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#09_28歳の誕生日、あと10年で死のうと思った。
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「あの、すみません。」
人との出会いにおいて、第一印象は大切だ。
自分が他人からどう思われるのかを意識しないのは私の美学に反する。
且つ努力もせずにありのままの自分を愛してほしいなどと願う人間が嫌いだからだ。
「今日からお世話になります。」
女子アナのような声を纏い、好印象を持ってもらうための笑顔の仮面をつけて話しかけたのは転職先の会社の男性社員だ。
出会う人すべてに好かれる無理な努力は必要なくとも、嫌われておくよりは得する場面が多いだろう。持論である。
媚びるべきなのか、快活な女を演じるべきなのか
その人の第一印象で自分のキャラを判断し演じられるのはある意味特技かもしれない。
他の社員にも簡単な自己紹介と挨拶を済ませ、書類へのサインや打ち合わせも滞りなく進み、何事もなく一日目を終えられそうだ。
「また歓迎会もしましょうね。」
こういった会合は必要ないという割合も多い世代に属しているのだろうが、
自分のキャラの確立や周囲への印象付けなど新しい場所での人となりを見極めやすい飲み会は
私にとっては早めに開催してくれるほうが有難かったりする。
学校や会社に居ると自分のルーティーンやペースを乱されることが多く、完璧主義の私にとってはそれが大きなストレスとなって蓄積していく。
社会人になってその場所から離れること、その人と縁を切ること、環境を変えること、
自分の意志で決められることが増えてからはまだストレスを軽減することが出来るようになった。
そのコントロールができるようになったのもここ最近の話ではあるが。
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「もしもし?」
一日目の出社を終えた私は、母親からの心配コールに対応していた。
みんな良い人たちだし大丈夫だよ、と4度目の転職をした自分の判断を正当化する。
田舎暮らしも悪くないな、と一瞬思える広めの1LDKでこれから先の人生が少しでも明るいものであるようにと願った。
ここからこの希望が一年も持たずに終わるという事実は、まだ想像すらしていなかった。
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