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世界最古のゾンビもの?『長谷雄草紙』

長谷寺のことを調べていて、『長谷雄草紙』なるものに行き着いた。

長谷雄草紙とは、平安時代に生きた「紀長谷雄」(きの はせお)なる人物のことを描いた物語絵巻です。

長谷雄という名前が示す通り、彼は長谷寺の観音さまに祈願して授かった子供なのでした。

長谷寺の観音さまはご利益が素晴らしく『わらしべ長者』なんかも長谷寺の観音さまがもたらした富と出世の物語。

長谷雄は彼の両親が子授け祈願をして叶えられたので、彼の人生スタートから観音さまのお恵みがあったという霊験譚なのですが、彼と鬼との交流?を描いた『長谷雄草紙』がすごかった。

長谷雄は双六の名手だったようで、ある時奇妙な男から勝負を持ちかけられます。

勝負の会場は朱雀門の上!

もうなんかやばいフラグ立ってるんですが。

せっかくだから賭けましょうということで、男は美女を差し出すといいます。長谷雄は全財産(大丈夫か?)を出すことで話は決まり、双六勝負が始まります。

結果、長谷雄は勝ちまくり(さすが名手)
そして相手は、負けるごとにどんどん姿を変え鬼になっていった…

長谷雄は内心焦りつつ(ま、勝ってりゃ大丈夫だろう)と、そのまま勝負を続け、最終的に圧勝して終わったのでした。

鬼は男の姿に戻り「約束の美女を差し出しますのでしばしお待ちを」と。

しばらくしてほんとに素晴らしい美女を連れてやってきて、長谷雄はうきうき!

男は「この美女はあなたに差し上げます。ただし、100日間は手を出してはいけない。100日待ってくださいね」

長谷雄は言いつけを守り、80日は待ったのだけど…80日を過ぎたあたりで「もういいんじゃね?」と思って交わろうとしてしまった。

そしたら美女は水となって流れてしまった…

もちろん男は鬼だった。
そして美女は、あらゆる死体の「良いところ」を寄せ集めて作られたものだった。

100日待っていれば、体が完全に固まって完成したのに…

このあと長谷雄は「約束破ったね」と鬼に詰められるのだけど、そして神のご威力で助けられるのだけど。

死体の良いところを集めて作った美女って…
平安時代、すでにそんなサイコな発想があったとは。

『長谷雄草紙』ってもしかして、世界最古のゾンビものかもしれない。





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