気が付いたら〜1024〜
優「それで尚更苅里を求めたのか…?」
ネロ「最初は魂だけだった。でもずっといるうちにそれ以外も欲しくなった。一緒に時間を過ごしたい、一緒に出かけたい、愛し合いたい、夫婦になりたい、家族になりたいって…。どんなことでも苅里だけ入ればそれは叶ってどんなものでも満たされた。俺は苅里だけいれば満たされる、苅里だけ必要だと…。ここまできたらもう白状するよ。俺はもうどこまでが自分の意思なのか分からない。いつから自分が在って、どこから苅里をここまで束縛するようになってたのか分からないんだ。最初はあれだけ許可さえ出せば仲間のところに行ってもいいって言ったのに…今では2つの世界以外は俺同伴でないとどこにも行かせなくなった。俺は魂が満たされたけど死にたくないんだ。」
苅里「だから私に自然を領域内で使わせなかった。ネロの一番恐れているのは私の自然だから…。ネロは私を愛してくれたけど私の自然の死は恐怖の対象だった」
イト「一番必要な相手が一番の恐怖の対象…」
それはどんな気分だろうとみんな思った。愛してるのに自分の一番敬遠したいものも持っているのだ。
ネロ「俺は死ぬのだけはごめんだよ。死にたくないんだ。でも君は必要なんだ。だから…」
苅里「ネロ、まだ私に自然を明かしてなかったよね?実は私薄々気づいていたの。…あなたの自然は束縛。対象を縛るのであればどんな手段でも構わずそれを実行する自然。」
ネロ「…気づいてたんだね。そうだよ、俺がゼンから与えられたのは束縛だった。それを与えられた瞬間これはゼンの記憶をから消さないといけないって思って反射的にやったんだよ」
ラウ「束縛の自然か…」
だとしたら夢でも言動や今までも行動に合点がいく。
苅里「ネロは自分の自然の対はいないって話したけどある意味私はその自然の対だと思ってる。束縛の対は解放。ネロの自然を消してあなたに死を与えればあなたは自然からも私からも解放されるよ。あなたにこんなことをさせてしまっているのは私なんだから。…ネロはゼンと私に巻き込まれただけだよ。」
ネロ「解放、してくれるの?こんな俺を…?自分をほとんど見失ってる俺を…」
苅里「レグ達いいよね?自然を消して。」
レグ「ネロ、いいのか?」
ネロ「いいよ。俺は自分を完全に見失う前になんとかして欲しい。…もう君たちを傷つけたり攻撃する気なんてないからね」
泣きそうな顔で笑ってハル達は責められなかった。なんでこんなことをしたかどうかなんて…。
苅里「自然以外は帰って。あまり公にしたくない方法なの。」
ルミ「お母さん、帰ってくるよね…?」
苅里「さあね。でもお願い。ネロのためにもせめて席を外して欲しい」
ロキ「帰らずに少し距離を取らせてもらう。めぐの空間の中でやるんだろう?」
メグ「外界からは遮断させてもらうけどね。水達もいいよね?」
水「いいよ。」
自然全員がネロを囲んで自然だけを取り出してそれを消滅させる。
ネロ「…なんだかスッキリしたよ。ありがとう。」
スグル「お前がしたことを俺は許せない。苅里に化けて酷い事を言ったのも。」
ネロ「それでいいよ。俺は許されるべきじゃない。ずっとずっと俺を許さないで欲しい。俺が死んでもね」
苅里とよく似た事をいって苅里に向き直る。
ネロ「俺を死なせて欲しい。2人きりで。君の領域の中で…。出来れば転生させずに魂も消して欲しいな。またこうなったら今度こそ何をするか分からないからね。もうこれ以上に何かを失うのが嫌なんだ…」
苅里「その願い、叶えるよ。魂は後でラファに頼んで消滅させてあげる。」
ネロ「ふふ、ありがとう」
スグル「戻ってこいよ、苅里」
苅里「どうかな…?」
スグルが止めるよりも前に領域に閉じこもる。
ネロ「君の領域は初めて入ったよ。それなりに長くいたのに君の自然が怖くて俺は入ろうとさえしなかった。」
苅里「これで最初で最後だからね。ネロ、今まで私を愛してくれてありがとう」
ネロ「こちらこそありがとう。君のおかげできっと満たされたまま逝けるよ。聞いてもいいかな?」
苅里「いいよ。」
ネロは苅里を抱きしめたまま聞く。
ネロ「君はこれから何かを失う。きっと今回の俺みたいに自然を消さない限り。それでも君は自然を持ち続ける?」
苅里「持ち続けるよ。何かを失ったことさえ忘れるかもしれない。でもこの自然も私だから。どれだけあやふやになっても私は私を失わない。ネロ、今は満たされてる?」
ネロ「これ以上ないほどに満たされてるよ。苅里の腕の中で死にたいな」
苅里「それも出来るよ。…ネロ、お休み」
ネロ「うん、おやすみ。苅里」
口を互いに合わせればネロは息を引き取って幸せそうに死んで行った。
苅里「ラファだけ入って来て。」
花に言えばラファだけ入ってくる。
苅里「ネロの魂を消滅させて欲しい。これはラファにしか出来ないから」
ラファ「分かったよ。…幸せそうに逝ったね」
苅里「本人がそう望んだからそうしたの。肉体は私がなんとかするからいいよ」
ラファはそれを聞くとその魂に触れて一言言えば消滅した。