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娘 LOVE

歩いて図書館に行く途中、中学校の横を通った。
通りからは、テニスコートと校庭が見え、少しのぞき込めば校舎も見える。
私の母校で、娘もここを卒業した。

娘は私と同じ小学校、中学校、高校に通う。
地元では特に珍しいことではない。

自身が卒業してからプライベートで学校を訪れたことはない。
親となって再び、母校に足を踏み入れる。

自分が使っていた教室はどこだろう。
懐かしさもあって探してみるが、分からない。

校舎は古く幾度も改修されている。
何とか思い出そうとするが、記憶はおぼつかない。

そうこうしているうち
思いがけないもので過去がよみがえる。

THE 学校備品

教室の時計、各廊下に設置された生徒用ロッカー…。

当時すでに古かったものがさらに古く、なお現役だ。
いつの時代に作られたんだろう?備品シールの文字はまだ判読できるのか?
学校備品、恐るべし長寿命。

鮮明に思い出した。
時計をじっと睨んで給食の時間を待っていた小学校時代。
ロッカーに座って廊下で友達と雑談していた高校時代。

なぜだろう、中学生のときのことが思い出せない。
暗黒時代だったからかな。




娘が通っているときは学校の横を通ることがあれば「今、何時限目かな」と校舎を眺めながら歩いた。
校庭で体育の授業をしているクラスがあれば、娘がいないか目で探した。

今はどちらも卒業し、もういない。
娘のいない学校は、ただの学校になった。

地域の一員として
「子どもは元気だな~」とつぶやきながら通り過ぎる。



私にとって大切なものは
懐かしい場所でも思い出でもなく
目の前で、今を生きている娘なんだなと改めて思う。

親って、そういう生き物かも。