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映画『せかいのおきく』

モノクロ映像の中にふと映るカラーの世界がとても印象的でした。

最初から最後まで”うんち”が人の繋がりの中心となり、淡々とストーリーが進んでいきます。
主演の黒木華さんが途中声を失うこともあり、映像の色味だけでなく音もわずかになり、とても不思議なものを見ているような気になる映画です。なにせうんちを軸として進んでいくので、なかなかすごいものを見た気分です。

臭い!汚い!の嫌われモノ“うんち”が生々しく描かれながらも美しい映画に仕上がっていることに驚きました。


幕末、江戸で下肥買いをしている中次(寛一郎)と矢亮(池松壮亮)は、人々に罵られ、臭い臭いと鼻をつままれながらもたくましく図太く生きていく。そんな中次に恋する、武家育ちながら貧乏長屋暮らしのおきく(黒木華)。

章立てで話が進んでいき、章ごとに手書き文字でタイトルが映し出されそれがまた美しいなと思いました。

現代では自分達が排泄したものがその後どういう処理をされているかなんて見る機会はほとんどありません。用を足したら、ジャーと水で流し終了です。
でも江戸時代は、中次や矢亮のように、肥やしとして便所の排せつ物を汲み出し、農家に持っていくという仕事をしていた人がいたのです。
文字通り”くそまみれ”になりながら、それでもこの人達がいないと江戸の人々は困り果てたのも事実です。

身分の違いがあったとしても、人は生きていれば皆糞尿をし、死んだら虫の餌となり土に還っていく。この頃の人間はまだまだ自然のサイクルの中の一歯車として生きていたのかもしれません。
SDGsが叫ばれるようになった現代社会を生きる私たちが、このような循環型社会がかつて存在したことを知り、奇妙で美しいモノクロの世界に入り込む89分を味わうのも面白いと思います。
ただ、なかなか生々しいのも事実なので排せつ物がとっても苦手な方にはおすすめしません笑




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