなに、というサイズ感の巨パンダが鎮座している。

しかし今回の目的はパンダではなく上野に点在するミュージアムである。午後から国立科学博物館を見学する予定があったので、それまでの間に攻略するのである。
パンダを尻目にパンダ橋を渡りパンダコパンダを口ずさみながらパンダには会わずに上野公園へ。

すぐそこには上野の森美術館がある。ちょうどキングダム展を開催中しており、開館前のスタッフと入場待ちの人たちがちらほらいる。
ああ、流行ってますものね。面白いからね、でも最初はこのマンガ絶対パロディだったよね、途中から本格的な歴史物にシフトしたけど。
とりあえず今回は御免なさいねと、その横を華麗にスルーし通り抜けると西郷隆盛像が見えてくる。
西郷隆盛像。想像したよりも巨大である。犬も巨犬。
西郷隆盛は写真が残っていないためこの像も親族の顔をモチーフにした、というのは有名な話だけれど、すぐ隣にある飲食店ビルの名前がUENO3153というのはさすがに知らなかった。
一見スタイリッシュな、その実ダジャレという素敵なネーミングである。

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・下町風俗資料館

下町風俗資料館は不忍池のそばにある。
上野公園の階段を降り不忍池の方面へ向かう途中には王貞治、長嶋茂雄、古賀政男、長谷川町子ら、どういう選定基準なのかはよく知らないけれど(賞?)、多くの著名人の手形がずらっと並んでいる。
渥美清だけプレートが削り取られている。熱心なファンの仕業なのだろうか。

なお、通り道には「オークラ劇場」という、とてつもなく異界へ誘ってくれそうな映画館がある。
上映作品は3作品あるようだったが、いずれもタイトルさえ筆舌にできないコンプライアンス案件である。

後ろ髪を引かれる想いでそこを抜けると不忍池。
朝から和気藹々と人生の大先輩たちが8人くらい、各々がアルミ缶状の何かを持ちながら頬をほんのり染めて歓談している。これが自由というものである。
すぐ隣にあるのが下町風俗資料館。上記の案件から間違えられやすいが、いわゆる習慣・風俗の歴史を紐解いている至って真面目な資料館である。

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1階は昭和初期の下町家屋を原寸大で紹介している。そんなに広くはないものの楽しめる。
商家、大工、長屋などそれぞれの内装が垣間見える。駄菓子屋の内装もある。メンコがどうみてもなにかの模倣にしか見えない。多目的トイレ。

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2階に上がれば、不忍池全景や明治・大正・昭和の上野で流行ったものを紹介している。
こちらでも銭湯や昭和初期の家屋を原寸大で紹介している。見学者はとても少ないが、当時の新聞なども掲示されていて雰囲気が味わえる。
かき氷屋のお品書きもある。氷レモン、氷イチゴやら並ぶ中で「氷水」というメニューがある。これってなんだろう。かき氷なのかな? それともリアルに氷水? 

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学芸員の方に尋ねたが分からない様子。でも昔は美味しい場所の水を汲んできて、それを販売する商売があったそうで、その一環なのかも。
ちょうど1964年の東京オリンピック特集が組まれているので時期的にはとてもタイムリーだったのかも。トイレは洋式。

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・東照宮

かつて上野公園には大仏があり震災でくずれた頭部だけを今でも公園に安置している、という情報を下町風俗資料館で得て、不忍池をまた上野公園へと入り向かう。
しばらく歩いて上野精養軒のそばに小高い丘があり、薬師如来が開陳されている隣に大仏の頭部。
大仏は受験生に人気のスポットだそうである。あ、そういえば試験を控えている。天啓かもしれない。
小高い丘から見下ろすと東照宮が見える。日光でも駿府でも鳳来寺山でもない。上野東照宮である。
日本三大灯篭の一つお化け灯篭を横目に参道へとさしかかる。
今回は特に参拝する予定はなかったものの、せっかく見つけたんだし入ったことないから入ってみるべと、その場のノリでなんとなくふらりと立ち寄ってみる。

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参道は朝だとやはり人が少なくて心地が良い。ちろちろ流れる手水で手を清め、いざ正面の門と相対するとめっちゃ金箔である。
寄進によっては門の中に入れるそうだが今回は境内には入れないそうなので諦める。五重塔(上野動物園内にある)も柵越しに見られる。

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・旧東京音楽学校奏楽堂

東京芸術大学音楽学部の前身である東京音楽学校。耐震の改修工事を経てここ最近になって見学できるようになった。
外には滝廉太郎の銅像がある。ご存知、音楽の教科書で落書きされた人トップ3に入る廉太郎。銅像は朝倉文夫によるもので、下町風俗資料館にもそういえば朝倉文夫のつくった丸だしの男性像があった。廉太郎の方はちゃんと着衣している。あたりまえだ。

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奏楽堂の成り立ちや当時の遺構、在籍した人たちの資料などが展示される資料室は1階にある。楽譜がたくさん。
当時のノートなども晒されている。きっと公開されていないページにはたくさんの落書きがあったに違いない。
滝廉太郎もきっと彼が学生だった頃にはノートや教科書に落書きをしていたはず。まさか死後に自分が落書きされる側になるとは思いもよらなかっただろうな。

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2階に上がるとメインともいえる演奏場の見学ができる。
日本最古級のパイプオルガンが展示される演奏場は演奏がない時に見学解放されており、今回はちょうどなにもない日だったのでじっくりと見学する。

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マスクを外して会場の匂いを吸い込む。なんて素敵な空間。いい木の匂い。たまらぬ。
見学客はとてもまばら。ほとんどいないと言っても過言ではない。あまり知っている人がいないのかもしれない。
しばらくその空間を独占する。見る資料は決して多くはないのだけれど、この演奏場だけでも充分な場所である。
トイレはウォシュレット式なのだけれど不思議なのは、男用・男女用、という分け方。東京音楽学校って男性がほとんどだったのかな。女生徒もいたようだけれど。

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