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気が付いたら〜958〜

苅里「まともな部屋で良かった…。ピンクとかだったらもう無理だった」
そんな女の子らしいものは自分は嫌なので部屋の中を見ていく。
なんとなくクローゼットを開ければ言葉が出なくなってそっと閉めた。
苅里「何この異常な数…。しかもドレスしかない」
ここにいる間ずっとドレスなのかと思ったら気が重たくなってきた。
そのころのネロは顔を赤くしていた。
ネロ「求愛受け入れてたって分かってないよね…。まあ初めて知ったから知るはずもないけど。噛みつかれるの覚悟してたのに」
実は言うと求愛行動は成立しなかったら雌が雄に加減なく噛みつくのだ。体を絡ませるまでは何もないのだ。ただ次に口を合わせ、口を離して牙で顎を掻けば相性が悪ければ雌は牙を向いて雄の首に自身の牙を食い込ませて殺そうとするのだ。なので相性が良い時は雌は甘えるような声を出してされるがままになるのだ。つまり苅里はそれに気がつかず、相性が良くてネロの求愛を受け入れたことになるのだ。今までそばにいた于露やサイラ達には相手がいなかったのでそれがわからないのは当然と言えば当然だった。
雄の求愛行動はかなり命がけなのを苅里は知らない。
ネロ「これ言ったら全面否定されそう…。でも可愛かったなぁ…」
龍の姿の苅里はとても綺麗だったが気持ちよさそうに目を細めていた苅里が可愛くてネロはしばらく仕事に集中出来なかった。
使用人「苅里夕食の時間だから迎えにきたよ!早く早く!」
苅里「そんなに引っ張ったら私転ぶから…!」
ヒールを履かせられているのでそれが苦手な苅里は何度かよろけそうになる。
ズルッ
苅里「…痛くない」
ネロ「ふぅ、間一髪。使用人は先に行ってて良いよ。」
使用人「はーい!」
ネロがギリギリ苅里を受け止めたらしく痛みも何も無かった。
ネロ「ヒール慣れてないの?」
苅里「ヒール苦手で…。いつも下駄やスニーカーだから。」
ネロ「なんか女の子らしくない。」
ズバって言われて苅里は顔を背ける。
苅里「女の子が好きなおしゃれや化粧なんて私理解できないし。もう裸足で歩いて良い?足痛い」
ヒールを脱ごうとするので慌てて止めてそのまま抱っこする。
ネロ「ヒールは脱がないでよ。その代わりリビングまでこのままでいてね。だから脱ぐのだけはやめて…」
苅里「自分で歩ける!」
ネロ「…かかとを痛めてるのに?それで裸足で廊下を歩いたら足を冷やすから却下。…使用人何?」
使用人「貴族が夕食後に話したいことがあるって。多分また縁談。客室に夕食終わるまで待てって言ってあるよ」
ネロ「分かった。それまで飲み物でも出しておいて」
使用人はそれを聞いて去って行く。
苅里「この格好辛いから下ろして!」
ネロ「だーめ。ほらもう少しだから我慢してよ」
そう言われてリビングに飛んで椅子に下ろされる。反対側にはネロが座って夕食を食べる。
苅里「(足が痛い…)」
いつもパーティーなどで履くヒールよりも高いので尚更歩き辛くて階段でさっき滑ってしまったのだ。早く部屋に戻って楽になりたい。
ネロ「足痛いんでしょ?メイドは後でヒールを低いのに全部変えておいて。ドレスの他にも数着動きやすいのもね」
メイド「はーい」
苅里「ヒール自体を無くして欲しい」
ネロ「無理。それと痛めた足は後でメイドが治療するから回復しちゃダメだよ。メイドの仕事を取ることになるからね」
苅里「そう言うことならしない。仕事を取るのも可哀想だし…」
そう話して夕食を食べ終わって苅里も一緒にと言われて今度は歩かせてくれる。
苅里「私先に戻ってるってば」
ネロ「苅里が一緒の方が話が早いんだ。少しだけ付き合ってよ」
そう言われて貴族のいる部屋が開けられる。
貴族「主様、その方は…」
貴族とその娘は苅里を見て固まる。
ネロ「俺の(仮の)婚約者。縁談要らないのわかるよね?さっさと帰って」
苅里「(テレパシーで仮のって付け加えた…)」
苅里はそう思いながらネロを見る。口調はあまり変わらないが相手を見る目はなんの感情もこもってなかった。苅里を見たり話したりする時以外表情にも言葉にも感情はほとんどなかった。
貴族「それでも側室に…!」
ビシッ!
壁にヒビが入ってネロがイラつく。
ネロ「側室なんて要らないよ。俺にはこの子だけで良い。帰らないならこの場で殺す」
使用人もメイドもビクビクとなって苅里はまずいと思ってネロの前に出る。
苅里「この場にいるみんな怯えてるから怒らないで。それに殺さないで」
ネロ「…君がそう言うならそうするよ」
フッといらつきを消していけば壁が勝手に修復される。
ネロ「ほら、今なら殺さないから帰ってよ。次ふざけたこと言ったら家畜小屋にぶち込むよ」
そう言えば貴族と娘は顔色を悪くしたまま帰って行った。
ネロ「側室なんて気分が悪いよ。使用人もメイドもごめんね」
使用人「主が怒るのは当たり前だよ。今まで散々その話はするなって貴族は言ってきたのに…」
メイド「苅里も止めてくれてありがとう。主は基本怒らないから、怒ると私何も出来ないから…」
苅里「ネロ、私より長く生きてるのに感情のコントロールしてよ」
ネロ「う、だって〜…」
さっきとは打って変わって表情、感情豊かに反応して苅里はなんて差があるんだ…と思った。
ネロ「あ、それより食事にしないと。苅里一緒に来てね」
苅里「どこで食べるの?」
ネロ「それ専用の部屋。俺と苅里の間にある部屋だよ。何人食べる?俺5人」
苅里「私は2人でいいけど…」
使用人「じゃあもって行くね〜」
ネロに連れて行かれてその部屋に行く。
苅里「確かにそれ専用の部屋かも…」
掃除はしているみたいだがそれっぽい匂いがして食欲が刺激されそうだ。
ネロ「換気し忘れたんだね。ちょっと待ってね」
そう言って唯一の窓を開けて空気を入れ替える。
使用人「あ、ごめん!換気忘れてた…」
ネロ「まあそう言う時もあるよ。ありがとうね。他はいつも通りにして良いから」
使用人「うん!他のみんなにはそう言っておくから俺達2人は扉の前にいるね」
そう言って使用人2人は廊下に出た。