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2021年4月の記事一覧
再生
灯りを消して、ねえ、思い出してよ。
新宿のブルースとおでんの美味い店だった。 壁の仕切りに小窓があって、頼めば名物のロールキャベツが食べられた。 あれは、いつだったか… ぼくたちは、その夜、偶然ケンさんに会ったんだ。 ケンさんは、大きな瞳を皺みたに笑わせて、分厚い唇を震わせるようにこう言って、和服を着た奥さんと店を出て行った。 「素敵な夜を」 ぼくたちが25,6。 ケンさんは30半ばだっただろうか。 あの夜、メコン川沿いの村々にも静かな夜はあっただろうか。 ぼくの肩にやさしく触れて、ウインクまでしてくれたケンさんは、 ケン・サンダースっていう名前で役者もやっていた。 ケンさん、今夜はどこにいるの?