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「あたしは柴犬のアキ」14

 まずは家の前の道に出た。辺りを見渡し誰もいないかチェック。モモちゃんに「ワン」と吠え「行ってきます」の挨拶をした。電柱沿いに歩き、クンクンしてまわった。雑草も食べて今日もいい気分。もうちょっと先まで行ってみよう。そうだいつも散歩に行く公園に行ってみよう。公園に着くと真っ先にいつもの場所でおしっこをした。クンクンしたかった場所は全部クンクンした。掘ってみたかったところも掘ってみた。ようし次の公園までひとっ走りしようか。次の公園に着くとうんちがしたくなった。でも夜の散歩の時、お姉ちゃんにうんちが少ないと怪しまれるので我慢した。水が飲みたくなったので水道まで行ったけど、蛇口が開かない。蛇口に掴まって回そうとするけど回らない。そのうち肉球が痛くなってきた。仕方がない。誰か来るのを待っていよう。

 よちよち歩きの子供とママさんが来た。二人でブランコにのり遊んでいる。あたしは水道の横にお座りしながらずっと眺めていた。ブランコが終わり二人はこっちに歩いてきた。ママさんが「どうしたの、一人で来たの、お家の人は」って聞いてきたので、あたしは怖くなって一目散に走って逃げた。気が付いたら全然知らないところにいた。どうしよう、お家はどこかな。いろんな所を走り回って家に帰れる道を探したけど見当たらない。困ってしまって吠えてみた。知らない犬たちが吠え返してくれた。みんな頑張れと言ってくれている。よしもうちょっと歩こう。いろんな電柱でクンクンしているうちにモモちゃんの匂いを見つけた。モモちゃんはこんなところまでお散歩に来ているのね。この道のどこかが家に続いているはず。そこから通じている全部の道を探したけれど帰り道は見つからなかった。もううんちが我慢できなくなったので道端の雑草が生えているところでうんちをした。途方に暮れて伏せをしていると、隣のおじいちゃん歩いてきた。「アキちゃん、こんなところで何しているの」あたしは帰り道が分からなくなった、おじいちゃん連れて帰ってと吠えまくった。おじいちゃんは「何があったかわからないけどお家に帰ろうね」と言ってあたしを抱っこして頭を撫でてくれた。それから家までずっと抱っこしたまま歩いてくれた。おじいちゃんの肩に顎をのせて楽ちん楽ちん。

 あたしの家に着くとおじいちゃんは塀の下の穴を見つけた。「穴を掘ったの?ここからでたの?外に出たかったんだね。お家の人には内緒にしておいてあげる」と言っていっぱいナゼナゼして穴から庭に帰してくれた。庭に戻ると、すぐにおじいちゃんが塀のところまで来てもう一つクリームパンをくれた。「アキちゃんお腹空いたでしょ。お外に行く時は気を付けるんだよ」クリームパンを食べ終わってから、あたしは尻尾をふりながらおじいちゃんをずっと見ていた。おじいちゃん今日もありがとう。その後はお兄ちゃんが帰ってくるまで小屋でお昼寝をした。

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