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アートファクトリー城南島(東京都大田区・城南島)

東京都大田区の海沿いには島のつく地名がたくさんがある。
平和島・城南島・昭和島など、もともと埋立地としてつくられた場所である。埋立地特有の工場や倉庫が多く集まっており、住居としている人はほぼいない模様。社宅とか寮があれば別だけれど、そもそも住居として適さない場所である。
ファミリーマートなど点在するコンビニエンスストアーも「PORT STORE」という独自色の強い名前(店自体はそれらのチェーン店系列)。
そんなエリアの一角にアートファクトリー城南島という美術館がある。

交通の便があまりよくないためJRの大森駅から1時間に1本というダイヤのバスで向かうことになる。
付近には食事をするところもないので大森駅周辺でまずは腹ごしらえ。
店内にaikoがひたすら流れるハンバーガーショップで巨大なグルメバーガーを食べつつ、バスの時間に合わせて向かう。

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工場地帯に向かうバスなので人が少ないかと思いきや 意外にも乗り込む人が多く、もしかしてみんなアートファクトリーへ向かうのだろうか? と思いながらバスに揺られること数十分。
目的の最寄りバス停に到着すると、降りたのは2人。他は誰も降りない。
この先にもきっと何かがあるのだろう、と納得しながらこっちはこっちで目的の場所を探す。

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バス停から道沿いに進むとすぐ左手に見える煉瓦造りが特徴的な建物。
外には現代美術家の三島喜美代のインスタレーションが展示されている。
三島喜美代の作品はアートファクトリー城南島の展示品の中心ともいえるボリュームで、印刷物を貼り付けるコラージュ作品や、読み終えた新聞雑誌などの無用となった「ゴミ」を陶器として施したインスタレーションなどで世界的な評価を得ている。

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1階の美術倉庫と大展示場は彼女の巨大な作品で埋め尽くされている。
中でも圧巻なのは新聞紙の束を積み上げた巨大な陶器の迷路「Newspaper08」、
過去100年間の新聞記事を煉瓦に転写した「Work2000-Memory of 20th Century」。
天井クレーンを設置している倉庫だからこそ展示できるのかもしれない。

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螺旋階段を上ってキャットウォーク沿いにはピカソの作品が展示されている。
ピカソと写真家のヴィラール、詩人のプレヴェールによるコラボレーション作品で、ヴィラールの写真にピカソがコラージュを施し、それをもとにプレヴェールが詩を載せる、という行程でできており、はっきりいってプレヴェールの詩が難解すぎて理解しがたい。
戯曲のようでもあり物語のようでもあるが、断片が多すぎてまとまっておらず、難解な哲学を読むような感じに陥る。

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他にも米田智子によるマーラーの交響曲の楽譜を眼鏡レンズ越しに覗いた写真など、他のアーティストの作品も展示されている。トイレはウォシュレット式の個室。

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展示室を出てエレベータを上った3階に上がると、目をぎらつかせたPepper君が「浮世絵の説明をするよ」とお出迎え。
狙いをつけた対象者の目を見て瞳孔を開いた状態で浮世絵の説明をしてくれる。
対象者が移動すると首ごとそっちの方向へ傾けてくる。
斜め後ろまで首だけが稼働するのでグロテスク感が満載である。
ちなみに見学者は他に0人。目の前に誰もいなくても語り続けるPepper君。
もしかしてずっとこの空間でひたすら「浮世絵の説明をするよ」と語り続けていたのだろうか。
場所が陸の孤島である倉庫なのも相まってディストピアそのものである。

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葛飾北斎、歌川広重、喜多川歌麿といった浮世絵師の作品を拡大印刷した展示がされている。
技術を駆使して印刷されており、摺師の仕事である表面の凹凸などもしっかりと見える。
あくまでも複製なので明るい照明の下で展示されているのもありがたい。
科学の進歩による恩恵が感じられるのはこんな瞬間かもしれない。

アートファクトリーという名前の通り既製品の展示だけではなく、その中でアーティストたちが現役で作品を作っているアトリエが集合しており、従来は4階でそれを見学することもできる。今回は残念ながらそちらの方は見学できず。
駐車場にめちゃくちゃかっこいいシトロエンが停まっていたので、もしかしたら持ち主もこのアトリエのどこかにいるのか、と期待したのだけれど。
これも新型コロナウイルス感染予防の一つ。残念。

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屋上にも出ることができる。海の向こうにはお台場も見える。
逆方向には羽田空港も。離陸直後の巨大な飛行機が見られ、それこそ数分に1機のペースで飛び交っているので飛行機好きには隠れたスポットかもしれない。ただし海風にさらされるので冬場は寒いこと必至。

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少し足を延ばすと城南島海浜公園がある。オートキャンプ場もあるしっかりとした施設。おそらく、アートファクトリー城南島で降りなかった人たちはここを目指していた模様。
ちょうど夕暮れ時に差し掛かり、空のグラデーションが見事。砂浜で波を見たのも久しぶり。
ちなみに帰りもバスが1時間に1本のペースなので注意が必要。

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