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東京染ものがたり博物館(東京都新宿区・早稲田駅)

他の区に漏れず、新宿区にもミニ博物館がいくつも点在している。いろいろな場所に点在しているため、なかなか纏まって訪れることは難しいものの、それぞれ専門的な伝統技術を伝えるようなユニークな博物館なので、可能な限り訪れてみたいと思っていたところ、そのうちの一つであるここに来られるタイミングだったので勢い勇んで東京染ものがたり博物館を訪問。

染め物には綺麗な水が必要不可欠で、神田や浅草には多くの染物業者が居を構えていたという。富田吉兵衛はじまった富田染工芸もその一つで、明治以降になって川の汚れが目立つようになったことから良質の水を求めて上流のこの地へと移転してから百年ほど。現在でも新宿の地場産業として江戸時代以来の伝統を守り続けている。

工房になっていて今でも使用されている

展示室は工房も兼ねていて、染め物に使用する大きな板が目を引く。染め物には江戸以来の江戸更紗と東京染小紋の二種類があって、それぞれで工程が異なるのも特徴となっている。例えば図案を考えた後の「型紙の彫刻」は両方に共通するが、江戸更紗は「染料の調整」「型摺り」が続くのに対して、東京染小紋は「色糊調整」「型付け」「地色染め(しごき)」という異なる工程になる。それらを経てから「蒸し」「水洗い」「乾燥」という長い工程を経てようやく完成する。

天井にかかった板と刷毛が強烈なインパクト

繊細かつかなりの力作業が必要な染め物。伝統工芸ということもあって海外からの見学者も。展示室内には富田染工芸プロデュースのブランド「さらきち」のアイテム販売もされている。ひとつひとつを手染めで作っているその仕事に感嘆してしまう。トイレはなし。

染料がペットボトルというのも現役感が出ている

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