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気が付いたら〜828〜

他の高校生「おーい、桜の木のところに行って赤い桜の花びらを探さないか?」
高校生「もしかして血桜の噂か?あれ結構探してる人多いけど見つかるのか?」
他の高校生「それはその場所に行かないと分からないな。なんでもその権利が与えられるのはその花びらを拾った人限定らしいし。中には他校の女子と付き合い始めた奴もいるらしいぞ」
高校生「でもそれ永遠じゃないんだろ?」
他の高校生「まあな。でも付き合ってみたいって言う願望がある奴はこれを探しまくってるらしい。結構学生や社会人でも探す人多いみたいだぞ。ほら、早く行くぞ!」
そう急がされて高校生は他の2人とそこに向かった。
他の高校生「…見当たらないな」
高校生「こっちもない。もう1カ所向かうか?」
他の高校生「そうするか」
3人は歩いて帰り道にあるもう1カ所の桜を見る。
他の高校生「こうやって探すと思うんだけどさ、民家に侵入されて桜の木の周辺を勝手に調べられるとかはないわけ?」
他の高校生「それなんだけど民家の桜の木にはそれが落ちてないらしい。あくまでこうやってみんなが使うような場所らしいぞ。だから不法侵入とかは起きないみたいだ」
2人がそれを話してる間高校生はそれを見つける。
高校生「なあ、これか?」
2人もそれを見ればそれは真っ赤な桜の花びらだった。
他の高校生「おそらくそれだな。噂通りほんとに真っ赤だな。まるで血だな。お前両思いになりたい相手とかいる?」
高校生「いや、いないけど…」
他の高校生「俺も今のところいないな。あくまで探しに来ただけだから場所だけ教えて欲しい人を募るか?それはいいらしいから」
高校生「それはいいって何がだ?」
他の高校生「知らないのか?椿の噂の4回目みたいに血桜の噂は大事なところはネットに載ってないんだ。だけど血桜のこれを探してる人を募ることはなぜか出来るんだ。俺達は触ってないからここに待ってるだけにするか」
そう言ってネットでそれを出すとすぐに5人の希望者が出る。
数分もすればその5人が来て場所を教えると3人は帰った。その5人のうち3人はまだ探すからいいと辞退して残りの2人はたまたまもう一枚近くで発見したので争うことはなかった。
女性「これで会社の先輩と付き合うことが出来る!早速今から湖に…!」
女性は近くの湖を探してそこで付き合いたい相手を思い浮かべて手を入れる。
女性「えっと確か…〝血桜に代償を捧げます″…だよね。…あれ?花びらが消えてる!どこに行って!…この手の甲の何?」
女性は手の甲の桜の印を見て呟く。
女性「漢数字の8?なんの事だろう…。でもいいや、これで先輩と両思い!」
女性はそれをあまり深く考えずに帰っていくと苅里が血桜の花を持って笑う。
苅里「血桜、8ヶ月もいいの?のんびりだね」
サワサワ…
苅里「食べられるならいいんだ?そうだね、一度契約すればもう逃げられないもんね。相手の感情を捻じ曲げた代償は大きいよ?ね?これから食べられる人?」
男性はいつの間にか真っ赤な世界の血桜に飛ばされており苅里も領域に戻る。
苅里「血桜好きなようにね。」
血桜は頷くと先に殺してゆっくりとその男性を食べて行った。
苅里「蓮はもう食べ終わったの?」
サワサワ…
苅里「そっか。美味しいなら良かった。獣化して私と混在界で過ごす?」
そういえば蓮は狐の姿になって苅里と混在界で河川敷で休む。今は通常の色をしているので赤い狐なんて注目される事もない。
クォン!クォン!
苅里「どうしたの?……なるほどね。それなら吠えるよね」
黒「ここで何してるの?」
白「先客がいるとか…」
黒と白が嫌そうな声で苅里を見る。
クォン!クォン!
苅里「そんなに敵視しなくていいから…。落ち着こうね」
苅里は蓮を撫でれば大人しくはなるが黒と白に対してはずっと威嚇をしていた。
黒「ねぇ、何してるか聞いてるんだけど」
苅里「この子と過ごしてるだけだよ、ね?」
頭を撫でれば苅里にすりすりと擦り寄って来る。
苅里「邪魔なら出ていくよ。ご自由にどうぞ。…いこっか」
クォン!
蓮は一声なくと苅里にぴったりとくっついて河川敷を去って行った。
白「なんであの狐に威嚇されなきゃいけないのさ…」
黒「なんかここで休む気失せたね。帰る?」
白「そうだね。」
2人はそう言って帰って行った。
クゥ〜ン…
苅里「ん?大丈夫だよ。あの場所2人の休憩場所だったんだね。もう1ヶ所の方は誰にも知られてないからそこに行こうか」
そう言って近くの山の頂に飛んで蓮を撫でながら夕陽を見る。
ペロペロ…
苅里「慰めてくれてるの?ふふ、ありがとうね。」
蓮は苅里の腕を舐めて頭をすっぽり苅里の腕の中に入れる。
苅里「プッ!何してるの?そんなに抱き上げて欲しいの?」
クォン!
