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旧岩崎邸庭園〜国立近現代建築資料館(東京都台東区・湯島駅)

・旧岩崎邸庭園

かつて東京の街を牛耳っていたことで有名な岩崎家(違う)。その邸宅が上野の不忍池そばに残っている。
「車内ゆれますのでお尻におつかまりください」という革新的なキャッチフレーズの映画ポスターが掲示されるオークラ劇場を通り過ぎて不忍池へ。
あいからわず人生の先輩たちが朝からワンカップを装備したワンカッパーとなって談義する不忍池は蓮が咲き始めている。そのまま湯島天神の方へ道沿いに歩き、異様にラブホテルが乱立する地域を突っ切ればたどり着く。

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残念ながら邸内は撮影不可なので外観を撮影。洋館と和館に分かれており、最初に見学する洋館はゲストハウスとして使われていたそう。
とにかく目を惹かれるのは装飾の美しさ。天井が高いので寒くなるためか全ての部屋に暖炉が置かれているのだけれど、それらの装丁が丁寧で細やかで美しい。

和洋折衷でもあり、設計者はジョサイア・コンドル。日本の近代建築においてル・コルビュジェやブルーノ・タウトと並び無視できない人物です。世田谷にあった静嘉堂文庫の岩崎家廟もコンドルのデザイン。岩崎家とズブズブの関係である。
天井にも刺繍などが施されている。そして秀逸なのは壁紙で、金唐革紙で作られていて全ての部屋のデザインや色が異なる。金箔に彩られている壁紙もあって財力の凄さを見せつけられる。さすがの財閥である。
ちなみに小岩井農場も岩崎家が関係している。趣味で造った離れの撞球室(ビリヤード場)へ行くために地下通路まで造っているというその財力に驚愕である。地下にはボイラー室や従業員の控え、調理場などがあった模様。非公開なのが残念。

和館のほうは一転して天井がとても低い。基本的に家族の生活空間として使用されていたらしい。希望者は和室で抹茶を味わうことができる。庭への導線が禅のように美しく居住まいを正してしまう。
奥の間には橋本雅邦(横山大観や下村観山の師匠にあたる日本画家)によるうっすら富士山の絵がうっすらどどん、と構えられていてうっすら荘厳である。和館は当時の半分ほどの敷地になってしまっているようで本来はもっと広かった模様。
ちなみにしっかり物販コーナーもあり、洋館の壁紙を基調としたクリアーファイルや絵葉書などと共にしっかり小岩井農場由来のお土産もある。昔ここに来た時は壁紙を使ったしおりが売られていた気がする。

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和館を通り過ぎると庭に出ることができ、現在は庭の養生を行っているため全景を見ることはできないものの、そこから離れにある撞球室へ足を伸ばし片鱗を覗くことができる。当時ブルジョワジーの間で流行っていたビリヤード。おそらく来客に対しても「ビリヤードやりやしょう(ニヤリ)」と強引に誘ったにちがいない。

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敷地内にトイレは二箇所。洋館から和館への渡り廊下の途中にあるがこちらは男女の入り口が一緒で洋式のみ。もう一つは入り口の近く。仮設っぽい作りをしているものの、男女でしっかり分かれていてしかもウォッシュレットなのでそちらの方がオススメかもしれない。

・国立近現代建築資料館

旧岩崎邸庭園の敷地内から入ることができる。仮設っぽいトイレの隣からそのままストレートに入れるのでハシゴで見学するのが妥当かもしれない。平日は湯島地方合同庁舎からも入れるらしい。

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新館と別館という二つの棟からなる。本館どこ行った。新館は事務室と資料室で、実際に見学するのは別館になる。

https://tange2021.go.jp/

今回は丹下健三についての企画展が催されている。
前回のオリンピックで世界的に絶賛された国立代々木競技場をはじめ、目白の東京カテドラル聖マリア大聖堂、横浜美術館、広島の平和記念公園(解体される予定だった原爆ドームを内包した設計で、保存されるきっかけのひとつとなった)など多岐にわたる建築を手がけた丹下健三。
当時はCADやコンピュータがそこまで発達していなかったので、企画書や設計書が全て手書きという。とんでもない労力である。企画書の手書き文字がまるで機械のように精密で、ある種の妄執さえ感じさせる。

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このころに岡本太郎やイサム・ノグチとも交流を深め、彼らから寄贈された作品も展示されている。
自邸をはじめ、いくつかの建築での特徴として1階部分を入り口と階段のみ、2階からが生活空間とされている構造となっている。これなら洪水で1階が埋まっても安心ね。

って彼のことを調べていたら、同じ東大の建築学科だった立原道造と交流があったことを知る。はいリスペクト決定。二人とも辰野金吾賞(優れた建築に対して贈られる賞)を受賞している。今更になって鳥肌が実る。帰宅して立原道造全集をひもといてみたら本当に書簡のやりとりをしていた。最高。

今回の企画展のみなのかわからないけれど多数の建築模型が展示されていて、それを眺めているだけでも飽きない。

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円形の展示室の中央には国立代々木競技場を起点とした東京エリアの模型があってこれも圧巻。トイレはウォシュレット。新しい建物だし妥当なところでしょうか。見学者はまばらです。旧岩崎邸庭園から流れてくる人がおそらくほとんどだけれど、そもそも母数が少ないのでゆっくり観られます。

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