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薔薇と椿のお歴史

この記事はSwitch版で初めて薔薇と椿を知った人向け。つまり薔薇と椿の歴史、そもそもこれを作ったNIGOROというチームの歴史の説明です。
薔薇と椿は結構歴史が深く、その最初から説明しないとこのトンチキなゲームが出来上がった経緯が説明できないのですよ。


おNIGOROの成り立ち

薔薇と椿を作ったNIGOROというチームは、基本的には3人のチームです。プログラマが2人、そして私がそれ以外。グラフィック、音楽、ストーリー、ディレクターどころか広報まで。つまりゲーム作りたいだけ人間の私の元に、それを実現してくれるメンバーが集まってくれているようなチームです。「GR3」というグラディウスおマージな作品と、「LA-MULANA」というアクションゲームを作りました。

GR3
LA-MULANAオリジナル版

元々は趣味レベル、自分たちの好きだったレトロゲーム風ゲームを作ってました。随分古い頃からやっていたのと、それなりに評価はもらえてたので、「インターネットが普及すればゲームをネット上で買う未来が来るに違いない。これを仕事にしねーか!」ということでインディーゲーム制作集団NIGOROとしてスタートします。ネットで知り合ったチームなので、昔も今も住んでいる県がバラバラです。20年前からテレワークですよコロナ禍なんて屁でもありませんでした。

NIGOROおスタート

NIGOROとしてスタートしますが、名前を変えて一新。つまり世界の誰も我々のことを知らない。せっかくリスタートするわけですから、レトロゲームの再現とか、リスペクトとか、誰かの真似は散々やったからもうよかろう、自分たちのオリジナル作品で打って出よう!ということで最初のうちはアマチュア時代の高評価作品にも触れずに進めていきました。

知ってもらうためには何から始めるか。無料で誰でも遊べるものを作って広く遊んで知ってもらおう!ということでブラウザ上で遊ぶことができるFlashゲームを作ることに。
ブラウザ、スマホもなかった頃ですからパソコン上で遊ぶゲームです。つまり操作デバイスはマウスが基本。

しかしですな、我々はコントローラーどころかキーボード操作で遊ぶようなゲームしか作ったことがなくて。マウスで遊ぶ、つまり誰でも遊べる、「手軽に遊べる」っていう観点が持てなかったんですな。そんなわけで1作目はマウス操作のパズルゲーム、操作も難しめでルールもお手軽とは言えない、遊んでくれた人は評価してくれましたが名を広めるほどのヒットはしませんでした。

これがそのゲーム、Death Village

なるほど。プラットフォームが変わると遊ぶ人が変わる、求められるものも変わると。自分たちのスタイルを貫くというのもかっこいいことかもしれないが、「知ってもらう」という目的がある以上は考えを改めて挑むところが必要かもしれない。

薔薇と椿、産まれる

さあ次は何を作るか。マウスだけで遊ぶ、しかもわかりやすく簡単な操作。もちろん自分たちがヨシとするスタイルを、この時点で活かせそうなのは「シンプルかもしれないがゲームとしての作り込みは手を抜かず」だ。

マウスで遊ぶ。マウスを動かす。マウスを左右に動かす。手を左右に動かす。手を左右に振る。…‥ビンタだ!

ビンタで戦うゲームにしよう。子供の頃から不思議に思ってたことがあるんだ。映画やアニメなんかで女性同士が喧嘩するシーンでビンタしあうってのがある。不思議なことに交互に1回ずつビンタしてんだよね。なんでグーで殴ったり蹴ったり胸ぐら掴んだりしないんだろう?なんかルールでもあるのかな?よし、よくわからないが実はルールがある女性同士のビンタバトルにしよう。

ゲームのルール、システムは決まった。じゃあ女性同士がビンタするシチュエーションてなんだ?
喧嘩してるってことでしょうね。喧嘩するってことは身近な人間で許せない相手がいるってことか。姉妹、嫁姑……口喧嘩じゃ許せないほどの争いとなると相続争いとか?

