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#15_28歳の誕生日、あと10年で死のうと思った。

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好きなアイドルグループのメンバーが脱退しようが、当たり前に世界は周る。

「もうこっちに引っ越してきたら?」

前職を辞め、ホステスになってからも電車で通勤していた私は
最近良くしてくれているお客様からの誘惑と戦っていた。

たしかに、酒を飲んだ後に終電で帰宅する毎日は身体にこたえる。
営業が終わって飲み行っても、すぐ帰ることができる環境はかなり魅力的だ。

でもそれは、暗に今の関係以上を求めているということなのだろう。

本来、プライドを持ってこの仕事をしているプロなら
こんな誘いには乗らず、店の中での関係を長く続けることを考えるべきなのは分かっている。

しかし私の努力ができない性格は、こういう誘惑にめっぽう弱い。

“自分を大切にしなさい”ときちんとした家庭で愛されて育ってきたはずなのに
対価をもらえるなら、楽ができるならと安易に選ぶように歪んでしまったのはいつからだろう。

店で自分に使ってくれる分、家賃と生活費として直接渡してくれるほうが
よっぽど簡単に私の理想の生活が叶ってしまうから。

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都合のいいときは無くなるプライドで自分を甘やかすことを黙認した私は
前職の仕事に合わせて借りていたマンションから、市内に引っ越してきた。

もちろんこの暮らしも、いつ無くなってもおかしくない不安定なものに変わりはない。

自分の足で立てるように“何か”を考えなくてはいけないと頭では理解しつつ
その手立てを探す努力の仕方を知らない私は、ここまで来てもまだ行動に起こせないでいた。

もうこの若いだけ仕事が出来なくなる日は近い。
また楽な方へ流されて、どんどん抜け出せない闇に飲み込まれている感覚が襲う。

この金銭での繋がりが切れる前に、いざこの関係が壊れたとき、もう一度自分と向き合って生きていく方法を考えなくてはいけない。

そう思いながらも、自分の甘さに見て見ぬふりをしているうちに
大きな波が、静かに近づいてきていた。

2020年に入り、やってきた新型コロナウイルスの感染拡大。

その後の緊急事態宣言により全員の出勤が停止してしまった。

それは神様に「このままこの暮らしをしていてはいけない。」と告げられているようだった。

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