苅里はしょうがないね…と言って膝の上に乗せて抱きしめれば蓮は顔を苅里の首に埋めていた。
苅里「そろそろ帰ろうか。帰る前にどこかで取って来てもいいよ」
そういえば蓮は苅里からストンッと降りてそうすると言って山を降りて行った。
苅里「狐狩りにあっても返り討ち出来るからいっか」
苅里は呟いて先に領域に帰って行った。

苅里「…また?」
スグル「まただな。レグ、今回も偶然か?」
レグ「今回もだ。席は外すから気にするな。2人以外は誰も見聞きできない。」
そう言ってレグは消えてまたそこに座る。
苅里「200年ぶり」
スグル「そうだな。ゆっくり眠れたか?」
苅里「まあね。…まだ私といるつもり?」
スグル「機会があれば苅里とは喋りたいんだ。…こっちは大分変わった。ハル達4人も向こう側だ。あいつらだけは絶対に向こうには行かないと思っていた。表面ではお前に冷たい態度を俺は取る。だが覚えていてくれ。俺は苅里を心の底から敵視はできない。どれだけ経ってもだ」
苅里「馬鹿だね、スグル…。敵視してくれた方が私はいいのに」
スグル「お前がどれだけ願っても無理だ、諦めろ。夢の中でこうやって毎日話せたらと思う。表立ってこんな事は言えないけどな」
苅里「…忠告する。この前近くの海で人の本性が出たの」
スグルはそれを聞いて目を見開く。
スグル「水は、無事なのか?」
苅里「ギリギリ海を一時的に手放したから体調や周囲に影響はないよ。即座に守結で範囲を閉じ込めたし、今はもう元通り。水も海を取り戻したからね」
スグル「そうか、水も無事で良かった。」
苅里「なんであんんな事が起きたのかは分からない。でも今後起きないとは限らない。4人にも起きないともね。定期的に体調とか聞いておいて。あとはそんな事が起きたら真っ先に自分たちの身を優先に守ってね。」
スグル「…お前はどうする?またあんな怪我しないよな…?」
苅里「分からない。むしろあれは軽く済んだ方だよ。予め力も準備してたからあれで済んだ」
スグル「あれで軽いなんて…。人の本性はそんなに強いのか?」
苅里「強いとかじゃないんだよ、あれは。あれが手強いのは執着だよ。誰かを殺してやる、奪ってやる、復讐してやる。いろいろなものがあるけどそんな人の黒い感情が集まりやすい。それが狂気となって集まれば準備をしていない私なんて1時間もしないうちに戦闘不能になる。」
スグル「なんでそんなものを苅里がしなきゃいけない…?今まで十分過ぎるほど怪我をしてだろう!なんで、お前が…」
スグルは悲しそうに言う。
苅里「強い力を持ってるから。どれだけ強くなっても倒せない相手はいる。強い力を持っている人はそれよりも強い相手を惹きつけやすい。私より強いのなんてきっと認識してないだけでごまんといるんだよ、どこにでも」
苅里は遠い目をして答える。
苅里「私に関わらないのが一番安全なんだよ。知らないふりをして罵倒して私に怪我を負わせるのが一番だよ」
スグル「…どれも俺はしたくないのに。苅里、お前は無理をしないでくれ。」
苅里「ん〜約束はできない。でも頑張る(笑)」
苅里はあはは、と笑ってスグルは苅里の手を取る。
スグル「帰るギリギリまでこうさせてくれ。」
苅里「…それくらいなら」
2人は手を重ねるだけ行ってギリギリまでそうしていた。
苅里「もう行かなきゃね。起きる時間だよ。」
スグル「今回の事も内緒だな。レグもきっと言わないでくれている。…レグ、待たせたな」
レグは出て来て苅里は立ち上がる。
苅里「レグもまたね。秘密でお願いね?」
レグ「ああ、これくらいならいい。気をつけて帰れ」
苅里「うん」
苅里はそう言って先に帰った。
レグ「…先日の水の件は知っていた。些細なことでも話すとしよう。もうあんなのは俺も起こしたくない」
スグル「そうだな、頼む」
そう言ってレグもスグルも夢から出た。
スグルは目を開けて目元を触る。今回はどうやら涙が出てないようで良かった。起き上がり顔を洗い服を着替える。
部屋を出ている前に鏡で自分を見る。
スグル「特に何か起きたように見えないだろうな、この顔なら」
いつも通りの顔で部屋を出て行く。
イト「スグルおはよう、朝食食べようよ」
スグル「ああ。」
そしてまたいつもの朝が始まる。
数百年後。
苅里「ラウガ多いね〜。本当にどこから湧いてくるのか…」
キト「そうだよね、どれだけ殺しても減らないし…また進化して増殖能力とか持ったのかな?」
苅里「否定出来ないね。それ本当だったら親玉とかそう言うのを見つけなきゃいけないし…。と言うかここまで出来るなら私を求める必要なくない?」
シト「それは俺達には分からないよ、母さん…」
困ったようにシトは返す。