【文献レビュー】特別支援教育を専門としない教職課程の学生に対する自立活動の理解を促すための講義実践

【本日の文献】
丹野傑史(2021)特別支援教育を専門としない教職課程の学生に対する自立活動の理解を促すための講義実践. 尚美学園大学総合政策研究紀要, 37, 55-69.

TANNO, Takahito(2021)A Practice of Online Instruction on Promoting an Understanding of “ Jiritsu-Katsudo”for Students in Teacher Training Course Who do not Major in Special Needs Education,BULLETIN OF POLICY MANAGEMENT SHOBI UNIVERSITY No.37, 55-69.

【問題の所在と目的】
2019年の教職課程コアカリキュラムに「特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対する理解」が追加された。
特別支援学校よりも特別支援学級や通級による指導をうける自動・生徒数が急増していることから通常の学校に勤務することになるであろう一般の教職課程を学ぶ学生に対して特別支援教育について学ぶことが義務付けられたことになる。
とはいえ、特別支援教育で扱う内容は非常に幅広いため、割り当てられた限られた講義時間では不十分であることが予想される。
特に、自立活動については通常学校で学んできた障害のない学生にとっては馴染みのない授業内容でありイメージがしづらい。
そこで、特別支援教育を専攻していない学生に対する自立活動の理解について授業へのリアクションペーパー等を用いて分析した。
参加者は学生147名。
分析は質的研究法の1つであるKH-Coderを用いた。

【結果と考察】
3.1 受講生の特別支援教育にかかわる基礎知識
・ユニバーサルデザインや合理的配慮という言葉については知っている学生が多い。
・インクルーシブ教育という言葉については知らない学生が多い。
・日本における特別支援教育の位置づけについて理解できるように説明するのは工夫が必要。
・障害について「知っている」と回答していた学生も、講義資料を読んで思っていたイメージと違ったという回答もあり、「知っている」=正しい知識に基づく理解とは異なっている可能性が示唆。
・限られた講義時間の中でいかに多様な障害種のことを伝えていけばよいのか課題。

3.2 自立活動に関する学生の学び
・自立活動の概略を講義資料で示すことで字面上の自立活動の目標等の理解が促された。
・自立活動自体が学生が受けた経験がないゆえにイメージしづらい内容。
・実際の事例を紹介することでよりイメージがしやすくなる。

3.3 学生の学びや疑問を踏まえた講義の成果と課題
・そもそも、学生がもっている障害への理解が貧弱な中で自立活動について深く理解させるのは難しい。
・当事者との接触経験の有無が学習の深度に影響。
・自立活動の指導プロセスをどのように伝えていくか、課題が残る。

【読み終えて】
コロナ禍の様々な制限を受ける中で講義担当者が工夫を凝らして実施した授業実践について学生のリアクションペーパーから次へとつながる具体的な課題が示されていると思う。
確かに、学生さんによって当事者との接触経験、もともともっている知識レベルが異なる中で、特定の障害だけではなく様々な障害について取り扱うのはなかなか難しい。しかも、ステレオタイプ的理解ではなく、それぞれの障害の中での多様性を伝えようとすると本当に工夫が必要。
提示する事例の内容は非常に重要だと思う。全国的に質の高いオンライン講義を実施するためにある程度、活用できる事例教材、動画等が大学間、教員間で共有できるといいのかもしれない。

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