#13_28歳の誕生日、あと10年で死のうと思った。
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「今貴方くらいの年齢の女の子、少ないから来てくれれば嬉しいわ。」
その道一筋の、芯のある女性を前に
契約書にサインするにもその美しい所作に緊張する。
水商売という世界で、これから自分がここまで昇り詰められるとは思ってはいない。
「是非よろしくお願いいたします。」
成人し、軽い気持ちで始めたこの仕事が一番長く続いてるのは事実だ。
世間体を気にしていた私は、社会人になってからもあくまで会社員としての肩書きを守ったまま二足の草鞋を履いていた。
そうでしか向き合ってこなかった私でも、この仕事がいかに難しく、大変なものかは理解しているつもりだ。
これから先、数年後の未来を確保できないこの仕事を一本化するにしても
気持ちが続くか分からないまま会社員として転職することも
私にとってはどちらも同じくらいギャンブルだ。
そしてどちらの道を選んでも、年齢を重ねるごとにその不安の限界が近いことは自分が一番よく分かっている。
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「ごめん、あのお席シャンパン開いたから行ってくれる?」
平日月曜日から金曜日までオープンの20時から閉店の0時まで
数日、数週間働いて、自分の立ち位置のようなものが分かってきたように思う。
求められていること、今その場に足りないキャラクター。
私は飲みっぷりの良さでスタッフさんから酒がよく出る席の接客をお願いされることが多くなった。
幸い、やみくもに経験してきた会社員での経験や自分の恋愛観などを面白おかしく話すことに抵抗はなく
接客している相手が求める“自分以外の誰か”を演じることも苦ではない。
その対価として、普通の会社員よりも多くのお金を貰えることはストレスもなく、正直会社員でいるより学びになることが多い気さえする。
私にとって目新しいこの体験が、そう錯覚させた。
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