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森鴎外記念館(東京都文京区・千駄木駅)

森鴎外記念館では特別展として「鴎外遺産」として、直筆原稿や書簡、愛用品といった貴重なものを展示している。2022年は森鴎外の生誕160年、没後100年という節目の年にあたり、これまでもさまざまな展示を行っていた中でこちらの記念館の2022年ラストを飾るにふさわしい展示内容である。

地下へと潜るようにして入る記念館、鴎外の生涯を追うようなスタイルの常設展は大きな展示替えがあるわけではないものの、今回は特に注目したいのが複数人の画家による寄せ書き。森鴎外が日本芸術院(当時は帝国美術院)の初代院長だったこともあり、望月金鳳、野村文挙、山元春挙、竹内栖鳳、川合玉堂、山岡米華といった当代きっての日本画家の共作による絵を贈られている。もうこの時点で重鎮である。

特別展示のコーナーでは森鴎外へ送られていた書簡がお出迎え。夏目漱石やその妻である夏目鏡子、正岡子規、永井荷風、与謝野晶子、高浜虚子、坪内逍遥といった文学界の重鎮から、黒田清輝、藤島武二、高村光太郎といった芸術家までその交友関係は幅広く、いかに鴎外が当時の文壇の中心にいたかがわかる。その中であまり見かけたことのない名前の人物がいる。医者である賀古鶴所というこの人物は鴎外の親友で、鴎外の遺言を聞いた人物でもある。ちなみに常設展のパネル展示でも鴎外に送られてきた書簡がデジタルで見られるようになっていて、中でも吉井勇の年賀状がシンプルすぎて逆に面白い。

人でなしの太宰が鴎外を尊敬していた理由もわかるというもの

トンネルのような通路を抜けた第2展示室では特別展示の続きとして、今度は森鴎外の原稿を紹介。学生時代の講義ノートや『渋江抽斎』の原稿が紹介されている。興味深いのは鴎外は万年筆だけでなく鉛筆でも原稿を書いていること。作家の中には自分の書くペンにこだわる人も多いと聞いたことがあるけれど、そのあたり鴎外は特にこだわりがあったわけではないようである。

鴎外の湯と称して文京区に点在する銭湯をめぐるスタンプラリーが開催されていたりクイズがあったりと、文京区を挙げて鴎外の特集で盛り上げており、普段は決して訪れる人の多くはない(たまに貸切状態になる)こちらのミュージアムに子供連れが見受けられたりと、いつもとは少し違った雰囲気なのも新鮮である。トイレは洋式。


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