美保ちゃんにキスをした時の心境

結論から言うと、「無理やり」と言う訳では無い物の、美保ちゃんは決してキスを「受け入れてくれた」とは言えなかった。

2人で散歩して人気のない道に誘導し、でもなかなかタイミングが掴めないので、不自然に立ち止まって美保ちゃんに無言で手招きし、美保ちゃんが「何ですか?」と身体を近付けてきた所にゆっくり顔を近付けた。

美保ちゃんはキスされる事を察した直後、「駄目ですよ」と言いながら顔を背けた。

それでもそっぽを向いてる美保ちゃんの方に向き直り、美保ちゃんの唇にそっとキスしたが、一瞬触れた直後にまた顔を背けられた。

そして、戸惑いながら何度も「駄目です。ホントに不倫は駄目です!」と繰り返した。
俺にはそれが俺に対しての言葉と言うよりも、美保ちゃん自身が自分に言い聞かせてる様に見えた。

最終的には

「不倫にはトラウマがあるんです」

と言って身体を離されてしまった。

トラウマと言うのは美保ちゃんが昔付き合ってた男が実は独身と偽った既婚者だったと言う話で、その後奥さんにバレて、家に呼び出されて奥さんに怒りの感情をぶつけられ、仕舞いには思い切りビンタされたそうだ。

美保ちゃんは既婚者とは知らずに付き合ってたからむしろ被害者だと思うが、その時に相手の奥さんと修羅場った経験と、男に騙された事実が深く心の傷になってると先ほども話してくれたばかりだった。

そんな話をされた直後に、不倫の誘いに等しい独りよがりなキスをした事は今では激しく後悔している。

キスを受け入れて貰えなかった事で少なからず動揺したし、ショックも受けた。
俺の人生に置いて「キスを拒まれる」と言う状況になった事が無かったから。

こんなダメ元みたいな形でキスした事は無かった。
とことん慎重派な俺は、「キスしても大丈夫」と言う状況になる前にキスする事なんて考えられなかった。

今回は気持ちが暴走してしまった。

その場から動こうとしない俺に、「さ、行きましょう!」と言いながら腕を組んで歩こうとする美保ちゃん。

キスされた事はあまり気にしてない様だ。

「軽蔑したよね」

と恐る恐る聞いてみた。

美保ちゃんは

「全くしてませんよ!軽蔑なんてする訳ないです」

と明るく返してくれた。
まあこんな質問する時点でダサいとは思ったけど、この時は本当に動揺していたのだ。

駅に向かう道すがら、美保ちゃんは俺に「結構酔ってますか?」と聞いた。

俺は「結構酔ってたかも…。いやでもそんなに飲んでないから酔ってないよ」としどろもどろな返答をした。

もう友達関係も終わりかなと思ったが、駅で電車を待ってる時に「また会ってくれる?」と聞くと、間髪入れずに「勿論、当たり前じゃないですか!」と笑顔で答えてくれた。来週以降の具体的な遊びの計画も、彼女の中で相変わらず継続してる様だった。

彼女はこう言うシチュエーションには慣れてる様だ。社内にセフレを作るくらいだし、キス程度じゃ何とも思わないのかな。

キスしてしまった事実は変えられないが、あまりに早計で独りよがりなキスだった。

キスする事で2人の関係に変化を付けたいと思っての行動だった。
ちょっと良いなと思ってた子が社内の別の男とセフレ関係にあると言う事実を知らされ激しい嫉妬心を抱いたし、またそんなに簡単に付き合ってない男と肉体関係を結ぶような女性なら俺にもチャンスはあるんじゃないかと思ってしまったのも間違いない。

自分の欲望だけを優先した愚かな行為だったと今では思う。

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