WHAT MUSEUM/模型保管庫(東京都品川区・天王洲アイル駅 建築模型展/Mariage)
天王洲アイルは現在において一大アート発信地になりつつある。周辺に多数の倉庫を持つ寺田倉庫はその業務から美術品を保管収蔵することも多いのだけれど、そこから派生してギャラリー自体を格納する倉庫を立てたり、倉庫に保管している作品を公開したりして、天王洲を天王洲を芸術文化の発信地にしようとする活動を行なっている。
その中心的な存在になるのがこのWHAT MUSEUMであり、また隣接する模型保管庫にあたる。模型保管庫の方は単独で見るのではなく、WHAT MUSEUMの展示ありきで追加オプションとして見学する、という形をとっているため、せっかくミュージアムへ行くなら追加で保管庫も訪れるというのが賢いやり方かもしれない。
模型保管庫の方は時間指定となっている。受付を済ませればWHAT MUSEUMは途中入退室可能なので、指定時間までに慌てて全てを見る必要はないのがありがたい。模型保管庫は隣のビル、エレベータを上がった先にある。
常に一定の温度に保たれており、主な展示品としては、過去の企画展の建築模型アーカイブ、建築家や企業から預かっている建築模型(完成品と未完成品)、建築家の本、それに天王洲アイルのエリアをもっと情報発信地にするべくキャナルサイド構想と銘打った模型といったものがある。ほぼ全て現役で活動している人なので、専門家ではない自分は見慣れない名前ばかりである。
1時間の制限時間内は順番は自由に見学できるが、一つ一つをじっくりと見ているとあっという間に時間が経ってしまう。訪れた中では隈研吾の作品が多く残されている印象。なるほど、世界から熱烈な支持を受けている理由もなんとなくわかる。
興味深いのは過去の企画展の建築模型アーカイブで、過去にWHAT MUSEUMで行われた企画展の「間取り」を模型にして残している。これってつまり、企画展が始まるごとに模型でイメージしてから会場作りをしているということなのだろうか。楽しそう。
天王洲アイルキャナルサイド構想も面白い。左岸と右岸をそれぞれ実現しているものとこれからやりたいことに分けて展示している。水上ホテルとかは既に実現している。泊まってみたい。
なお撮影はできないので記憶に焼き付ける。ほとんどが預かり品なので入れ替えも激しいかもしれない。トイレはないので事前に済ませておく必要がある。
WHAT MUSEUMの1階では企画展としてリンクするかのように建築模型展が開催されている。古墳時代から現代に至るまでの建築模型を展示していて興味深い。なんといっても磯崎新による「東京都新都庁舎計画」の模型が目を引く。もちろん現在の都庁ではなく実現しなかったもの。球体がインパクトを放っている。フジテレビの球体みたいな形をしている(フジテレビの建築は磯崎の師匠である丹下健三で、それを見たオランダの建築家コールハースから「あそこに君の都庁が建っているね」みたいなジョークを言われたらしい。ちなみに現在の都庁も丹下健三によるもの)。
他にも三分一博の「直島町ホール」風洞実験模型などが面白い。実際に風が吹いたらどのような気流の動きをするのか、特に台風が多い日本では貴重な実験と言える。
見学者が参加できる模型もある。好きなところに好きな模型を置くといったようなもの。
2階ではまた別の企画展「Mariage」が開催されている。コレクターの桶田俊二・聖子夫妻が約20年の歳月で収集してきた骨董や現代アートを紹介している。李朝の陶磁器にはじまって、北大路魯山人や河井寛次郎といった陶芸家の作品から、現代アートに至るまで幅広いジャンルの作品を展示しているのが面白い。一見すると一貫性のないコレクション、どういう意図で収集したのかが興味深いところ。現代アートではKAWSや名和晃平の作品もある。ダニエル・アーシャムやクララ・クリスタローヴァの作品が好み。トイレはウォシュレット式。