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#11_28歳の誕生日、あと10年で死のうと思った。

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「雑誌いかがですか?」
話し声とドライヤーの音、ハサミが重なる無機質な音。

美容室で過ごす毎月の好きな時間。

彼は無駄な話を振ってこない優秀なアシスタントだと思う。
仕事やプライベートな話は、客である私から振らない限りしてほしくないし
まずは自分の仕事をこなしてから魅せてくれ、と言いたくなるからだ。

こういう自分の中の正しさやこれが常識だと疑わない神経質さが、自分自身の生きづらさを生んでいるんだろうけど。

これはある意味自己防衛で、ストレスを溜め込まないように悪態をついているのだから
人の好き嫌いくらい、心の中で唱えさせてくれ。

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雑誌やSNSも、今は情報量が多すぎて荒波に流されそうになるけれど
インプットして挑戦する、一度体験する、試してみて判断する精神はこれからも持っていたいと思う。

巷で流行っていることがすべてだとは思わないし、自分が好きなものと似合うものが違うこともあるけれど
それも何もかも、自分で一度やってみないと分からないことのほうが多かったりするものだから。

10代の頃は、こんな風に自分を客観視する前に
鏡に映る自分が、理想とする自分とは程遠いことにいちいち苛立っていたように思う。

「お金が無限に使えたら、このへん全部やるのにな。」

10代の頃から担当してくれている美容師さんが、美容雑誌で紹介されているクリニックの体験レポートを羨望する私を見て笑う。

この欲望がこれから先、きっと尽きることはないのだと気づいてからは
社会に出て仕事をして自由にお金が使えることが嬉しかった。

それが20代後半に差し掛かって年々かさむ美容費に対し、若さを切り売りできる仕事ができなくなるということは
私にとって“女としての賞味期限が終わっていく”という事実を突きつけられているのと同じだった。

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