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足立区立郷土博物館(東京都足立区・北綾瀬駅)

生活圏からかけ離れている未踏の地である足立区。千住周辺ならともかく、さらに奥地となると電車ですら行ったことない場所になる。
とはいえそこに郷土博物館があるなら行かなくてはならない。そこにミュージアムがあるなら。23区の郷土博物館もいよいよ大詰め、北綾瀬駅からバスに乗り込み意を決して向かったのである。

足立区立郷土博物館は2階建てになっており、1階の吹き抜けではパネル展示として足立区の千住を中心とした紹介をしている。怪談の「おいてけ掘」も千住地域の堀だったという。ちなみに普段は子どもホールとして触って学習できるスペースになっているらしいのだけれど、時勢柄なかなか開放できない模様。

 ロビーは吹き抜けで普段は子どもホールとして使用されている

隣接する展示室では足立区の歴史を紹介している。もともと湿地帯だった足立区の周辺は江戸時代になってから代官の伊奈忠治らによって開発された土地で、地名にも「〜新田」の名がついているところが多い。特に農業に特化した地域だった足立区、展示室の中央では肥料を溜めていた下肥が再現されている。

展示室にいきなり肥溜めはインパクトが強い

千住の一帯には野菜の市場である「やっちゃ場」が栄え、空襲によって全焼するまで江戸の青物市場を支えたという。また花の栽培も盛んで、鮮度が勝負の花卉類を江戸近郊からすぐに出荷できるという利点があった。チューリップを育てる温室は足立区が発祥だという。
文化人としては千住の周辺で琳派の浮世絵師である酒井抱一や鈴木其一などを輩出している。

やっちゃ場の再現もされている

2階では工業化した街の歴史を紹介する中で、かつて千住火力発電所にあった名物「お化け煙突」を解説している。見る場所によって1本から4本まで変わるという足立区のシンボル的な存在で、マンガや映画作品などでも取り上げられた。東京の東側では工業が盛んで、足立区では地漉紙や窯業といった職人の仕事も発展している。

足立区の名物だったおばけ煙突

工芸品では玩具・雑貨の製造や、かわったところでは麻雀牌なども工房があるという。昭和30年代の都営住宅の実物大模型もある。なぜか電気がついておらず真っ暗で何か出てきそうな雰囲気があるのも興味深い。

何か出てきそうである

ちなみに博物館の外は造園家の小形研三が手がけた回遊式の東渕江庭園がある。どこか名家の由来がある土地というより区で確保された散策路といった趣き。トイレは館内・庭園内ともに洋式。

庭園の散策もまた一興

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