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気が付いたら〜1009〜

副隊長「薬室長、うちのバカがごめんね?」
ファウ「本当いい迷惑だよ。まあ苅里が戦闘不能にして怪我がないから良いとするよ」
副隊長も見学席に座って見ることにする。
苅里「お先にどうぞ」
隊長「じゃあ行くよ。」
フッ…
他の人「どこにきえt」
ドガァァァァァン!
気がつけば姿が消えてそんな音がして稽古場が割れる。
部隊長「…これ、止めるんだ」
苅里「止められるんで、この程度」
部隊長「はは、じゃあ君には一部開放くらいはして良さそうだね」
苅里「周囲に影響が出ないならどうぞ」
そう言って1時間戦い続ける。
部隊長「(全然本気を出してないのにそんな感じに振る舞ってるな…)これくらいにしておこうか。疲れたかい?」
苅里「まあそこそこ(これくらいで疲れないけどね)」
互いに距離をとって礼をして握手をする。
部隊長「君強いね。ぜひ入って欲しいよ」
苅里「私は嫌です。薬師長のところで働いているのでそれ以外はしません。今回はたまたまです」
部隊長「はは、それは残念だ。稽古場は俺が直すから帰って良いよ」
苅里「ありがとうございます」
苅里は見学席に飛んで白衣を持ってファウに声をかける。
苅里「ファウ、何枚進んだ?」
ファウ「たった今全部終わったよ。凄い戦いだったね」
補佐官「苅里さん本当に強いんですね!あの部隊長と互角なんて!」
ファウ「(互角、ね…。あの部隊長も気が付いてるだろうけど苅里全然本気を出してなかった。そんな感じに見せていただけだった)」
部隊長を見れば分かってたようでファウの顔を見て頷いていた。
研究員「苅里さん飲み物飲んで下さい!」
苅里「ありがとう!…美味しい!よし、研究室に戻ろう。ファウ、明日の分もするよ」
ファウ「まじで!?今今日の分終わったのに(泣)」
苅里「今日やれば明日は少しマシになるから。ほら行くよ」
そう言って出て行こうとすれば背後からナイフを投げられる。
研究員たち「苅里さん!」
後ろを振り返らずにナイフを数本一気に止めて投げた本人を見る。
苅里「まだ戦うつもり?今度はもうちょっと痛くしようか?」
男性たちが苅里を睨んで投げて来たので投げ返せばファウと同じように見学席に縫いとめる。
苅里「次は手足を切り落とす。」
男性たち「(ゾクッ)!!」
苅里「それくらい簡単だから。じゃあね」
今度こそ研究員たちも連れて研究室に戻って行った。
ファウ「苅里〜もし俺がサボったら手足切り落としちゃう?」
ファウが半分冗談で聞いて見る。
苅里「手足は切り落とさないよ。まあ関節くらいはちょっと外すかも。」
ファウ「あ、まじ?じゃあサボんないから手をコキコキと鳴らさないで!」
苅里「なんだ、外して欲しいのかと思った。サボんないでね。」
ファウ「は〜い。あと1時間だね。みんな〜軽くやったら今日は終わり!俺は書類。補佐官は研究員につくように。苅里は俺の補助」
研究員「はい!」
苅里「1時間で出来るだけやらせるから」
ファウ「よし、出来るだけ頑張る!」
補佐官「(苅里さん薬室長にやらせるの上手いなぁ…。俺無理だし)」
あんな態度豹変する薬室長を相手にできる苅里に補佐官はずっといてくれたら良いのに…と思った。
15時。
ネロ「苅里〜!帰ろ!」
苅里「はいはい。…何?」
ネロ「…苅里、今日戦った?」
補佐官も研究員も目を見開く。なぜ分かったのだろうか…。
ネロ「肌のしっとり加減が違う!絶対シャワー浴びた!その前は戦ったから汗かいたでしょ!」
苅里「しっとり感て何!あんた変態じゃないの!?」
ネロ「苅里限定だもん〜!」
何戦ってんのさ〜!と言って苅里をギュウギュウに抱きしめる。
ネロ「うん、石鹸の匂いするから決定だね。ファウ、何させてんの?」
ファウ「お前なんでいなかったのに分かるんだよ。キモいわ。…苅里が部隊の隊員に吹っ掛けられて収まらないから仕方がなく戦っただけだ。まあ向こうの隊長も少し戦ったが身体能力と武器しか使ってない。帰り際に隊員にナイフ投げられてそれを投げ返して見学席に縫い付けたからもう大丈夫だろう」
ネロ「何そんな優しいことしてんの?腹に穴開けてやれば良かったじゃん。なんで?」
苅里「そんなことする必要ないでしょ。隊員は気絶させれば大丈夫だと思ったの。それ以上は必要ない」
ネロ「なんだ、殺せば良かったのに。今から俺が殺してこようか?内臓グチャグチャにして頭潰して首を捻じ切ってあげる」
研究員「はは…冗談にしては凄いですね」
ネロ「なんで冗談言わないといけないの?ファウその隊員教えなよ。躾のなってないクズは強い奴が教えてやらないと。」
ファウ「お前、トラウマでも植え付ける気か?そんな事したら苅里が悲しい顔するぞ?」
ネロ「え?苅里やなの?」
苅里「ちゃんと部隊長もやるって言ってくれたからしなくて良いよ。しないで。」
ネロにそう言えば渋々頷いて苅里を連れて帰って行った。
補佐官「薬室長、ネロさん冗談ですよね?」
研究員も聞くが薬室長は首を振る。
ファウ「あいつ、それくらいするぞ。お前たち分からなかったのか?目が本気だったぞ。ネロにとってもそんな事大した事じゃないんだろう。冗談で済むような内容じゃない。全部本気だ。」
補佐官「…なんでそんなことできるんですか?」
研究員「そこまでしなくても…」
ファウ「そんなの知るか。でもあいつはよく口癖で言ってる。弱い奴は強い奴に従うのが自然の摂理だ、強い奴が上に立つんだから弱いのはそれに歯向かうなってな。歯向かうなら強いやつを超えてからにしろとな」
いつもそう言ってると話せばさっきのネロの言葉を思い出す。
〝躾のなってないクズは強い奴が教えてやらないと。″
研究員「その、苅里さんは…?」
ファウ「さあな。苅里のことは俺たちも知らないんだ。どれだけの実力があるかなんて見当もつかない。…時間過ぎてるぞ。今日はもう仕事終わりから帰れよ」
ファウの言葉で全員解散になった。