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九段ハウス(東京都千代田区・九段下駅)

靖国神社の大鳥居から程ない場所にひっそりと佇む巨大な洋館がある。大木戸の門をくぐると九段ハウスと呼ばれているこの建物は実業家の山口萬吉の邸宅として建てられたもので、耐震構造の父である内藤多仲や当時有数の建築家である木子七郎今井兼次という3人の名建築家の共同設計として1927年に建てられたスパニッシュ洋式の邸宅である。なおこのトリオでは他に内藤多仲邸(現在の内藤多仲記念館)も手がけている。

現在は九段ハウスの会員を中心にして利用されており一般でふらっと入れる機会は少ないのだけれど、今回イベントで展示会が開催されており、一週間という短い期間ながらこのタイミングを逃さず訪問することに。開催されているイベントは美術作家の若佐慎一による「魚行水濁鳥飛毛落」という個展で、魚行けば水濁り鳥飛べば毛落つ、という人の行動には必ず痕跡が残ることを意味した禅語から取られている。地上2階と地下1階で開催されている今回の企画展は和洋折衷のレトロな洋館の中に現代アートのインスタレーションが配されるという面白い試み。

マントルピースの上にひょっこり

見学は予約制になっており、入館してだいたい1時間くらいで見学するという流れ。作品は販売もされているのだけれど、結構な人数が訪れており作品の一部は既に予約されている。建物自体をさくっと見て行くタイプの人もいれば作者の関係者らしき人もいたりと見学者の層はさまざま。目立たないところにひょこっと作品(うさぎなどの動物)が隠れていたりと作品リストと照らし合わせながら探してみるのも面白い。建物でいえば1階で特に目を引かれるのは階段で、噴水と飾り窓に囲まれたちょっとした部屋のようになっている。

椅子の後ろにある黒い塊は噴水

階段を上がった2階には和室もある。2階には他にも応接室のようなちいさな部屋が3つあり、それぞれの部屋で作品がひょっこり展示されているほか映像で作品をつくっている様子を交えながら今回の展示に関しての作者のインタビューが放映されている。またその3つの応接室と並行するかたちで半室のようなテラスがあり、そちらにも巨大な作品が紹介されている。穴をボコボコに空けられた生き物が中央に立って出迎える。

夜いたらなかなかの恐怖

地下階もまた見どころがいっぱいで、面白いのはボイラー室まで公開されておりそちらにも作品が展示されている。特に地下階は作品の展示数が最も多く、メインホールや隣接する小ホール、それに蔵などを有効的に利用して展示されている。作品自体と建物の妙を楽しめる展示といえる。トイレは1階2階ともにウォシュレット式。特に1階の階段下にあるトイレは内装もおしゃれで必見。なお外の庭園にも出られるのでぐるりと建物を一周してみるのも良いかもしれない。

庭からの眺めもまた格別


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