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隈研吾の思考の覗き見

 今年の4月くらいだったような気もするし、もっと前だったような気もするけど、朝のニュースで隈研吾氏のインタビューが流れていた。
 コロナ禍で、自分の作ってきた「ハコ」の存在意義についてゼロから向き合うことになった、と。

 東京国立近代美術館の今回の隈研吾展は、断然、有料ゾーンより無料ゾーンのほうが面白い。これまでの実績ももちろん素晴らしく、その実績、考え方の意義に自ら疑問を投げかけ問い直す中でキーとなる5つの要素を持つ自らの作品が並んでいるのだけれど、その要素を挙げるに至った、彼の思考の痕跡を示す無料ゾーンの『ネコちゃん建築の5656法則』が一番贅沢なゾーンだと思う。

 ハコが意味をなさなくなり、考えるためにハコを出て歩き始めた隈が気付いたのが公共空間と隙間。そこをうまく行き来しているネコに着目し、半ノラにGPSをつけていろいろ検証している。

え、こんな贅沢なことある?!隈研吾の思考をのぞき見できるなんて。

え、こんな贅沢なことある?!その一番重要な展示が「無料」なんて。

 コロナ対策でチケットも予約制、予約したって人が多すぎてウンザリする有料ゾーンはまあ1回でいいかなって感じなのに、この無料ゾーンは何回でも行きたい(わたしは)(実際すでに2回行った)

 ああ、他人ってこんな考え方するんだ、と新しい視点をもらえる瞬間が割と好きで、だからドラマも小説もその疑似体験をしてるみたいで好きなんだと思うけど、まさにこの企画がそれ。
 しかもみんな、いま生きてる人の、しかも面白いこと考える人の、しかもドベテランで数々の実績があるのに取り崩して思考を組みなおすことができる人の、そんな天才の思考が見れるんだよ?!という気分。
 同じ種類で、バブルとともに消費文化を牽引する大実績をあげながら物質文化からコト文化なんじゃないかと気づいて転換できる糸井重里という人もすごい人だと思うけど、隈研吾もやっぱりそういう意味で本当にすごいと思う。

ので、まあ無料で予約なしで入れるので、興味のある人はあと一週間の間にこの無料ゾーンに行ってみてほしいです。是非。

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