見出し画像

東久留米市郷土資料室(東京都東久留米市・小平駅)

東久留米市は東西に広がっている市である。鉄道は東にある東久留米駅のみで、中央と西側にはこれといった駅がなく、都内の中でも屈指の空白地帯となっている。基本的に住民は自家用車や公共交通車両が移動手段となっている。東久留米市郷土資料室があるのはその鉄道のない西側、鉄道の駅だと小平駅が最も近い場所になるだろうか。それでも歩いて30分ちかくかかるという、あまり鉄道向きではない場所に東久留米市郷土資料室がある。

東久留米市郷土資料室は東久留米市が運営しているわくわく健康プラザの2階にある一角。もともと学校だった場所をそのまま使用しており、2階の資料室へ続く廊下も学校の雰囲気をしっかりと残している。旧石器時代と縄文時代が中心だという東久留米市の遺跡の特徴を象徴するかのようにこちらの歴史展示室ではこれらの時代の土器を中心とした展示をおこなっている。石棒もある。

一見するとここに郷土資料室があるとは思えない

歴史展示室の他に中世以降の歴史を補完しているのが廊下にある展示コーナーで、こちらでは農具や民具を実物展示している。東久留米では特産品として柳久保小麦という麦がある。柳窪にある奥住又右衛門が発見した新種で、一時期は作付けが中止されたが子孫により復活したのだという。脱穀機や唐箕(穀物とゴミを分ける道具)、石臼など小麦を特産品としていた地域ならではの農具も紹介されている。

柳久保小麦 麦も育ててたんだね

民具・農具展示コーナーの向かい壁には写真パネル展示として近現代に至る東久留米市の様子を当時の街の風景を切り取った写真と比べながら知ることもできる。東久留米市にあった学校として有名なのが成蹊学校や共立学校(両校は後に合併して尋常高等小学校ができる)、それになんといっても自由学園が出てくるだろうか。自由学園というと池袋と目白の中間、フランク・ロイド・ライトと遠藤新による設計の明日館が挙げられるけれど、学校機能はこちらに移転して現在も運営されている。東久留米の校舎もやはり(遠藤新の設計によって)明日館と同じような景観をしている。ただし自由学園自体は今も学校施設のため日常から一般的に見学することはできない。

東久留米いまむかし

トイレはウォシュレット式。施設の本体わくわく健康プラザ自体ではワークショップなどを開催しているものの、こちらの郷土資料室へ赴く人はほとんどゼロに近い。安定の郷土博物館である。独占して見学するのも夢ではない。

廊下の展示も充実している


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?