初期構想画像

実を言うとこの薔薇と椿の世界観は自分の中から出てきたものではなかったりします。こんな引き出しありません。大学時代の時に変わった先輩がいたんですよ。ヅカ好きでバレエやってる男の先輩なんだけども、女の汚い争いが好物で。つまりはトゥシューズにガビョウ入れるとか出前終わらせないと演劇のチケットくれないとか。ああ言う世界観ですよ。そこで飛び交う昭和の少女漫画のようなセリフの応酬の面白さを教えてくれたのはその人でした。

ゲームのシチュエーションがその世界観にぴったりだと思い、「昭和少女漫画のノリを世界観にしよう!」と決まります。決まるんですが、元々自分の中にない引き出しなわけですよ。使えるストックなんてすぐ尽きます。じゃあ残るのは何か?それは自分が子供の頃から触れてきた少年漫画のノリです。

かくして、少女漫画のような世界観を持ちながら少年漫画のノリと言う、薔薇と椿独特の世界が作り上げられました。

これはそのコンセプトが守られたイラスト

薔薇と椿、人気になる

これは大ヒットしました。世界中で2000万ページヴュー。ページビューなので遊んでくれた人数ではありませんよ。俺だけでも100回はページ表示してますからね。でも宣伝的には深く触れずに2000万って数字だけ押し出してますな。大人。

昔あったShockWaveと言うブラウザゲームをたくさん遊べるサイトから「うちにも置かせて!続編つけて!」なんてオファーがあり(この時に今のシナリオ2、薔薇と椿2が出来上がり)、「うちの作品とコラボしていい?」ていうインディーチームが現れ(薔薇と椿とファタモルガーナ)、自分たちの過去作品LA-MULANAをリメイクするから宣伝用にコラボさせようとか(今のラムラーナ編)。名を広めると言う意味でも充分な成功でした。
ガラケー版が作られたり、調子に乗ってWiiWare版を企画したりしたな。

ほとんど知られていないガラケー版

しかしですね。本来我々はLA-MULANAのような硬派なガチガチ骨太ゲームを作りたいわけです。でもしばらくは薔薇と椿が代表作になってしまいます。この頃から東京ゲームショウに行ってみたり海外のインディー作家と交流始めるんですが。

「俺たちの代表作はLA-MULANAだ。」
「しらねぇなぁ」
「じゃあ薔薇と椿は?ビンタのゲーム。」
「オウ!スラッピンゲーム!ハッハッハッ!」

こんな具合です。ここから数年、これに苦しむことになります。

薔薇と椿、おスマホに

そして時はだいぶ過ぎ、2020年にFlashのサービスが終了されてしまいます。しかし不本意とはいえNIGOROの代表作ともいわれた薔薇と椿が遊べなくなるのは良くない。何かしら違う形にしても残しておけないものかどうか。

そんなところに、LA-MULANA2を作り終えて体も資金もボロボロだった我々にroom6さんが声をかけてくれます。何か一緒にやりませんかとね。そんなわけで薔薇と椿のスマホ版の開発が始まります。

新入りプログラマに渡した手書き仕様書

スマホ登場時にFlashの薔薇と椿のページを開いて遊べなかなんて実験やってたので、操作方法がスワイプになることには何も抵抗はありませんでした。直感的な操作になる分、Flash版よりもシンプルな操作になりました。この時点で十年ぐらい前のゲームだったので、最新のゲームに見えるようにアニメーションを豊富にするなどの強化はありましたが、ありものを移植・NIGOROの本筋とは違うノリだ・新しくプログラマを入れたのでNIGOROに慣れるためのプロジェクトにしようなどの理由から数ヶ月で終わるぐらいの規模でやることにしました。

私が作ったアニメーションをプログラムで再生制御してもらえればゲームとして成り立つぐらいのつもりで。簡単に言えば、敵ごとの動作の違いや攻撃のタイミングなどを全部アニメ依存にしてあるんですね。アニメの方で攻撃動作が遅ければ、そう言う敵になると。

NIGOROとしては初のスマホゲーム、色々と勝手が違います。一番苦労したのは容量ですかね。スマホで出すなら何Mまでとか、よく覚えてないけど適正容量に縮めるのがね。大きな絵がアニメしてるので画像サイズがね。解像度下げたり圧縮率上げたりしたかな。あとスマホによって画面サイズが変わるのでそれにも対応できるような画面作りとか。最後まで上手くいかなかったのでiPadを対応から外した記憶あるなぁ。対象外ってだけで動きますけどね。敵味方の間隔が縮まるのでスワイプの距離感変わるからなぁどうするかなぁと。

そういえば、なんでも「お」をつければいいスタイルは実はこのスマホ版からのことです。Flash版ではやってなかったはず。もうその頃からお嬢様言葉ブームがあるということは認識していたので、乗っかるべきかなぁと。
まず「おスワイプ」というパワーワードができた時点で悪ノリは確定です。合わせてFlash版のシナリオでも「お」をつけた方が良さそうな文言には追加していったはず。

ゲーム内にとどまらず、宣伝やゲーム紹介ページでも徹底してやりました。元々旧仮名遣いで統一していたところに単語まで狂っていくのでカオスな世界観が出来上がります。レビュー欄もみんな同じノリになってたのは楽しかったですね。

スマホ版のマネタイズの話やコロナ禍突入などの話は混みいるので有料に。

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