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今年も行きます。南円堂さん。

毎年興福寺 不空羂索観音さまの日で毎年欠かさずお参りに行っています。
10月17日です。

最近はありがたいことにツアーを作ってお客さまと一緒に行ける事が多く、今年は平日だというのに、もうご予約を沢山いただいています。ありがたいことです。

数年前、飯田さんというお客様がよくきてくださっていました。

飯田さんは京都で介護タクシーをされていて、「奈良のことも勉強したいから」と頻繁にガイドをご利用くださいました。

ある日奈良を訪れるお客様のガイドをしてほしいと依頼され、まる2日専属ガイドをしたことがあります。

飯田さんの運転で、奈良の南部から北部まで、実に沢山回りました。

そのお客様はなかなか個性的な方で、言うことがころころ変わり、困ることもありました。とおりいっぺんのことを話すのででよければ行き先が変わっても良いのですけど、じっくりきちんと話をするなら事前の準備が必要で、それは運転だって同じで、予め道を調べておいたり、通行止めがないか確認したりする必要があります。

両日とも朝早くに落ち合ってお客様を迎えに行き、帰りはホテルまで送ってから一緒に帰ってくる。朝の景色、夜の景色を眺めながら、どんな風に対応するか? ということを話し合い作戦を練り、反省会を開く。いつもひとりで対応していた私にとって「一緒にあたる」というのは、とても頼もしく楽しいことでした。

無事にすべての行程を終えたときには、飯田さんは同志になっていました。

それ以降、一緒に仕事をする機会はなかったのですけど、頼もしく頼れる飯田さんには変わりませんでした。

飯田さんに「興福寺の南円堂は素晴らしいのですよ! ぜひ行きましょう」とお伝えすると「忠内さんが言うなら行かねば」と言ってくださってました。でも秋のこの時期は、飯田さんだって忙しいシーズンなのです。しかも御開帳は10月17日のみ。なかなかその機会は巡ってこなかったのですけど、お忙しい中で都合のつくツアーには来てくださり、ある時は学生時代のお友達も連れてきてくださいました。

ある日飯田さんから「実は病気で余命が数ヶ月しかない」と連絡がきました。飛び上がるほどびっくりして聞いてみたらがんだというのです。「元気なうちにお別れを言っておきます」と言われて、とても承服できず「いやいや、何言ってるんですか!」と言うことしかできませんでした。

連絡が来たのがまだ残暑が残る頃だったと記憶してますけど、その秋ころいよいよ具合が悪いと聞いていて、でも最近は医療も進んでいてがんも治るというし…と思っていました。そのうちメッセージの返信がこなくなって、どうしようと悩み、以前に連れてきてくれたお友達の方しか頼れる人がなく、思い切って連絡を取ってみました。優しく対応して下さり、自分たちもどうしようかと思っていたところだと話してくださいました。

そんな話が進んだ矢先、飯田さんは亡くなってしまいました。

あまりにも早く駆け抜けるように行ってしまって、私には後ろ姿さえ見えませんでした。

亡くなっても現実感がなく、ただぼんやりした寂しさだけがあり、お誘いしたい事ができても、もう声掛け出来ないんだということに気づいて「そうだった、亡くなったんだ」と思うばかりでした。

「私もね、前より少しは勉強して、奈良のことよりおもしろく語れるようになったと思うんですよ。この成長を見てほしいんですけど」


奈良の成り立ちに平城京が欠かせず、平城京の中で興福寺がどんな存在だったのか。興福寺の外観がどう見えて、どんな役目があるのか。

南円堂がどんな成り立ちで、どこが見どころで、不空羂索観音さまがどれだけ素晴らしいか。

今年もきてくださるお客様にも、飯田さんに聞いてもらってると思ってお話を続けます。

飯田さんにはほんとにお世話になりっぱなしです。

奈良でガイドをしています。これからもっとあちこち回っておもしろいガイドを提供します。ご支援どうぞお願いいたします。