運転することへの執着

高齢化する日本。高齢者の車での事故も連日報道されている。
父親の運転する車も(乗った叔母や姉は)怖いと思う時がある、と言っていたし、よく一人で知らないうちに出かけてしまうので暗くなってくるとちゃんと帰ってこれるのか心配になるときも確かにあった。
テレビの特集でもよく取り上げられるが、うちは郊外にあり車がないとかなり不便な場所。
そのうえ父親は高齢者講習でも「すんなり通った」「一番だった」など鼻高々で自慢げに免許証を私に見せるのだった。

私は車いすユーザーで改造した自分の車を運転するから、父親の車に乗ることはなかったし、父親の車を置いている車庫に車いすで行きにくかったので車を見ることもなかった。
でも長谷川式認知症スケールで30点満点中10点という事実をみんなの前でつきつけられ医師に運転を止められ私にカギと免許証をとりあげられて突然翌日から運転ができなくなった。言えばすぐに返してもらえると思っていた父親は混乱、怒鳴り散らすこともあったががんとして私は渡さなかった。「私が乗せてあげるよ」と言って。
それでも返せ返せ。車を見せないように車庫の扉を閉めてしまい、カギと免許証は支援センターにあずかってもらった、といい。事故をして父親も誰かも傷つけるのは絶対に避けなければいけない。

父親はその地域包括支援センターに行き、返してくれるように言ったらしい。
そして免許証の再発行をしようと警察にも行こうとしたが、それもかなわず。道半ばで警察に保護された父親。迎えに行った私を笑顔で迎えた父親。

数日してそんな出来事があったことも忘れてしまったが・・・。いや、私以外の人が言うと忘れたふりをするのだが、私が言うとにやっとするのであった。
それから数日たってまた返せ、と言ってきたので、ダメなことはわかりつつ怒鳴ってしまった。「あかん!」

数時間しばらくして突然交番から電話。「さっきお父さんがきて免許証返納について聞いてたから手続きの書いた紙渡しました。靴下が左右違ったから心配になって」
ちょっと父親に伝わったのかな、と思った。
父親が「その気」でいるうちに手続きしないと!
帰ってきた父親に署名をしてもらい、私はすぐに返納の手続きに行ったのだった。

あぁ、事故をする前で本当によかった。
後日聞いた話、雨の日にうちに来た知人がバイクを父親の駐車場にいれたとき、結構車、ぶつけてたよ、と。
それでも何とか間に合った・・・のか。