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旧江戸川乱歩邸(東京都豊島区・池袋駅)

立教大学の敷地内にある旧江戸川乱歩邸。通常は平日しか開館していないのでなかなか訪れる機会は持てないものの、年に数回だけ週末に開館しており、これを見逃す手はないと思って訪問。
もともと江戸川乱歩は早稲田大学の出身なので立教大学は直接の関わりがあるわけではなかったが、没年までの後半生をこの立教大学の敷地に隣接する場所で過ごしたという縁もあって、現在は立教大学が管理する施設となっている。前半生で転居を繰り返した乱歩が最終的に長きにわたって住むことになった静かな住宅街である。

家屋で入館可能となっているのは玄関のみではあるものの、応接間などはガラス張りの窓から内部を見ることができる。ちなみにこの応接間は『メグレ警部』シリーズで知られる海外の推理作家ジョルジュ・シムノンの来日を予定して改築されたもの。結果的にシムノンは来日しなかったので叶わなかったものの、推理小説が好きな乱歩らしくエドガー・アラン・ポーやシャーロック・ホームズの像がマントルピースに飾られている。

青の基調が心地良い応接間

庭には築山などの跡があり、戦時中には防空壕もあったという(正確な場所は不明とのこと)。昼間から働きに出ず家にいる中年男性、ということから町内会長を務めた乱歩は、火災にあった時のため庭に消火用の井戸を造っており、当時のまま残っている井戸の形は乱歩自身がデザインした「菊の花」を模していると言われている。

消火用の井戸 網の中が当時のもの

乱歩邸で注目したいのは土蔵。2階建ての土蔵の中には乱歩が集めてきた大量の蔵書が現在も納められており、ガラス越しにそれを見ることができる。びっしりと本棚を埋め尽くす本の山。まさに幻影城である。幻影城に篭って乱歩の頭脳はぐるぐると複雑怪奇な世界を生み出したわけである。谷崎潤一郎やドストエフスキーなどほか、『シャーロック・ホームズ』シリーズやポーの作品などの洋書が並んでいるほか、犯罪関係の本や辞典などの和書も揃えられている。2階には趣味で集めた古典や保存用の自著が保存されていた。特に和本などはそれぞれのサイズに合わせた函を自ら作るという凝りようだったという。素晴らしき変態。褒めてます。トイレは無し。

幻影城はガラス張りで外から眺める

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