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東京黎明アートルーム(東京都中野区・東中野駅)

東中野駅から歩いて10分しない距離にあるのが東京黎明アートルーム。住宅街の中にあるので少し迷いそうなところではあるけれど、ひっそりと佇むかなりしっかりとした美術館である。もともあとあったアートルームがリニューアルして再開してまだ7年という比較的あたらしい施設で、地上2階、地下1階の3フロアに渡る構造になっている。

創設者はMOA美術館や箱根美術館などの創設にも関わり、美術に関する想いが強かったことから、宗教や国境の垣根を超えた芸術を紹介したいという意図でこちらの美術館でもジャンルを超えた展示が目立つ。
入口で持国天・多聞天の立像が出迎えたあと最初の展示室では東洋の陶器を紹介している。遼三彩と宋三彩という陶器に施す絵柄の違いを紹介していたり、陶器の他にも白山松哉による掛幅蒔絵二重手箱の美しい工芸品の展示には目が釘付けになる。
隣の展示室では主に仏教文化を中心とした美術。胴体だけという変わった形の菩薩トルソや、カンボジア・パキスタンといった中東の石像なども紹介している。

持国天と多聞天どっちかが

今回おとずれた際の企画展では鈴木其一の日本画を中心とした展示を行っている。1階の最奥にある企画展示室では鈴木其一の手がけた巨大な『四季花鳥図屏風』が構えている。酒井抱一の一番弟子であった其一による繊細な植物絵。二隻の屏風絵にはそれぞれ右隻に春から夏を中心とした辛夷、立葵、燕子花、木槿といった植物やウソにキセキレイといった鳥、左隻に秋から冬を中心とした朝顔、鶏頭、菊、山茶花といった植物にミソサザイにウグイスといった鳥を丁寧に配している。植物は48種、鳥は4種で9羽、これを見事に描き分けているその観察眼と表現力がすごい、
階段を上った2階では創業者である岡田茂吉の作品をはじめ、しっかりとくつろげそうな休憩室の一角には和室の設えがあり(入れない)、○一飽消万劫飢という禅の掛け軸がかかっている。

休憩室の一角にある和室

地下階は師匠筋にあたる酒井抱一や、抱一の養子であり弟子でもある酒井鶯蒲市川其融といった鈴木其一に連なる江戸琳派の画家の作品を紹介している。また、圧巻なのは尾形光琳とも交流があった狩野派の流れを汲む山本宗川の『百花図屏風』で、葉脈に至るまでかなり緻密に描かれている植物図のようであり、艶かしささえ感じられる。
地下階にはこれからのアーティストを紹介するSELA展のほか、ショップやカフェも充実しており、住宅街の真ん中にある美術館としては珍しい充実っぷりでもある。芸能人のサインも飾られている。トイレはウォシュレット式。

SELA展の木床亜由実による作品

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